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神戸からのデジタルヘルスレポート#124(治療・開発)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は全15回で昨年2023年(一部2024年含む)に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。

今回は1回目「治療・開発」をテーマに取り上げていきます。


1.Alys Pharmaceuticals:免疫皮膚科学

PeerCapsuleは、医師と医師を繋ぎ、臨床上の疑問点の解消や学びあい、共同研究などの研究協力を促進するプラットフォームを構築し提供しています。

企業名:Alys Pharmaceuticals
URL:https://alyspharma.com/
設立年・所在地:2023年・ボストン(米国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:N/A

Alys Pharmaceuticalsは、ヨーロッパのバイオテク投資会社Medicxiが免疫皮膚疾患治療薬を開発するために6つのスタートアップ企業を統合して設立した企業です。
複数のスタートアップを統合することで、リソースを集中させ、研究開発の効率化を図ることで、免疫皮膚疾患という特定の分野に焦点を当て、専門性の高い研究を実現させる狙いだそうです。

設立と同時に$100Mの調達を行い、ギュスターヴ・ルシー研究所やマサチューセッツ・チャン医科大学などの施設との共同研究も開始しているそうです。

同社は、免疫炎症性皮膚疾患、自己免疫性皮膚疾患、特殊皮膚科の分野において、十数個のプログラムを推進する予定であり、IND申請(新薬臨床試験開始申請)の達成と2026年第4四半期までに7つのフェーズ1B/2の完了を予定しているそうです。

出所:https://alyspharma.com/pipeline/

以下の記事によると、同社はアトピー性皮膚炎、白斑、円形脱毛症、慢性自然発生性蕁麻疹などの新たな適応症が、皮膚科学の進歩において次の画期的な進歩をもたらすと考えているそうで、研究開発を進めるパイプラインの中には肥満細胞症、皮膚T細胞リンパ腫、腫瘍治療の皮膚副作用の予防など、現状十分な治療を受けられていない適応症に焦点を当てたプログラムも含まれているそうです。皮膚に関連する領域に対して幅広く進めていくようですね。免疫皮膚科学分野のイノベーションがどう起きるのか、今後が楽しみです。

2. Mirador Therapeutics:精密医薬品

企業名:Mirador Therapeutics
URL:https://miradortx.com
設立年・所在地:2023年・サンディエゴ(米国)
直近ラウンド:SeriesA
調達金額:N/A

Mirador Therapeuticsは、免疫と炎症に焦点を当てた新たな精密医療開発を目指す企業です。 製薬大手のMerck社に買収された米Prometheus Biosciences社の元幹部らにより創設された企業で、すでに$400Mの初期投資を得ているそうです。

同社が取り組むのは、現在有効な治療法がない免疫線維性疾患について、遺伝的関連性を発見して検証し、新たな治療法・診断方法の開発を行うもの。遺伝学×データサイエンス×分析を組み合わせた精密医薬品開発エンジンとなり、免疫介在性炎症性疾患(関節リウマチ、アトピー性皮膚炎など)や線維性疾患(肺線維症、肝硬変など)に対応する新たな治療法の提供を目指していくそうです。
なお、同社が開発を進める精密医薬品とは、個々の患者に最適化するため、治療の標的となるバイオマーカーや遺伝子を特定する基礎研究をもとに大量の遺伝子データや臨床データを解析して、有効な治療法を特定する必要があります。上述の「遺伝学×データサイエンス×分析を組み合わせた精密医薬品開発エンジン」によって、何百万もの分子プロファイルを分析することができ、迅速に治療標的の特定を行えるようになることを見込んでいるそうです。臨床開発までの時間を加速させることを狙っているそうで、難病と呼ばれる疾患に希望の光がみえてくるかもしれません。

