神戸からのデジタルヘルスレポート #91(従業員のケア)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
2022年は、昨年2021年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信を予定しています!
今回は雇用者向けの従業員のケアや福利厚生プログラムをテーマにご紹介します。組織のウェルビーイング、大切。
1. Frankie Health:チームのメンタルウェルネスをサポート
Frankie Healthは従業員を抱えている雇用主とクライアントを探しているセラピストを結ぶメンタルヘルスプラットフォームです。
不安や燃え尽き症候群、ストレスなど職場には必ずメンタルヘルス問題はついてまわるものです。
詳しくはお問い合わせですが、例えば「チームチャレンジ」というタスクがあってそれをみんなで達成しましょうと呼びかけてくれます。チャレンジの内容は深呼吸や瞑想など、すぐにできそうなものが中心でしょうか。全員一律ではなくてそれぞれにパーソナライズされたアクティビティがおすすめされるようです。ちなみにチーム全体の進捗やフィードバック、個人レポートはグラフで見られます。
メンタルヘルスを大事にする文化が育つのも日々の積み重ねですからね。
メンバーのメンタルが落ち込み気味になっているときには、個別にセラピストにつないでくれます。セラピスト側の画面はこんな感じ↓。全体的にUIもきれいで見やすいかと。
もちろんリモートワークにも対応。現時点ではEU圏のみで展開しているサービスですが、近日中にオーストラリアとニュージーランド、シンガポールと香港でも提供開始予定だそうです。
創業者であるMcGann自身が燃え尽き症候群に陥り、メンタルヘルス問題に苦しんだことが原体験だそうです。共同創業者のPooleと出会って精神力を構築しコントロールすることの重要性を認識し、このビジネスアイディアを思いついたと。
2. SupportRoom:従業員のメンタルヘルスを分析・治療サポート
SupportRoomは企業向けの従業員のメンタルヘルスサポートプラットフォームです。
マネジメント側はAIによるチーム全体のインサイトから、「忙しすぎ」や「働きすぎ」などリアルタイムで従業員がどう感じているか把握できます。
また、従業員は必要な時にいくらでもセラピーを受けられます。最適なセラピストにマッチングされる仕組みで、形式はボイスチャット、ビデオ通話、テキストメッセージから選べるようになっているほか過去の治療歴も確認できます。
加えてワークショップやウェビナーも充実。エンタープライズプランに加えて中小企業プランもあるそうです。
6分程の少し長めの動画ですが、上記サービス内容を動画で詳しくご覧いただけます。
冒頭のメッセージ『パンデミック前は10人に1人の鬱病発症率であったのが、パンデミック下ではその2倍である5人に1人になっている』という数字にびっくりが半分、やっぱりそうかが半分という感じです。
公式Instagramでは英国のハリー王子も登場。
3. navvisa:福利厚生としてのがん治療サポート
navvisaはがん治療のサポートに特化した福利厚生プログラムを提供しています。
癌はひとたび診断を受けると短期間で治療方針を決めたり、セカンドオピニオンを探したり、保険のあれやこれやを手配したり、定期検診を受けたりと、ただでさえショックを受けているところにいろいろな負担がのしかかります。そこで会社ごとのニーズに合わせて従業員とその扶養家族向けにがん治療をトータルサポートしてくれるのがこのサービスというわけです。
サポートの内容はこんな感じです↓
がん専門看護師:専属の看護師さんとマッチングし、治療計画や保険関連をサポート。代替治療・治験探しなど一緒に模索してくれる
診察の遠隔サポート:専属看護師が医者の診察時にリモート参加し、分からない専門用語などビデオ通話やチャットなどで後からでも質問できる
トータルナビゲーション:NavvisaRoadmapというシステムで治療目標や全体の見通しを一括管理。診察内容も毎回まとめていつでも確認可能に。カウンセラーの紹介やがん治療にまつわる最新情報も提供してくれる
