#08 友達になんと言う?
近しい友達に2人だけLINEする。
脳腫瘍という単語は重すぎる気がして。
「スーパーでめまい起こして実は今入院している」
「懇談会に出席すると返事したけれど、実はしばらく入院することになったから欠席にしておいて」
どんなテンションで言えば良いのか難しい。気を使わせたくないし。なんとなく、伝わってOKなところまで、と。
あとは、事務的なところへの連絡。
在宅ワークの仕事先。ひとつは、締め切りが大分先なので様子見。文章なら入院中にも書けるかもしれないし。
点滴を繋げているからか、容体は安定している。
検査もなく、暇と言えば暇だ。やるべきことは休むことだと割り切るしかない。
子どもたちは、義実家にあずけて夫が手続き諸々を片付けてくれている。
気晴らしにradikoを聴いていたけれど、ものすごい通信料になりそうだ。病室にWi-Fiは飛んでない。kindleとタブレットにダウンロードしてほしい映画と漫画をLINEする。ラジオは電池式のものを持ってきてくれるように頼んだ。
化粧品にこだわりはないから、とりあえずオルビスのトライアルセットを注文する。届き次第持って来てくれとお願いする。
あと、家族の写真を。
パルシステムの定期配送を止めなくちゃ。そういえば、カードの引き落としの残高大丈夫だっけ。
お金の絡むことは頼みたくないな。小さい文字のスマホを眺めるのは疲れる、とは感じたけれど、ネット上で全部手続き出来るのはありがたい。スイミングの欠席登録も併せて済ませる。明日の子どもたちのインフルエンザの予約確認画面を、スクリーンショットして夫に送信する。注射が大嫌いな娘だ、無事連れて行けるのだろうか。夫も仕事がある。
でも、わたしは何も出来ない。
微妙にある余力が恨めしい。
サンルームに行って、水を買って、お茶を飲む、夕焼けを眺める。
これが私のやること。無力感があるけど、外の景色には癒される。
椅子を窓際まで持っていき同じように外を眺めている人がいる。
わかるよ、と心の中で呟いた。