積読ガチャで神引きした話
「年々代謝が落ちるのに食べる量が減らないから体重が増え続ける」
20代も半ばを過ぎたのでパツパツのジーンズを前になんとなくこの話の意味を痛感し始めているけれど、実はこれ、積読にも言えるんじゃないかと思っています。
一度でも読書にハマった人なら「いつ読むかは分からないけど買っておいた本」があると思います。(もしくは最初のほうだけ読んで手が止まってしまった本とか)
私の場合は小学校から中学校にかけてがちょうど読書量のピークで、その後進学や就職と大人の階段を1段上ったり転げ落ちたりしていく過程でだんだんとペースダウンしました。
雑に言ってしまえば仕事のほかにもスマホやゲーム等「読書以外にやることが増えた」のが原因だけれども、やることが増えて読書をしなくなったのに、自分で使えるお金が増えて好きなだけ買ってしまうので
「年々読む量が落ちるのに買う量が減らないから積読が増え続ける」
積読サイクルが出来上がって本棚は万年飽和状態のあり様。
実に多くの人々が新年にダイエットを決意するのと同様、このもはや地層化した積読の消化を決意して1か月。
超個人的に分かった事が1つだけあります。
それは、
私の場合「積読は自分専用のピックアップガチャ」状態だったということ。
冬眠前のリスよろしく買ったことすら忘れていた本を家中ありとあらゆる場所から発見しましたが、三つ子の魂百まで、ヲタクの性癖死ぬまで。人間の無意識に働くセンサーは一見まとまりのない(読んだこともない)本にもバッチバチに作用していました。
(以下は読んだ本の長い感想になります。)
1月中に読み終えた積読の小説は
・三島由紀夫「美しい星」(1962)
・石井遊佳 「百年泥」(2017)
・星新一 「地球から来た男」(KADOKAWA版2007)
新春積読ピックアップガチャ2022は見事に「SF」の神引きでした。
結局Twitterでつぶやいた3冊から冊数を伸ばせなかったけれど、前年度比で行けばもうすでに倍は読んでる。
(この間にカラマーゾフの兄弟を挫折したり原始仏教に興味が出ちゃったりいろいろあった)
厨二病全開だった頃、「さすがにベタ過ぎる」とイキり気味に忌避していた三島由紀夫の「美しい星」は存外読みやすいし、思っていた以上に描写が美しい。
シクラメンの鉢植えを掲げて持つシーンとか何食べてたらあんな絵画的な場面を想像しうるんですかね……。実際売り場でシクラメンの鉢植えを掲げ持つような人がいたらちょっと関わりたくはないけれども、あのグロテスクな茎とビビットな花弁のコントラストが放蕩な出戻り娘のなんとも言えない妖艶さと無邪気な一面を強調しているように思えてめちゃくちゃ印象的でした。(なお、物語の本筋にはあまり関係ありません。)
主人公一家が各々UFOに出会い、全員太陽系のいずれかの惑星出身者であることを思い出すところからスタートするので登場人物の大半は電波な発言をするけれども(一握りの地球人は大体意地悪さを滲ませてくる。最悪。)支離滅裂にみせながら幻想的な筆致に、新しい「美」の概念を叩きつけられたような心地になりました。
ほかにもめちゃくちゃ好きなセリフや描写があったけど、まだまだ勉強不足だしこの記事に入れると着地できないのでまた別の機会があったらそこでかければいいなと思います。
次に読んだ「百年泥」は翼型の飛行装置で上流階級の人間が飛び交う近未来のインドが舞台。アニメ映画「千年女優」のごとくランダムに時空を飛ばされるような描写が印象的。……ここまで書いていて改めて思ったけれども、純粋なファンタジー小説よりも既存・既知の名詞が出てくる分SF作品の内容は文字に起こすと「何を言っているんだ???」感がものすごい。
機械の翼で空を舞うインド人……。しかもこの翼自体は話に何ら関係ない。(と思う)おそらく、今でいう「超高層タワーマンション」くらいの生活水準や時代感を反映するための小道具くらいの役割でしかない。
でも、カースト制度もバリバリの現代的なインドの描写が持つ異国情緒と、宗教、風俗、そこに襲い来る百年に一度の大洪水という比較的想像しやすい非日常感が合わさるともう混沌とした浮遊感さえ感じられて本当に新鮮です。
個人的には最後の主人公とデーヴァラージくんとのやりとりが絶妙で……2人の距離感をどう解釈するか、めちゃくちゃ誰かと語りたい……!
(星新一に関しては発掘の過程で3冊も見つかったのでこれもまた別の機会に……)
1番書きたかった感想のせいでとっ散らかってしまいましたが、とにかく言いたかったのは
「積読はいいぞ!!!!」ということです。
自分の第六感的なものを信じて買い込んでおいた本は、何年後になるかわからないけど伏線回収するかのような巡り合わせで読む機会があるかもしれない。そして、それはAm○zonレビューより確実にSSレア出現率の高いガチャになってる事間違い無いので、懐の許す限りおススメです。
2022年、既に去年より本を読んでいるので目標は達成してしまいました(爆甘判定)が積読ガチャ神引きにより「SF」「宇宙」「仏教(宗教)」について興味津々なので、またこうして読んだ本についての感想など、文章にできたら良いなと思います。
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