神戸からのデジタルヘルスレポート #107(FemCare・MaleTech②)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!
今回は全20回のうち4回目、テーマは「FemCare・MaleTech②」を取り上げていきます。
1. Acesis BioMed:男性の性腺機能低下症治療
Acesis BioMedは、コロラド州(米国)とロンドン(英国)を拠点とするバイオメディカル企業で、代謝障害や内分泌疾患に対する経口薬開発のためのプラットフォームを開発しています。主に、男性の性腺機能低下症(低T)の治療にフォーカスした研究開発を行っています。
性腺機能低下症とは、「テストステロン欠乏症」とも呼ばれ、加齢に伴って男性ホルモンのテストステロンが低下する疾患をいいます。このテストステロンの低下に伴って精子産生の欠乏や勃起不全、不眠症等の男性更年期障害と呼ばれる状態となります。
この性腺機能低下症は、男性人口の10%~40%に影響している症状であり、男性の平均余命が長くなってきているが故に男性のT細胞数とテストステロンレベルが徐々に減少する年数が増えていくとみられています。それに伴い、世界の性腺機能低下症の市場は2026年までに$3.6Bまで拡大するといわれています。
なぜ代謝障害や内分泌疾患を対象に研究している同社が男性の性腺機能低下症(低T)に焦点を当てているのか、その背景について以下のインタビュー動画(音声のみ)でも紹介されています。よろしければご参照ください。
また、同社ではTwitter上で、「その●●(男性の不調)は、うつ病ではないかもしれません。(性腺機能障害かも)」といった啓蒙発信も行っています。よろしければどうぞ。
2. Ciconia Medical:デバイスによる膣検査
Ciconia Medicalは、現在も指(手)で行われている妊娠・出産時の膣検査に代わる、子宮頸部をモニタリングする安全で痛みのない検査医療機器を開発しています。
妊娠経過の診断や分娩の決定の基礎となる重要な検査にもかかわらず、今日の膣検査は指で行われ、何世紀にもわたって変わっていない現状があります。
<膣検査で評価すること>
子宮頸部の開き具合
子宮頸部の薄さ
産道内の赤ちゃんの位置
この指による膣検査により、しばしば誤診や不必要な介入(帝王切開、分娩誘発、羊膜切開など)に繋がっているともいわれています。
<同社ソリューションが対象とするペイン> 今日の指による膣検査でもたらされるペイン
女性が感じる苦痛・トラウマ 女性の大多数(80%)が、出産中の膣検査は痛い、または耐えられないものだと報告 出産した女性の 5 分の 1 が心的外傷後ストレス障害の症状を経験し、34% もの人が自分の出産体験がトラウマ的であると述べている
主観的で誤診率が高い 分娩中の膣検査は誤診率50%と高いことで知られている 帝王切開や分娩誘発などの不必要な介入につながる
感染症のリスク 世界保健機関やさまざまな医学文献は、感染症のリスクが高いため分娩中の膣検査の頻度を減らし、破水している場合や、出血を防ぐために胎盤が子宮頸部を部分的に覆っている場合には、膣検査を完全に避けることを推奨
このペインを解決するために同社は検査医療機器を開発しているといいます。現在、同社の検査医療機器の詳細は情報が確認できていない状態ですが、同社の創業者でありCEOであるRoni Cantor-BalanのLikedInでは、自身が3人のお子さんを出産した経験から感じた膣検査に対する課題感から創業に至ったとの記載を確認できます。
3. e.rupt:勃起不全のデジタル治療
e.ruptは、勃起不全を治療するための新しいアプローチとして、デジタル治療アプリを開発・提供している企業です。
勃起不全(ED)は非常にありふれた症状であり、EDに悩む40歳未満の男性は24%、人生で少なくとも一度はEDを経験する男性の割合は50%にものぼるといわれています。しかしながら、勃起不全(ED)であっても羞恥心や罪悪感から専門的な治療を受けられていないは70%もいるそうです。
同社では、勃起不全セルフテストや匿名での泌尿器科専門医への血液検査、診断結果をもとにした個別の治療方法の紹介、といったセンシティブな内容に配慮したデジタルによるチェックおよび治療を提供しています。e.ruptを使用すると、わずか3か月で症状と生活の質が改善されるというので、とても画期的といえるかもしれません。
▼勃起不全(ED)セルフテスト
<サービス内容>
アプリをダウンロードし、匿名でアカウントを作成する
アンケートによる評価・診断され、個別の治療アプローチを決定する
オプションで泌尿器科専門医へ血液検査
セラピーや治療を受診
ダッシュボード機能で治療の進捗状況を管理
4. AIGEA Medical:乳がん早期発見AIアプリケーション
AIGEA Medicalは、放射線科のワークフローとデジタル画像処理をAIでサポートするサービスを提供しているMedTech企業です。主に、放射線科医による乳がんの早期発見を支援する AI DeepMammoを開発・提供しています。
乳がんは女性に最も多いがんの種類であり、全がんの25%を占めます。女性の8人に1人が生涯を通じて乳がんに罹患する可能性を有しているそうです。予防が唯一可能な選択肢のひとつであるため、早期発見が重要とされています。この早期発見を実現するために欠かせないのがより高精度での放射線科医による画像処理診断となります。DeepMammoは、放射線科医が早期にがん因子を特定できるよう、画像処理ワークフローをサポートします。これにより、スクリーニング時間が短縮され、より多くのスクリーニングへの対処や放射線科医の負担軽減、コスト削減にもつながるといいます。
同社を紹介するピッチ動画もあります。よろしければどうぞ。
今年春(2023年春)には、イタリアでの特許も取得したそうです。
5. Men's Therapy Center:男性用オンラインセラピー
Men's Therapy Centerは男性が現代社会の中で課題を乗り越え、潜在能力を最大限に発揮できるよう支援するためのオンラインセラピーを提供しています。 男性特有の悩みに対し、男性のメンタルヘルスを取り巻く偏見等が必要な助けを妨げている可能性があると考え、男性専門のメンタルヘルスセラピーを提供するに至ったそうです。
同社のセラピーは、オンライン(遠隔)で受けることができ、登録から5営業日以内に専門のセラピストがアサインされる内容となっています。セラピストは、うつ病や男性特有のキャリアの課題やメンタルヘルス、LGBTQ+ 問題に知見のある専門家がそろっているそうです。
同社のオンラインセラピーでは、EBT (科学的根拠に基づいた治療) を主としながら、認知行動療法 (CBT)やアクセプタンス・アンド・コミットメント・セラピー(ACT)、マインドフルネス等の弁証法的行動療法 (DBT)、カップルセラピーといった様々な手法を組み合わせて行うセラピー内容となっています。
<内容>
初回のセッションを予約、実施
定期でのセラピーセッションを実施(最初の数回は1~2週間ごと)
目標を達成するごとにセッションの間隔を14~30日ごとになり、終了へ向かう
※再発予防に焦点を当てて、一緒にセッションを終了
また、同社では、男性用メンタルヘルスサポートとして講演やワークショップも実施しているそうです。
▼実際に施術を法人向けで行った実績例