もちろん誰がサポートを受けているだとかは極秘ですから会社側にも伝わることはありません。会社がnavvisaと契約した時点で従業員は無料でこれらのサポートを受けられます。同社によると、がん患者の介護家族の61%は介護負担のために少なくとも1回は転職しているそうで、従業員本人が癌になった場合だけでなくその家族が患った場合のサポートがいかに大切かわかります。
いざというときに伴走してくれる専門家がいる、というのは心強いです。
創業者のVanessa JohnsonとNabeel Quryshiは身近な人が癌を患い、治療過程でも苦しんだ経験が創業のキッカケとなっています。CEO兼創業者のVanessa Johnsonは腫瘍学で20年以上のキャリアを持っているものの、自身の母親が癌になり、患者家族としてサポートする負担の大きさを痛感したそうです。
もう一人の創業者でCTOのNabeel Quryshiは、友人の家族が癌に罹患し、患者家族として苦労する様子を見たことが原体験。同じような想いと経験を持つVanessa Johnsonと意気投合し、患者と患者家族をサポートするためにnavvisaを創業しました。
Nabeel自身はEveraという在宅幹細胞バンキング会社も創業しています。こちらはハーバード大学の学生ら3名で創業。細胞を凍結保存し、未来の再生治療に活用するんだとか。癌や神経系疾患にも活かせる可能性があるらしく、こちらも面白そうです。
4. Marvin:臨床医のメンタルケアプラットフォーム
Marvinも従業員向けのメンタルヘルスサポートを提供していますが、特徴的なのはお医者さん専用のサービスであるという点です。つまり病院向けにそこではたらくお医者さんたちをケアするためのサービスです。同社いわく世界初。
従来的な治療で医療従事者のうつや不安が改善したのは35%にとどまるそうで、病院という特殊な環境を考慮したケアが求められています。
アプリによる具体的なサービス内容としては、
・ビデオ通話による週1回の個人相談
・医療従事者に理解のあるセラピストや精神科医などとのマッチング
・瞑想トレーニングプログラム
・ゲームによる感情分析
・オンラインワークショップやコミュニティ
など。「コンシェルジュレベルのサポート」を謳っており、HIPAA準拠で安全性も担保されています。
医者だって人間です。適切なメンタルケアが受けられますように。
主なチームはこの3名。CEOのJohn Bracagliaは元Google、ハーバードビジネススクールMBA拾得者。幼い頃に家族の死を経験し、大学卒業後にボランティアでメンタルヘルスケアに出会ったことが創業の原体験だそうです。
SNSでは、「DJで音楽好き」という一面もご紹介。なんだか親近感わきますね。
その他にも精神科医や心理学者がメンバーとしてどんどん参画しているようです。
5. PulzAid:サブスク医療サービス
PulzAidはサブスク制のオンデマンド医療サービスです。できるだけ仲介業者を排除しているため安価に医療を受けられるほか、企業向けのプランが充実しています。
ビジネスプランでは朝7時から夜7時まで医師または診療看護師(NP)・登録看護師(RN)によるオンライン診療(音声通話 or チャット)も在宅での対面診療も受け放題。
診療内容はプライマリケアからインフルエンザ・ケガなどの緊急処置、リウマチや糖尿病などの慢性疾患のケアまで幅広くカバーしています。さらに画像診断が必要な場合は家まで出張検査に来てくれるという手厚さ。
血液検査・尿検査などのラボ検査もプランに含まれていて、コロナの検査もできるようです。また、GoodRxというサービスと提携しているので処方箋の薬が最大80%割引になります。現時点では歯科・眼科がカバーされていないのは少々デメリットかも。
従業員数5人以上の中小企業プランや25人以上の大企業プラン、100人以上のエンタープライズプランがあり一人当たり99.99ドル~で加入できます。
(また、既に別の保険などに加入している場合でも、企業がサービスに登録すれば希望制で従業員がプランに加入し、支払いを給与控除にすることができるそうです。)
米国の医療制度に言及する発信もしています。「患者にとって手ごろな価格でヘルスケアを受けることは基本的人権の1つ」と。できる限り仲介者を排除している企業姿勢からも説得性があります。
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