神戸からのデジタルヘルスレポート#134(医療現場支援1/2)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今回は全15回で昨年2023年(一部2024年含む)に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。
今回は11回目です。「医療現場支援1/2」をテーマに取り上げていきます。
1. Blossend:世界最速の予約体験
Blossendでは、医師と患者のやり取りを合理化し、革命を起こし、民主化するWeb3ヘルステクノロジープラットフォームを構築しています。 「Open My Doctor」(v1.0を現在リリース中)では、保険なしでわずか3回のクリックで、33秒で適切な予約と支払いを完了させる「3クリック33秒ルール」を掲げ、ニーズに合わせた医療提供を実現させるべく開発を進めているそうです。
以下は約30分ほどのインタビュー動画ですが、CEOがデモ画面で操作している場面がございます。(7分ほどの箇所)
よろしければ、参考までにご覧ください。
なお、当該企業では本サービスの予約機能の開発だけでなく、患者個別にパーソナライズされた健康情報をお届けすることも今後進めていく予定だそうです。以下では、「大手製薬会社と加工食品・飲料業界の大手企業によって引き起こされた、利益率の高い慢性自己免疫疾患の蔓延と闘う」といった姿勢を記載しています。米国での不健康(3型糖尿病 (アルツハイマー病と認知症)、血糖値と細胞の調節不全、高血圧、慢性自己免疫疾患、代謝障害など)の蔓延に、上記が関係していると考えており、従来のホルモン剤に代わる、パーソナライズされたより安全な代替品を得るよう促す情報の提供も実施していくようです。
以下もインタビュー動画ですが、こちらはCEOのこれまでのキャリアの変遷(Pablo Diazは元AmazonのSDE(Software Development Engineer)だったそうです。)と、Blossendが今後目指す展望について語っています。直近は、$100万の資金調達と 50,000人のユーザーへの到達を目指すそうです。
2. AgentAI:AI医療請求
AgentAIは医療請求会社と医療機関向けの医療費のAI自動化ソリューションを開発・提供しているます。データ入力、医療コーディング、請求処理などのさまざまなタスクを自動化し、組織のコスト削減、効率性の向上、請求拒否の最小化を支援します。
データ入力タスクを完全自動化
患者記録、医師のメモ、承認、EOB(保険会社のクレーム報告書)などの様々な医療記録からテキストと数値データを迅速かつ正確に抽出
抽出されたデータを同社のAIシステムによって処理し、EHRおよび請求システムとの直接統合を通じて自動送信(連携)する
医療コーディング処理
効率、正確性、一貫性を向上させる医療コーディング(正しい病名の付与や診療行為の記録処理)および請求処理を実施
プロセス全体を高速化し、エラーを削減し、リアルタイムのフィードバックを提供
コンプライアンスに対応し、請求拒否を最小限に抑える
24時間365日オンデマンドスケーリング
必要に応じて簡単にスケールアップまたはスケールダウンできる
ワークロード要件に合わせて AgentAI の利用を調整できる
この調整が人員過剰や人員不足の問題を軽減できる
なお、当サービスは、現場の現在のワークフローにシームレスに統合するように設計されているそうです。既存のシステム(EMRやEHRシステム)簡単に接続できるようになっているそうです。本製品を導入するために新しい仕組みを設計し、スタッフを教育…といった手間が減るのはうれしいですね。コーディングと請求のタスクの大部分がすぐに自動化され、スタッフは複雑なケースに多くの時間を費やすことができるようになっています。
なお、現在はプライベートベータ版のみだそうで、開発段階のサービスとなります。
3. Cofactor AI:保険否認対策
Cofactor AIは、医療機関が保険請求をした際、保険請求を拒否・却下された場合の再申請処理をAIによって自動化および合理化し、現場の医療者が臨床に専念できるよう支援するサービスCofactor Denial Suiteを開発・提供しています。
同社のInstagramの以下の投稿によると、病院は、保険金請求が拒否されたために、年間2500億ドル以上の損失を被っているそうです。結構大きい金額ですね。
また、 米国では、医療費の15~30%近くを管理費が占めており、保険金請求拒否の50%近くは不服申し立てがなされることがなく、病院はその費用を自己負担(泣き寝入りしてしまう)ような状況だそうです。
