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東京ゲームショウに出現する異世界・ファミリーゲームパークの魅力
東京ゲームショウの話をしましょう。今年(2022年)は9月21~24日に開催されました。
第一回から(コロナでオンライン開催になった回を除いて)、わたしは全部のゲームショウを現地取材しています。取材の依頼があるから――というビジネス的な理由もありますが、行くたびに「やっぱり面白い」と感じているから、というのが欠かさず訪れている最大の理由です。
どんなところが、そんなに「面白い」のか?
そんなもの「ファミリーゲームコーナー」に決まっいます。東京ゲームショウ会場の中で、ここがいちばん面白いのです。異論は認めません(笑)。
中学生以下の子供たちと、その同行者しか入れないエリア。熱心なゲームユーザーほど体験したことがないエリアかもしれません。ここは不思議なことが毎年のように起きる、いわばゲームショウ内にある「異世界」でもあります。ここの取材ほど、面白いものはありません。
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子供たちの特徴は、事前情報を得ていないことにあります。「今年のゲームショウは、●●の最新作が初出展されるぞ」みたいなことは知りません。ただ親に連れられてゲームショウを訪れ、色眼鏡をかけることなく、出展されているゲームに対峙します。
だから、そこでは興味深いことが起きます。
たとえば、ゲームショウのメイン会場では長蛇の列ができるようなソフトが、さほど混まなかったりします。
その一方、え? こっちが大人気なの? と叫びたくなるような光景も出現します。ノーマークのソフト、ノーマークのイベントに、子供たちが群がることが多々あるのです。
日本では国民的に愛されているワカメは、欧米では外来生物として疎まれます。文化が違うと、それぞれ愛されるものは変化するのです。ゲームショウ全体で愛されるソフトと、ファミリーゲームコーナーで愛されるソフトには、いつも大きな違いが出るのです。
この違いを目撃したとき、わたしがいつも「面白い」と感じるのですよ。それはわたしの勝手な思い込みが、子供たちによって破壊される瞬間でもあります。ここで「目から鱗を落とす」ためにこそ、わたしはゲームショウを取材し続けているといっても過言ではありません。
コロナ前の2019年だと、子どもたちが最も夢中になっていたのは『釣りスピリッツ』でした。世間的にはノーマークなソフトだったのですが、ここの試遊コーナーが、とにかく人気だったのです。
プレイ中の目の輝かせ方が違う。没頭度が違う。楽しさのあまりピョンピョンと跳ね、歓声をあげながら遊んでいる子供たちの姿を目撃できるのは、ゲームショウでも稀なことです。その衝撃的なまでの人気ぶりは、いまでも記憶に残っています。
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また、ファミリーゲームパークでは、人気のステージイベントの様子も違ってきます。
最大の違いは、そこに芸能人がいないこと。いわゆる「テレビタレント」がひとりもいない。かわりにいるのはユーチューバーたちです。子供たちは「テレビを見ない世代」であり、「ユーチューブを見る世代」であることが、ありありとわかります。
すると、eスポーツの形も違ってきます。
ゲーム大会を開催するステージから、「大会に参加したい人!」と呼びかけると、多くの子供たちが元気よく手を上げる――といったところまでは、多く人が想像するとおりの光景が広がります。
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しかし、続いて「実況したい人!」と呼びかけると、さらに多くの子供たちが手を上げるのです。子供たちにとっては、eスポーツに選手として参加することより、実況者として参加することの方が「より強くやりたいこと」なんですね。彼ら・彼女らにとって、体験したいこととしての優先度が上なのです。
人気のユーチューバー(ゲーム実況者)の隣に座り、そこで実況するという「キッザニア的な体験」ができるというプラス要素があることを加味しても、それはゲームショウ本体のeスポーツイベントを見慣れている人にとって、ちょっと予想外の光景なわけですよ。
でも、よくよく考えてみれば、日本の子供たちの「将来なりたい職業」のデータを見ると、昨今ではプロゲーマーが上位に入ったりしますが、それ以上に「ゲーム開発者」とか「ユーチューバー」も上位に入っていますから、子供たちは選手に憧れる以上に、それを楽しく伝える役目に憧れを感じるのは、むしろ納得できる話ではあるわけですが。
だから10年後、この世代が大人になったとき、日本におけるeスポーツ文化は、どのよう変化していくんだろう? ――なんてことを、わたしは考えてしまうわけです。
現在のeスポーツは、競技性を高める方向に進化してきました。それは全世界で行われているeスポーツの形に合わせた結果なのでしょう。海外の基準に合わせた結果として、いまの日本のeスポーツは成立しています。
でも、競技者になることより、実況者になることを「より上位の目標」に置く世代が大人になったら、eスポーツという文化は、いまとは違う方向へ進化していきそうな気もするのです。
そんな時代が来たら、ゲームという文化は、まったく予期しない方向に拡大していくかもしれないなぁ。面白いことが起きそうだなぁ。――といった妄想が、ファミリーゲームパークを取材していると、ついつい頭の中に浮かんできたするわけです。
こういう感覚にとらわれることが、わたしにとっては、抜群に「楽しい」ことなのです。おおげさにいうならば、それは「自分が予想していなかった未来が、垣間見たような感覚になる楽しさ」みたいなものなのかもしれません。
しかし、2022年の東京ゲームショウは、ファミリーゲームパークが作られませんでした。コロナ対策として、子供の入場が禁じられたためです。
安全に東京ゲームショウを開催するための、それはやむを得ない判断ではあったのでしょうが、個人的には、今年は目から鱗を落とすことができなかったため、とても残念でした。
来年は、ぜひ完全な形での東京ゲームショウが開催されるといいなぁ。そしてファミリーゲームパークで、「ゲームの未来の姿」を予感したいなぁと強く願っております。
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