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政治や社会を考えるきっかけを NYNJ流「デザインの姿勢」

「政治っていまいちわからない」「政治は大人の話だ」

確かに、政治の話は難しくて固い内容が多いかもしれない。

でも、難しいから知らなくていい訳ではないと思っています。

私たちNO YOUTH NO JAPAN(以下、NYNJ)では、政治をわかりやすく楽しいものにするために「デザイン」を活動の大きな軸の1つに置いています。

インスタグラムで4.7万人の方にフォローをしていただけているのも、ポップで可愛いグラフィックデザインの力なくては成し遂げられませんでした。

今回は、NYNJのデザインチームに所属する3人に、日頃の制作で気をつけていることや、活動の中で得た学びについて聞いてみました。


インタビュイー:NO YOUTH NO JAPANデザインチーム 平山義活、永本聡、中本順葉
インタビュアー:NO YOUTH NO JAPANメンバー 田中舞子

デザイナー2人からのスタート 現在は4人のチームに

田中舞子(以下、田中):皆さんは、どうしてNYNJのメンバーになったんですか?また、普段どんな活動をしているのか教えてください。

平山義活(以下、平山):僕は昨年、留学先のデンマークでNYNJの立ち上げメンバー4人と出会ったのがきっかけです。

今は美術大学の大学院の修士2年生で、その留学の前から「居心地の良い社会をつくるためにデザインを使いたい」という思いがあったんですが、留学先で日本人としての自分を意識したとき、自分って日本の社会のことを全然知らないんだ、ということに気づきました。

ちょうどその頃にももさん(現代表・能條桃子)が、2019年参議院選挙の期間中に2週間の選挙キャンペーンを始めるとSNSで呼びかけているのを見て、すぐに参加しました。そこから今年5月に新メンバーを募集するまでは、NYNJのもう1人のデザイナーであるみな美さん(平山みな美さん)と一緒にデザイン制作と、組織内のコミュニケーションデザインを担当してきました。

永本聡(以下、永本):僕は、今年5月のデザインメンバー募集が参加のきっかけです。

もともと政治や社会に対するモヤモヤを抱えていたのですが、それを愚痴るだけだと周りの雰囲気が悪くなるだけだな、何か自分にできないかなと考えていました。そんなときにちょうどNYNJのデザイナー募集を見かけて、すぐに応募しました。

実は、普段は建築を学んでいて、グラフィックデザインを専門的に学んでいるというわけではないんです。けど、もともとデザインが好きだったこともあり、NYNJではグラフィックデザインを学びながらインスタグラムのストーリーや、地方選挙の投票率を上げるためのプロジェクト「VOTE FOR MY TOWN」に関わるコンテンツを制作しています。

例えば、2019年7月の東京都議会議員補欠選挙の際に取り組んだプロジェクト「VOTE FOR KITA-KU」ではホームページやポスターを作成しました。

中本順葉(以下、中本):私は今年6月から参加しています!NYNJのことは昨年の参議院選挙キャンペーンの時にインスタグラムで初めて知りました。
政治や社会問題に関しては「内容が難しくて意見もいろいろあるし、怖くて分かりづらい...でもこのまま何も関わらないままなのも良くないよな」という漠然とした想いを抱いていて。
その気持ちが強くなっていたときにメンバー募集の投稿を見かけ、普段仕事として取り組んでいるグラフィックデザインの技術を使って、NYNJが取り組むU30世代と政治・社会を繋げる活動のお手伝いをしたいな、と思ったんです。
NYNJではインスタグラムの解説ストーリーや告知画像、最近だとwebメディア「she is」で9/28から始まったNYNJの連載用ビジュアルなども制作しました。

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田中:他のメンバーがデザインを専門としている中で、さとるくん(永本)は建築が専門なんですね。チーム内でデザインの方向性について、意見が食い違うことはありますか?

永本:デザインに関しては、まだ勝手がわからない部分もたくさんありますね。例えば、「目を引くものをつくる」時に、やりすぎて逆に見にくくなったり、その辺の感覚はデザイナー的な視点が大切だなと感じます。どこまで冒険すべきか難しいですね。

平山:でも、建築専攻ではいろんな情報を1つの画面に収めないといけないことが多いから、さとるくん(永本)にはその視点があるんですよ。たくさんの情報をわかりやすくまとめる能力は、政治という情報量が多くなりがちなコンテンツを扱うNYNJにとって大きな助けになっています。

政治は誰に対しても開かれたものである

田中:最初は2人のデザイナーで始まったNYNJですが、今は4人のチームになりました。皆さんそれぞれの自信作と、それを通してデザイナーとして成長したことはありますか?

永本:僕は、今進行している兵庫県三田市の選挙プロジェクト「VOTE FOR SANDA」のパンフレットに力を入れています。パンフレットは高校生向けに作ったものなのですが、高校生の立場になったつもりでデザインをしていく中で、「難しい内容だと読みたいと思わないな」とか「初めての選挙でワクワクしてほしい」など考えるうちに高校生みんなが読みやすくてワクワクするものを目指すようになりました。

同じような経験はNYNJに入ってから何回かあり、どんな話題を扱ってもみんながわかりやすく知って楽しいデザインを心がけるようになりました。このようなデザインを続けていくうちに政治と社会は誰に対しても開かれたものであることが大切だと感じるようになりました。

あと、自分の専門分野である建築を使ってどのように社会に良い影響を与えていくかを考えるようになりましたね。建築は、基本的に環境を破壊して環境を創造する行為なんですが、NYNJ加入後は、社会や環境のための建築のあり方を考えたいという気持ちになりました。

