なるべく砂を残したい。
日曜日。38℃。暑すぎる。
真っ赤にギラつく太陽が並ぶお天気アプリによると、午後は38℃になる。午前中も十分真夏日だが、出掛けるなら今だ。そう思い立って、お気に入りの電車の見える公園に繰り出した。
誰もいない。公園まるごと独り、いやわが家占め。雨にも風にも気温にも負けそうな私だけど、子ども達は元気いっぱいだ。熱を吹き飛ばすように翔けていく。
「おおきいおやまつくろー!」
5歳がザクザクはじめる。手伝うというか、一緒に作る。高い山を作るにはたくさん砂を集めなくてはならない。砂の量は決まってるから、誰もいない今日はチャンスだ。1歳は物珍しそうに砂を触り、掴み、山を壊し、怒られ、ずっとニコニコ自由だった。蝉が鳴いてる。だめ!と怒る声すら心地よい夏。
ごめんちょっとギブと日陰に避難。5歳は麦茶をひと口飲んだと思えば、すぐにUターン。なんてバイタリティ。次男はフリフリ踊ってる。砂かけ小僧の様相だ。
風が抜ける。広場の奥、商工会の夏祭りの準備が見える。誰もいない出見世が並ぶ、いつもの公園の非日常。たこ焼き、ヨーヨー、チョコバナナ。のぼりの言葉が目に入る。
「100年先の未来、子供たちのために。夏祭りで使う容器やお箸は環境に配慮したものを使っています」
ああ、いいなぁと思う。100年後ってどんな世界だろう。想像つかないや。たぶん息子たちもいない世界。目の前で「明日世界やばいです」なら違うけど、環境も未来もデカすぎてなかなか地続きに感じられない。でも、きっと未来って選択肢。物も、遊び場も、遊べる時間も、今あるあたり前を残したいな。どんどん砂を捨てたら、全然遊べなくなっちゃう。
うん。生活の中のSDGsって、きっと願い。答え合わせはできないけれど、目指す未来をいいなぁと感じて、なるべくそういう価値観で選ぶ。そういうの、大切にしたい。
「パパー!」
「はーい!」
数時間ぐしょぐしょになり、大きな山を作った。トンネルも掘った。汗だくシャツと砂ほっぺを引き換えに、満面笑顔の仁王立ち。そろそろお昼ごはんだ。
「お山、どうする?」
うーん……と唸ったあと「つぎのだれかがあそぶかもしれないから、そのままにしてく!」だって。
次の誰かを想像できる力。それって、未来なのかもね。……なんて、そんなの思ってないだろうけど。
「おなかすいたー!」「だー!」と叫びながら、線路沿いを飛ばして帰る。電車が追い越していく。風が気持ちいい日曜日。