同社の製品は保険拒否の控訴に重点をおいたAIソリューションで、面倒な控訴プロセスを自動化し、医療機関の収益の増加、効率の向上、拒否の削減をz津玄します。収益サイクルの加速を実現することで、医療提供者の収益を大幅に向上させることに繋がります。医療現場の事務というと請求処理やEHRシステムへの記録に目が行きがちですが、この請求控訴も地味に面倒で医療現場を悩ませるポイントですよね。それが自動で処理できるようになるのはとても貢献度が高そう。
以下のCofactor AI を紹介しているページによると、請求管理に伴う手作業の作業負荷を最大90%削減できるそうです。かなりのインパクトですね。機能と特徴については以下のとおり。
<機能>
自動レター生成:却下された請求の詳細を分析し、医療提供者が却下を覆す可能性を最大限に高めるようにカスタマイズされた異議申し立てレターを生成
Cofactor Knowledge Augmented GenAI (C-KAG):拒否に対する異議申し立てに必要な最適な情報を見つけるプロセスを迅速化
リアルタイムの異議申し立て:EMRや支払者とのデータ接続により、拒否に対してリアルタイムで異議申し立てを行い、拒否管理プロセスを合理化
拒否管理ソリューション:すべての拒否が記録、追跡され、分析と解決のためにアクセスできるようになる
<特徴>
収益の増加:異議申し立てプロセスを自動化することで、医療提供者は却下された請求による失われた収益を取り戻す
効率性の向上:手作業の作業負荷を90%削減することで、バックオフィス業務の効率化につながる
合理化された拒否管理:拒否をリアルタイムで追跡、管理、異議申し立てできるプラットフォームの機能により、収益サイクルがスムーズになる
セキュリティとコンプライアンス:Vanta を使用してインフラストラクチャを継続的に監視し、業界標準への準拠を確保
Service Organization Controls2(SOC2)という米国公認会計士協会 (AICPA) が管理するセキュリティ認定を受けているそうです。データセキュリティと顧客情報の保護に対する企業の取り組みを証明するものになるそうでして、当該企業のセキュリティへの意識の高さがうかがえますね。
4. Liaa:AI医療メモ
Liaaは、医療従事者の精密な文書作成のパートナーとして、医療従事者が診療に専念できるようAIベースの診療メモ・文書化システムを開発・提供しています。
録音機能が搭載されており、患者との会話(診察など)がスタートしたと同時に起動し、最も関連性の高い重要な医療情報を抽出し、それを医療メモにまとめてくれます。医療上のやり取りによって必要なメモの種類は異なりますが、基準に合うカスタムプロンプトのリストから選択できるようになっており、既存のプロンプトを編集して、完全な正確性を確保します。完了後はAIが生成した臨床ノートを確認して承認するのみでOKで、簡単にコピーしてEHRに貼り付けられるようです。便利ですね。
なお、当製品のAIソリューションは、最先端の自然言語処理(NLP)、機械学習、コンピューター・ビジョン技術をベースに構築されており、患者との面会記録、診療録の転記、日常的な管理業務の自動化において、医療従事者を正確かつシームレスに支援できるようになっています。
なお、LikeInの同社の投稿では、医師の自殺啓発Day・医師の燃え尽き症候群の問題に触れています。医師の全体的な作業負担の軽減の必要性に言及しており、同社の製品がその一助になる可能性を述べています。
5. WhisperMD:AI文書作成
WhisperMDは、AIによって自動化された臨床ノート・次世代のAI主導の臨床文書サービスを開発・提供しています。 当社の独自のAI駆動プラットフォームは、臨床文書作成のワークロードを大幅に削減することで医師の記録や事務処理の負担を軽減します。患者との対話から音声認識により包括的な臨床ノートをインテリジェントに作成し、診察後即座に配信できるようになっているそうです。
同社のサイトによると、世界中で1,800万人の医療従事者が不足しており、今後もそれは顕著となっていくそうです。そんな現場負担を減らすために、このサービスにより文書作成等の手間を削減できる、そんな狙いがあるそうです。実際、1回の診察あたり平均8分を節約し、文書化時間を 50%削減できるそうです。効率のインパクトが大きいですね。また、医療従事者の燃え尽き症候群や疲労感が67%減少できる、とも述べています。前述のLiaaでも医師の燃え尽き症候群に触れていましたね。ここ最近の医療サービスの開発では着目されている課題のひとつと言えそうです。
昨年10月(2023年10月)にリリースされた際の発表では、 5,000 万人以上の患者のデータを管理して得た教訓を基に、優秀な医療アシスタントとなるような生成AIモデルを開発していく、と述べられています。医療現場における生成AIがどのようになっていくのか、当該企業もそのひとつとして注目されていきそうです。