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読書記録 「ヒトとカラスの知恵比べ」
「ヒトとカラスの知恵比べ 生理・生態から考えたカラス対策マニュアル」 塚原直樹著
私はたった一羽のカラスに悩まされた。ゴミステーションの金網のすきまから生ゴミを引っ張り出して、あたりを散らかす。何度掃除をしたことか。
でも、なぜかカラスを憎めない。ちょこちょこ歩く姿はかわいい。仲間と鳴きかわす様子は楽しげだ。
そう思うのは、カラス害が小さかったからかもしれない。本書で取り上げられた被害に比べたら。
収穫前の果物を食われた農家、畜牛にけがをさせられた畜産農家、多量のごみを荒らされた住民などの人びとにとって、切実な問題だ。
カラス対策には、カラスの生理・生態を知ることが重要だ。著者は、二十年以上カラスの研究に携わり、カラス対策専門の会社を起業したそうだ。
カラスの聴力はヒトなみ、嗅覚はヒト以下だが、目はいい。人は三原色で色を見ているのに対し、カラスは四原色で見ているという。だから、ゴミ袋の中身をにおいで探っているのではなく、目で見て判断しているそうだ。
カカシやCDを設置する、音を鳴らしてびっくりさせるなどのよく見かける対策方法は、あまり効果がないらしい。カラスがすぐに慣れてしまうから。しかし、最初のうちは、不審がって近づかないから、それらの対策を短期間で切り替えるとよいという。
著者の会社は、警戒音を流すCrowControllerなどの、カラス研究に基づいた対策製品を提供している。
カラスが増えたのは、人間が増え、人間生活が活発になってきたからだ。エサとなるゴミも増えたし。
カラス害を減らすには、人間側が意識を変える必要がある。地域で協力し合い、ゴミや未摘果の果実を減らすなどして、エサとなるものの管理をすることが大切だ。すると、冬場のエサが減り、カラスの個体数をコントロールすることができるという。(カラスは数日で餓死するから……かわいそうな気もする)
冒頭のゴミステーションには、目の細かい金網が張り巡らされたので、カラス害はほとんどなくなった。
追記 カラス、結構かわいい。しかし、オーバーン市(アメリカ、ニューヨーク州)には行かない。旅費・滞在費に加え、お土産代までもらっても断る。「葉のないはずの街路樹に、黒い葉がビッシリとついている。近づくと、白い実らしきものがポトポト落ちる。(同書より引用)」という。
葉=カラス、白い実=糞……。
しかし、オーバーン市の住民は、家族思いのカラスを尊重しているそうだ。