「酒造道」と聞いて社長の行動が腑に落ちた。

土田酒造株式会社 六代目 土田祐士
・新しい酒を急にはじめる ・造っても伝えきれない 
挑戦を評価する ・マーケティングは試したい

2020.06.22バージョンであることは重要な前置きになる。
明日も同じ考えである保証は一切ないからだ。
"酒造道"という言葉を、社長から今日初めて聞いた。
土田らしさを表現するのに、これほどしっくり来たことはない。

社長「なんて言うかな..."酒造道"に近いよね。」


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「相手というよりも、己との対峙かな?」


「こんなこと言っていいか分からないけど」と前置きしてこう言った。
詳しく訊くと、「酒に正解はないし...ゴールもない。」ということだ。
生酛・低精白・飯米も、速醸・高精白・酒米という真逆の道も、どっちもあって良いというのはよく言っているが、正解は己にある。

社長にとって対峙する相手は発酵であり自然の菌。菌と対峙し続けることが己の道。それを支えてきた星野杜氏の存在は大きい。ふたりは言葉にしなくとも"酒造道"を磨いてきた。「あれもできる、これもできる...!ってなるよね。」「成長につながるのかが大事かな。」と語る。仮説検証する先に成長があって、このサイクルを"挑戦"と言っていたようだ。安定して同じ味を大量に造ることはこれに反するという構造だ。新たな仮説にワクワクしたとき、造らずにいられる方がおかしいのかも知れない。

1BYもたくさんの挑戦があった。
30BYで精米歩合90%に挑んだ『Meat Lovers Only』の手応えから、低精白への興味が尽きない。1BY一本目の『土田 はつしぼり 壱』や、新定番『シン・ツチダ』。食べる米を、削らずに、溶かすというテーマがあるようだ。

この仮説と対峙していく中で、酒米を、削って、溶かさなかった時代をふりかえった。酒米って本当はどんな味だったんだろう?とワクワクした。酒米5種、麹歩合2パターンの計10種を造ってある。だがこれは枝葉の部分。根幹は「シン・ツチダの道が正しいか?」という自問自答にある。

コロナショックもあるとはいえ、明らかに市場への説明不足だけど「腑に落ちた」というのが私の感じたところ。社長の"酒造道"を考えると、メリハリをつけないと根幹が伝わらないと思うからだ。(狙ってた?まさか笑)

造っても売らないのが良いわけではない。"酒造道"へのサポーターが足りないと感じ、そう社長に言った。現段階では、「アルバムを買うに値していない」イメージだと思う。『土田 麹九割九分』や『TSUCHIDA CRAFT 12 』のように、シングルとしてDLされている感覚を持った。いちファンとして対談しててね。『酒米違いシリーズ!』として捲し立てて売り上げるのではなく、極めていく『シン・ツチダ』にもっと熱量を込めて、酒米ってどんな味なんだっけ?って一緒に確かめようよ!とサラッと言われれば充分だとおれは感じた。(7月にリリースされる可能性が高い。あと、食べる米を、削らずに、溶かすを確かめるため川場産ゆきほたかの酒も現在造っている。これが、急に追加されたナンバーだ。)

昨年の『麹Gradation』と同じ枠で結構重要な検証だったりはする。当然熱量はあるが、酒米だけでの案内には試験的価値より市場価値とか旨さとか少しズレたPRが必要になってしまうのは不本意だ。

そんな社長は、挑戦する人に手厚い。これは社内外を問わない。
おれみたいに会社の名前を語ってブログを書くことも許容してくれている。
後輩たちも『誉国光 白ラベル』を任せてもらえたり、『土田酒造のくらびらき!』という生放送の運営を任せてもらえたりしている。

挑戦することを社長は「自立して考え行動すること」と言い換えたりする。やってもみないで批評することや、不満を抱えて行動を起こさないことを、そういえば社長や星野さんから感じた記憶があまりない。
「前例がないは理由にならない」というのも、答えが菌と己にあるからだ。

最後に、道を極める土田さんであると同時に土田社長でもある。
挑戦し続けるためにも資金繰りで悩ましい。コロナの影響は当然大きい。
挑戦し続ける権利を得るためにも、この道が明るいことを示すためにも、100年先の蔵人にバトンを回すためにも、稼げることは等しく大事だそうだ。マーケティング手法をあれこれ試すのも、やってみないと分からないという仮説検証の考え方から来ている。ちゃんと聞いたんだけど、荒稼ぎの手法ではない。大量に同じ酒を造らない以上、行き渡らないほどのサポーターを抱えることは矛盾する。自分たちの"酒造道"をサポートしてくれる、抱え切れる人たちを飽きさせない方法を探しているようだ。

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