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神戸からのデジタルヘルスレポート#129(眼・歯)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は全15回で昨年2023年(一部2024年含む)に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。

今回は6回目です。「眼・歯」をテーマに取り上げていきます。


1. ENAMELAI:歯科用CRM

企業名:ENAMELAI
URL:https://enamelai.com
設立年・所在地:2023年・アーバイン(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:N/A

ENAMELAIは、高度なAI技術を活用した先駆的な歯科用CRMプラットフォームを開発・提供している企業です。今日の歯科業界に合わせて、予約スケジュールから複雑なAI支援診断や歯科チャートに至るまで、歯科処置を最適化することに焦点を当てたソフトウェアサービスとなっています。

CMっぽい動画はなんだかカッコいいです。数秒程度ですので、よろしければご覧ください。

ENAMELAIのヘルスケアCRMとクリニック運営最適化システムの特徴・主要機能は以下です。

  1. AI支援診断 患者の症状と医療データを分析し、診断支援を行う。医師の正確な診断をサポート。

  2. 患者データ管理 患者の電子健康記録(EHR)の効率的な管理をサポートし、患者情報のセキュアなアクセスを提供。

  3. 予約と遠隔医療 患者は予約をオンラインで行え、遠隔医療セッションを簡単に予約できる。※特に遠隔地の患者にとって便利な機能

  4. 自動通知とリマインダー 患者に予約の確認、処方箋のリフィル、およびフォローアップのリマインダーを送信し、治療計画の遵守を支援

  5. カスタマイズ可能なレポート 管理者はカスタマイズ可能なレポートを生成し、クリニックの効率性とパフォーマンスをモニタリングできる

上記により、歯科治療における診断の向上、効率的な患者管理、遠隔での治療の受領、患者エンゲージメントの改善、といった面で貢献できるそうです。 歯科治療業界でもデジタルによる最適化・質向上が期待されそうです。楽しみですね。

2. Vitrea Health:網膜の健康

企業名:Vitrea Health
URL:https://vitreahealth.com
設立年・所在地:2023年・デトロイト(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:$120,000

加齢に伴って低下する黄斑(網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の小さな部分)の健康状態を改善するためのサプリメントを開発・販売しています。大手製薬会社による従来のAREDSサプリメントは、1つの抗酸化物質と2つのカロテノイドに焦点を当てていることに対し、Vitreaは幅広い栄養素を利用して視力保護の相乗効果を生み出します。

出所:https://vitreavision.com/

国立眼科研究所の加齢性眼疾患研究の臨床研究で、特定の栄養素、特にビタミンCとビタミンE、ベータカロチン、亜鉛、銅が、進行性加齢黄斑変性症(AMD)のリスクを有する方に摂取することで、視力喪失のリスクを軽減することができることが明らかになっているそうです。サプリメントはサブスクリプションモデルで販売中。

このサプリメントの開発は、創設者兼CEOであるLuke Yaldo氏の祖父が黄斑変性症であったことから、眼科医である父と当該疾患の克服に向けて働いた眼科医療の経験が原体験となっているそうです。Luke Yaldo氏は13,000人を超える患者の加齢に伴う眼疾患の研究について主導してきたそうです。同社のBlogではサプリに用いられている栄養素についてや引用文献についても紹介されています。よろしければご覧ください。

3. Dentinnova:中東の歯科医療変革

企業名:Dentinnova
URL:https://dentinnova.com
設立年・所在地:2023年・ウィルミントン(米国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Dentinnovaは、AIを活用した遠隔歯科治療サービスを開発・提供している企業です。同社が掲げている使命は、「手頃な価格で質の高い歯科医療サービスを簡単に利用できるようにすること」で、中東の大手歯科企業になることを目指しています。

現在開発中のようですが、特徴としては以下です。

  • 歯科保険を持たない人でも手頃な価格で利用できる

  • 家族全員が自宅から歯科治療にアクセスできる

  • 特に小さなお子様の場合、簡単で手間がかからない

  • スケジュールに合わせて相談できるため、休暇を取る必要なし

  • 高齢者または身体障害者や遠方居住者も場所に関係なく歯科医とつながることができる

  • グローバルアクセスが可能で、海外旅行・海外生活中の歯科ケアを受けられる(現地の複雑な保険手続き不要)

サイト内の利用者コメントでは、「歯科に行くことの恐怖心があったが、自分の歯の写真を送信して得られたレポートで不安が軽減できた」「出張中にひどい歯痛に襲われ現地で探す時間がなく困っていたが、迅速な対応で助かった」といった記載がございました。

出所:https://www.dentinnova.com/#How-it-works

2024/5/12時点では公式YoutubeもInstagramもまだ準備段階でサービス詳細については今後の続報が待たれるところですが、上記のコメントを拝見する限り、歯科治療へのアクセスのハードルがかなり下がりそうですね。中東エリア向けだそうですが、遠隔での歯科治療の発展が期待されそうです。

4. Quicklify Dental:歯科保険

企業名:Quicklify Dental
URL:https://quicklifydental.com/
設立年・所在地:2023年・フェニックス(米国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Quicklify Dentalは、歯科保険を提供している企業で、歯科ソフトウェアとシームレスに統合でき、既存のワークフロー内で簡単に歯科クリニックや患者と接続できるようになっています。