3. Jellyfish Bio:遺伝病

企業名:Jellyfish Bio
URL:https://jellyfish.bio/
設立年・所在地:2024年・ミュンヘン(独)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Jellyfish Bioは、AIを使用して遺伝学、ウェアラブル データ、血液検査データを統合し、臨床試験において新しい尺度・遺伝性疾患のバイオマーカー発見をもたらすための開発を行っております。
ミュンヘン工科大学出身のCEONikita Konstantinovskiyとゲノム博士号を有するDmitrii Smirnov(加えて、コンピュータヘルスおよび医療遺伝学の受賞歴があるそうです)の2名で今年2024年に創設された企業です。

https://www.f6s.com/company/jellyfish-bio#about

同社が解決したいペインとしてあげているのが遺伝病です。患者はそれぞれ多様な異なる遺伝を有しているものの、適したバイオマーカーが現状がありません。加えて、遺伝病は人口10%が罹患しているにも関わらず、ほとんどが診断されていません、

出所:https://jellyfish.bio/

AIを用いて遺伝学、ウェアラブルデータ、血液バイオマーカーを使用して包括的な患者プロファイルを作成し、上記のペインを解消しようと取り組んでいるのが同社のソリューションとなります。モバイルアプリやウェアラブル、血液バイオマーカー等の様々な要素を用いて、遺伝病の特定と治療にアプローチできる診断を行えるようになるそうです。現在解明されていない疾患の治療にも繋がりそうで、期待したいですね。

出所:https://jellyfish.bio/
出所:https://jellyfish.bio/

4. Haplotype Labs:遺伝学

企業名:Haplotype Labs
URL:https://www.haplotypelabs.com
設立年・所在地:2024年・オリンダ(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:N/A

Haplotype Labsは、「HaploHub」と呼ばれるSaaSプラットフォームを構築し、遺伝子検査を通じた個別化診断サービスを提供・開発する企業です。 「HaploHub」は、AIおよび独自に開発した遺伝子モデルや4,000以上の公開されている遺伝的モデルに基づいて、患者の疾病リスクを予測・検出できることを目指しています。これらが実現することで、患者個別の個別医療の実現を見据えているそうです。

また必要なデータの一部のみをシークエンシングすることで全ゲノムシークエンシングよりもコストを50-90%削減することが可能とのこと。コスト削減割合(インパクト)が大きいですね。加えて、このSaaSプラットフォームを用いることで、遺伝子検査ラボの方や臨床試験担当者、医療提供者などが遺伝学を利用して疾病のリスクを予測・検出・防止できるような活用が可能となるそうです。
同社は、Y Combinatorより$500Kを調達しています。


5. Dooper:玄関先で受けられる救急医療

企業名:Dooper
URL:https://www.dooper.in/
設立年・所在地:2023年・コタ(インド)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Dooperは、オンデマンドの緊急医療サービスへのアクセスを提供するスマートヘルステクノロジープラットフォームです。玄関先でポイント・オブ・ケア検査による最初の医療支援を提供しています。

Dooperで提供しているのは、主に緊急ケア簡易検査(尿検査や血液検査など玄関先や訪問先で可能なもの)、ナーシングケア(訪問看護ケア)の3つです。状態によっては救急車や医療機関への入院へ接続できるため、もしもの時に有難い存在といえそうです。

出所:https://www.dooper.in/about-us

利用の流れは、スマホから訪問予約するだけ、といったシンプルなものです。Dooper Health Assistant(DHA)と呼ばれる医療専門チームがかけつけ、バイタルサインや症状をチェックし、その時必要なケアを提供するそうです。必要に応じて薬など必要物資を配達する機能も備えているそうです。

出所:https://www.dooper.in/

平均待ち時間の短縮が60%、患者満足度90%、全体的な治療費の削減28%、ファーストコールによる解決95%、応答時間の短縮60%、再入院の減少75%、といった6つの成果(数値)がでているそうです。とてもインパクトのある効率化ですね。

出所:https://www.dooper.in/about-us


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志/のぞみ
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