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神戸からのデジタルヘルスレポート#128(セクシャル・小児)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は全15回で昨年2023年(一部2024年含む)に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。

今回は5回目です。「セクシャル・小児」をテーマに取り上げていきます。


1. Fertsy:生殖×AI

企業名:Fertsy
URL:https://www.fertsy.com/home
設立年・所在地:2023年・北京(中国)
直近ラウンド:Angel
調達金額:N/A

Shengshengyiは、生殖医療業界(IVF業界)において、人工知能に基づく胚の品質評価を開発・提供している企業です。

体外受精では、卵子と精子を体外に取り出し体外で受精を行い、受精卵を培養した胚を子宮内に移植する、という一連の流れがあります。 しかし、この採取や胚の培養といった流れは手作業であり、評価についても属人的で不正確である、といった課題があります。同社は、人工知能による胚盤胞評価システムによって、この課題を解決しようと取り組んでいるものとなります。 国内の主要な生殖医療の医師のグループと協力し、AI と追加技術を採用することで体外受精の成功率を高め、患者の苦痛を軽減しながら病院の生産性を向上させることに寄与していきます。

  • 中国初の人工知能による胚盤胞評価システム

    • 顕微鏡下で胚の写真を直接読み取り、人工知能アルゴリズムによる計算

    • 計算後、リアルタイムの分析結果を医師に提供し、分析レポートを生成

    • 胚発生の質を迅速かつ包括的に評価し、移植率と出生率を向上させるのに役立つ

  • 世界初のAI支援による胚評価の臨床研究

    • 人工知能アルゴリズムによる計算と医師から提供されるに次々の解析結果を解析し、レポートを生成

    • 2021年5月から2022年9月まで臨床検査、AI支援評価群、手動評価群を実施

    • 公式臨床報告書は現在SCIにより審査中、臨床研究報告書は前進して現在審査中

出所:https://www.fertsy.com/tech

当該企業のサイトには、今後中国における生殖医療業界が拡大・成長していくであろうこと、他方、既存の生殖医療の現場において平均的な技術レベルは低いこと、といった課題が述べられています。

  • 生殖医療(IVF)市場の拡大

    • 2023年には人工授精の回数は75万回、体外受精の回数は121万回に増加と推定

    • 生殖医療の治療費は10年以内に1000億元に達すると予想(治療費は2025年には688億に達する見込み)

    • 消耗品の医療機器の95%、生殖補助医療の80%が輸入されている

    • 体外受精医療機器の市場規模は2023年に240億元を超える見込みで、2020年の市場規模の1.5倍となる

  • 既存の生殖補助医療リソースにおける課題とニーズ

    • 体外受精の平均成功率はわずか40%

    • 生殖医療における専門的な経験、技術が不足

    • 中国における生殖補助医療の普及率は、米国の32%、西ヨーロッパの36%と比較して7%低い

当該企業の関連記事ではございませんが、以下の記事では、中国が独身女性に対しても体外受精を認める方向で検討していることが取り上げられています。人口減少に歯止めをかけるため、といわれていますが、中国国内で体外受精をはじめとした生殖医療(不妊治療)のニーズは今後高まっていきそうです。

2. Menopausey:閉経期

企業名:Menopausey
URL:https://menopausey.com/
設立年・所在地:2023年・米国
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Menopauseyは、更年期障害の苦痛を軽減することを目指し、ブロックチェーンベースのプライバシーとデータ所有権に焦点を当てた症状トラッカー、AR/VR での治療的なゲーム体験、コミュニティ空間、パーソナライズされた洞察を開発している企業です。症状トラッカー、NFT、コミュニティ、マーケットプレイス、AR/VR療法を特徴としており、閉経周辺期を通じて個人をサポートすることについて、Web3テクノロジーの探求を進めています。

現在開発段階のため、公表されていない点も多々ございますが、サイト内からでは、更年期障害特有のホットフラッシュの診断(チェック)や、更年期障害に関する知識をBlogで紹介、といった内容がみられます。

また、以下のように、「更年期を自分らしくプレイする」といったイベントを創設者と公共図書館で開催し、コミュニティ形成についても動き始めているようです。

2024年のCentral Mountain Ascent Acceleratorプログラムで同社は選ばれており、以下の記事内では、創設者の自身が更年期近くなって感じた更年期障害に対する無知と不安、それを解消するための既存サービスのプライバシー保護の観点での懸念から、同社を創設するに至った経緯が述べられています。