サービス概要については以下の動画もあるので、よろしければご覧ください。

以下の動画では、米国で2024年から歯科クリニックに対し、毎年保険の精密な検証が求められること、そのルール変更に対し、請求の拒否を防ぐ歯科保険が重要となってくること、が説明されています。
2024年は新しい請求フォームが導入されるようで、保険システムの情報の古いことなどによるプランの非更新等の課題などが発生する恐れがあるそうで、同社はこのような請求等で発生し得る課題をカバーすると訴求しています。制度変更が生じる時は様々な困難が生じると思いますので、最新テクノロジーで解消できるのであればそれを活用したいですよね。

原則、当該サービスはプラン別に料金が異なるのですが、医療請求を正確に処理するための基本ツールとして、以下のような無料ツールも用意しています。会員の資格や健康保険の適用情報を確認する際にも役立つそうで、「請求提出の効率と正確性を高める」という点で同社のサポートは手厚いですね。

5. Kaillo:歯科医師マッチングサービス

企業名:Kaillo
URL:https://www.kaillo.co.uk/
設立年・所在地:2023年・ロンドン(英国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Kailloは、透明性が高くアクセスしやすい歯科診療を目指し、歯科医とのオンラインマッチングサービスを開発・提供している企業です。 同社は誰も自分の歯を診てもらうために苦労したり、歯の緊急事態が発生したときに黙って苦しむべきではないと考えており、明確でわかりやすい価格設定やレビュー、予約の取りやすさなどに焦点を当ててサービス設計しているそうです。

現在、ロンドン市内でのサービス提供に留まっているそうですが、同社のHP上に郵便番号を入力するだけで受診できる歯科医を探すことができるような、シンプルな設計となっています。

同社のLinkedInでは、英国におけるNHSの歯科治療の課題について触れています。

  1. 現在、英国では 1,200 万人以上の人が NHS の歯科治療を受けられていない(これはベルギーの全人口よりも多い人数)

  2. 2022年から2023年にかけてイギリスの病院で0歳から19歳までの子供31,165人が虫歯のため抜歯されている

  3. NHS の歯科医療への年間支出は 3 分の 1 以上削減(2010 年以来実質ベースで 10 億ポンドの削減=8,000 人の地域の給与所得歯科医師の費用に相当)

Kailloは上記のようなNHS歯科医療における課題点をカバーするため、NHSだけでなく民間の歯科医療も受けることができるようサービス設計されています。

Kailloは、「完全」または「無傷」を意味する古代語「kailo」からインスピレーションを受けた造語だそうです。創業者のBella氏とAllex氏が歯科受診でイライラ(苦慮する)経験をしたことから創業に至ったそうで、会社名にもその意思が反映されていますね。

6. Mightus Health:クラウド歯科ソフトウェア


企業名:Mightus Health
URL:https://www.kaillo.co.uk/
設立年・所在地:2023年・アルファレッタ(米国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Mightus Healthは、歯科医院向けにAIを搭載したクラウド歯科ソフトウェアを開発・提供している企業です。同社のAIを活用したソフトウェアは以下のような機能を備えているそうです(一部開発中・近日公開のものあり)結構多彩です。

  • パーソナライズされた患者ジャーニー

  • 口腔健康モニタリング

  • AIアシスタント

  • オンラインスケジュール

  • 患者フォーム(電子歯科フォームでチェックインを効率化)

  • レポートと分析(ビジネス インテリジェンスダッシュボード)

  • オンライン患者レビュー(予約後の患者フィードバック)

  • 予約のリマインダー

  • オンライン支払い(テキスト支払いオプションとパーソナライズされた支払いリクエスト)

  • 患者ケアのためのタスク管理

以下のVCの記事を拝見すると、Mightus Health が競合他社と異なる点は、その戦略的適用性と人工知能の統合にあると述べられています。この独特の機能によって、さまざまな観点から歯科治療体験を最適化することが実現できるそうです。 例えば、以下のようなことが実現できるようになるとのこと。歯科医療の現場がかなり効率化しそうです。

  • かつては面倒で時間のかかるタスクをインテリジェントに自動化するのに役立つ

  • スケジュール設定、リマインダー、患者とのコミュニケーション、実践マーケティングの自動化が効率化

昨年8月に正式リリースされたようなのですが、現代の歯科診療に合わせた次世代ソリューションとして以下の記事でも紹介されており、注目度の高さがうかがえます。

また、同社のBlog内では、ビジネスインテリジェンス (BI) 分析やマーケティング施策の重要性についても言及しています。単に治療をするだけでなく、データを用いての洞察・分析・アクションがこれから求められる、といったアプローチもしており、単なるソフトウェア開発を超えていますね。今後の歯科医療の市場において重要な観点が多そうです。

ちなみに、サイト内をみていただけたらわかりますが、現在のプランはベータテストで月$1という破格。これから開発が進むにつれて価格帯は変動していくと思いますが、それでも導入しやすい価格ですね。驚きです。

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志/のぞみ
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