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中本:私がデザイナーとして一番成長したと感じた制作は、普天間基地移設に関する解説ストーリー画像です。賛成派・反対派と対立する意見の扱い方や、複雑な年表の整理、似顔絵の作成などいろんな情報を分かりやすくまとめるのに苦労しました。

あとは、広島・長崎の原爆について取り上げたストーリーも印象に残っています。私の地元である広島や、同じく原爆が落とされた長崎の歴史について、全国の人が見てくれているNYNJの媒体で扱うことができて嬉しかったです。SNSで地元の友達が反応をしてくれたりもしました。

平山:僕が活動の中で学んだことは、ちょっと小難しいことですけど、良いデザインを作れば社会が良くなるのではなく、一人ひとりの権利が保証されるべき社会が既にあって、その権利のかたちに寄り添えるデザインが、結果的に良いデザインであるということです。

それに関連して、代表作と言えるのかわからないけど、NYNJのslackで作り続けているオリジナルのカスタム絵文字があります。これは、言葉が苦手な人もコミュニケーションの中に入ることができるべきだなという漠然としたもやもやから始まったもの。思いつきで作ったものがNYNJ全体でこんなカルチャーになるとは、思ってなかったですけどね(笑)

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NYNJ内では、メンバーのslack投稿に対して「ありがとう」や「天才か」などスタンプを使い、リアクションを取ることでコミュニケーションを図っている。
主にオンラインで活動する団体だからこそ、このようなメンバー同士の交流を大切にしている。


田中:よしかつさん(平山)の絵文字はNYNJのワクワク要素の1つですよね!私が希望した「なんでやねん」スタンプも最近作ってもらいました(笑)

デザインでものごとを表現することは「火」に例えられる

田中:じゅんさん(中本)の話にもありましたが、政治は意見の対立が多く、扱いにくい分野ですよね。政治性のあることをデザインで表現することのメリットや難しさについては、どのように感じますか?また、そうした問題を扱うデザインをする上で日頃から気をつけていることなどはありますか?

永本:メリットといえば「知る」ことのハードルが下がるということですかね。NYNJのミッションの中に「知って、考えて、行動する」という言葉がありますが、まずは知ってもらうために目を引くデザインが大切。「おしゃれ」「可愛い!」からNYNJについて、そして政治や社会について知ってもらえることもたくさんあると思います。

中本:インスタグラムのポストやストーリーを作る際に、こんな式が成り立つかも。インスタチームが言葉とイラストの元になるアイデアを盛り込んだラフ画像を出してくれるのですが、その時点でかなり言葉使いや情報の選び方などの内容は考え込まれていて、デザインチームは、そこに見え方の工夫やワクワクする要素を加えているイメージです。

ラフ(40%)+ デザイン(ベース30% + ワクワク20%)+ デザイン見て調整(30%)=120%

こちらからデザイン画を提出した後に、両方のチームで話し合いながら調整を進めていき、最終的に120%のものが出来上がっているなという感覚です。

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田中:制作したメンバーと相談してデザインの修正をする際には、具体的にどういうところを話し合うのですか?

中本:こちらからテキストの意図を聞いて、メッセージの強さや見せ方を相談しますね。例えば、自殺予防についてのストーリーは担当メンバーと第6稿まで修正を重ねました。何かの本で「デザインでものごとを表現するということは火に例えられる」という内容を見たことがあり、確かにそうだなと思いました。うまく使うとあたたかくて美味しい料理ができるし、気をつけて扱わないと人を傷つける火事になってしまう。

永本:NYNJのデザインは、考えるきっかけを作ることが大事なので、僕もラフ画像からデザインに落とした時にメッセージ性が強くなりすぎないかを気にしますね。賛成と反対のマルバツでも、片一方だけが大きくならないようにしたり。

平山:政治性のある表現は、言われたとおり、かなりデリケートな問題と隣り合わせです。例えば、政治家のプライベートや人格へのイメージが過剰に広がり、政策への評価に影響を与えてしまうことがあるように、デザインの伝わりやすさばかりを意識してそれが先行してしまえば、NYNJの伝えたいメッセージに「予期しない影響力」を与えてしまうことは十二分にありえます。

さとるくん(永本)の言うように、NYNJのデザインの目的は、政治や社会問題について伝えるだけでなく、その問題に対して自分のスタンスを持ってもらうこと。そのために意識しなきゃいけないのは、扱うテーマの本質を誠実に伝えることです。そのための努力をNYNJは怠っていないと思います。

例えば、人々に商品を買ってもらうことが目的である産業広告のデザインのあり方をそのまま政治に持ち込めば、それはきっと批判されるし、望まない結果にたどり着くでしょう。社会問題や政治といった、結果がわかりにくく答えが出ないものだからこそ、人々の考えるきっかけを作り続けるというNYNJのデザインには意義があると思うんです。


<編集後記>

ただ情報を見やすくまとめたり、見た目を整えるだけが「デザイン」ではありません。
技術としてデザインが表現できることを考える前に、デザイナーをはじめNYNJは、コンテンツを通じて「何を発信するのか」「どのように発信するのか」という疑問に真っ正面から向き合っています。その姿勢の根底に、「多様性」や「公平性」を認める意識がすでに存在していたのだと改めて気づかされました。

いろんな人の意見があるからこそ、政治は扱いにくくて難しいテーマです。

これからもその難しさに挑戦するNYNJ、そして政治の入り口となるデザインに注目していただけたら嬉しいです。

文=田中舞子



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