また、同社は資金調達についてクラウドファンディングも用いています。直近では$74.42 のクラウドファンディングを獲得し、また、matching poolsと呼ばれる寄付も募り、$226.31集まっているそうです。

3. Dream Kid:入院小児向けAIストーリーテラー

企業名:Dream Kid
URL:https://dreamkid.ai
設立年・所在地:2023年・
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Dream Kidは、病院内の子供たち向け(入院中の小児向け)の世界初の生成AIストーリーテラーです。比喩と医学的概念を統合して、パーソナライズされた児童書を作成し、読み聞かせすることができます。米国だけでも毎年200万人の子供が入院しており、子供たちが大きなストレスを抱えながら治療に励んでいます。創作ストーリーを用いて、勇気、学習、成長、立ち直り、決意を描いたユニークな物語を捜索し、そんな子供たちが入院や経験しているすべてのストレスに対処できるように支援しよう、というものです。

サービス内容について紹介している動画がございます。5分以内のものとなっており、よろしければご覧ください。(公式Youtubeチャンネルもございます。)

使い方としては以下

  1. 親が子供のプロフィールを作成

  2. さまざまなストーリー設定から選択

  3. 生成されたストーリーを読み上げるか、AI にナレーションをさせることができる

創業者のひとりであるArmagan氏が幼いころに病気で入院していた原体験が基となっているそうで、入院中孤独にさいなまれる子供たちが、空想の世界で少しでも勇気づけられたり気持ちを楽にできたら、との願いをこめてこのサービスを開発しているそうです。

4. SENDSORTA:自閉症児の親へ特別支援・教育

企業名:SENDSORTA
URL:https://sendsorta.co.uk/
設立年・所在地:2023年・リーズ(英国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

SENDSortaは、英国の自閉症児の親を支援するためのアプリサービスを開発しています。 専門家主導のトレーニングとパーソナライズされた24時間365日のサポートを提供することで、同社のプラットフォームは子育ての課題を解決し、すべての子どもが最大限の可能性を発揮できるようになります。
保護者がSEND*システムを操作する際のガイドや必要なサービスへの道しるべとなるツールを提供する、というものとなります。

*SEND(Special Educational Needs and Disabilities=特別な教育ニーズと障碍)

出所:https://sendsorta.co.uk/

本サービスはアプリを通して自閉症児の記録や有益な情報の配信、専門家への相談、教育トレーニングプログラム、といったものを受けることができます。
このような内容となっている背景には、創業者自身の原体験が影響しています。創業者自身が2018年に当時2歳の娘が自閉症と学習障害と診断され、そこから素人である親自身が娘の診断や洞察をする必要に駆られたこと、専門家のアドバイスであっても疑わしい場合等があり、何が有益な情報で何が単なる不要なノイズなのかを理解するまで、3年近くの研究と学習を要したこと、といった苦労を経て本サービスの開発に至ったそうです。

“hold my hand”というSEND支援コミュニティでは、同社のサービスが紹介されています。

5. bobomed.care:子供の神経発達障害

企業名:bobomed.care
URL:https://bobomed.care
設立年・所在地:2023年・ワルシャワ(ポーランド)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:$26,932

bobomed.careは、オンラインでの赤ちゃんの発達評価サービスを開発・提供している企業です。(0~6歳の神経発達をモニタリングし、必要に応じていつでもお子様のオンライン相談を受けられるようになっています。

開発段階のためか、サービス詳細の情報開示がまだあまりないですが、以下のようにスマホでお子様の状態を動画撮影し、これを専門家に共有することで、発達における異常検知や専門家へのシームレスな相談アクセスを可能にするそうです。

出所:https://www.bobomed.com/

サイト内で紹介されている専門家は小児神経学や神経発達障害、神経言語療法、理学療法といった小児神経領域のスペシャリストたち。お子様を育てていく上で日々のどのような現象・行動が神経障害等の兆候となり得るのか、素人ではわからないもの…。日々の様子を記録しながら、遠隔で専門家のモニタリングや相談を受けられるというのは、心理的にも安心感がありますね。

LinkedIn、Crunchbaseによると、2024年2月に$26,932のPre-Seedの調達を行っているそうで、今後の開発動向が気になるところです。

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志/のぞみ
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