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神戸からのデジタルヘルスレポート#125(デジタルヘルス)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は全15回で昨年2023年(一部2024年含む)に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。

今回は2回目です。「デジタルヘルス」をテーマに取り上げていきます。


1. AQT bio:乾癬(皮膚疾患)

企業名:AQT bio
URL:https://aqt.bio
設立年・所在地:2024年・サンフランシスコ(米国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

AQT bioは、乾癬と呼ばれる皮膚疾患を管理するためのデジタルソリューションを開発・提供している企業です。アプリを通して皮膚状態を記録・管理し、皮膚科医やヘルスコーチが追跡しながらアドバイスできるような設計となっています。

乾癬(かんせん):皮膚が赤く盛り上がる、皮膚の表面がポロポロと剥がれ落ちるなど、皮膚の見た目に特徴的な症状がみられる病気

出所:https://www.aqt.bio/

創業メンバーらは慢性的な皮膚疾患を自身で経験している原体験があり、少しでも現状を改善したい思いから創業したそうです。

サイト内では、「乾癬の影響を受けた体の表面積を測定する方法」についても紹介しており、皮膚疾患(この場合「乾癬」)のヘルスケア知識の啓蒙も行っていることが伺えます。

2. Nutreatec:がんによる栄養失調

企業名:Nutreatec
URL:https://www.nutrilotse.de
設立年・所在地:2024年・ホルツヴィッケデ(独)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Nutreatecは、がんによる栄養失調を防ぐためのアプリを開発し提供している企業です。
がんによって引き起こされる栄養失調(副作用等の影響)に対し、栄養失調リスクのリアルタイム検出、個人に合わせた栄養療法の推奨、公的医療保険による栄養サポートを提供し、がん患者の転帰を改善させることに役立つそうです。

以下、女性エンジェル投資家のプラットフォームの掲載情報によると、がん患者の約10~20%は、腫瘍自体が原因ではなく、栄養失調が原因で死亡しているそうです。同社のソリューションは、この栄養失調に対し抗腫瘍療法の観点からアプローチするものであり、今後のがん患者の転帰の改善が期待ですね。

同社は、2024年3月に開催されたヨーロッパのピッチイベントで10社に残っており、注目度の高さも伺えます。

3. TheraMotive:モバイル理学療法

企業名:TheraMotive
URL:https://www.theramotive.com
設立年・所在地:2023年・ブルックリン(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:N/A

TheraMotiveは、AIを活用した理学療法を設計、構築、提供している企業です。単に理学療法を従来通りに院内で提供しているものではなく、院外でも提供可能なテクノロジーを駆使したポータブル理学療法クリニックを設計し、「理学療法を再定義する」を掲げて提供しています。
製品紹介の動画がございますので、ぜひご覧ください。

同社のサービスは、現在ニューヨークエリアを対象に提供されています。 理学療法サービスは3か月のプログラムとなっており、患者の近所までスマートクリニック(移動診療所)が向かい、AI搭載機器、仮想現実、ウェアラブル健康デバイスを駆使して提供されます。高齢者のリハビリ(高齢者向け住宅等)からニューヨーク市内の各ヘルスケア施設(退役軍人医療システム、企業も含まれる)、その他依頼を受けたコミュニティまで、幅広く対象として実施しています。

出所:https://www.theramotive.com/

なお、「なぜニューヨーク?」という疑問に対しては、以下で代表の方がインタビュー形式で回答しています。背景として、代表のLola Omishore氏がニューヨークで実際に10年PT(理学療法士)として経験したことが大きく影響しているそうです。以下記事によると、ニューヨーク市の都心部に住む有色人種の女性として、ニューヨーク内にある医療制度の格差と欠点を目の当たりにしたそうです。疎外された地域社会における質の高い、利用しやすい医療への切実なニーズがあるにも関わらず、そのニーズが満たされていないこと。これに課題を感じた彼女は、自身の領域である理学療法における健康の不平等に対処するため、疎外されたコミュニティの代弁者となり、そのコミュニティに対し質の高い医療水準の向上としてこのサービスを提供するに至っているそうです。

4. Comigo:ADHD向けデジタルメンター

企業名:Comigo
URL:https://comigo.ai/
設立年・所在地:2023年・レイクフォレスト(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:N/A

ADHDの患者向けのデジタルメンターを提供しています。このデジタルメンターはADHDを持つ個人を支援するように設計されたComigoと呼ばれる認知AIチャットボットです。
このサービスについて紹介している動画がございますので、ご覧ください。

Comigoはポルトガル語で「私と一緒に」を意味するそうでして、このサービスの「年中無休であなたの話を聞き、アドバイスを提供し、あなたの感情、思考、行動を調整するのに役立つ行動療法を提案する」という形態を表しています。

出所:https://comigo.ai/

組織力、記憶力、パフォーマンスの低下などのADHDの症状は、不安、憂鬱といったメンタル疾患へ繋がる可能性があります。CEO兼創業者であるJason Curry氏の原体験(実際にADHD罹患者)をもとに設計されているそうです。

出所:https://comigo.ai/about-us/

5. AppThera:DTxの処方

企業名:AppThera
URL:https://www.appthera.fr
設立年・所在地:2023年・パリ(仏)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

AppTheraは、医師が患者にとって適切な治療用モバイルアプリケーション(DTx)を特定し、処方することを可能にするプラットフォームを提供しています。糖尿病、子宮内膜症、睡眠障害、腰痛、摂食障害、慢性疼痛、IBDなど、疾患や用途に応じて処方できるよう用意されており、医師はワンクリックでDTxアプリの患者の処方とオンボーディングを行うことができるそうです。
※プラットフォーム内で選択できるDTxアプリは、CEマークまたはFDA承認がなされたもの、と臨床的に検証されたものが用意されているそうです。
DTx:Digital Therapeutics(デジタルセラピューティクス)の略。「治療用アプリ」「デジタル治療」「デジタル薬」とも呼ばれる。「疾患等を治療、管理、予防するため、証拠に基づいた治療介入を提供するデジタル製品。

出所:https://www.appthera.fr/dtx-manufacturers

DTxを処方すると、その処方箋は自動で公的/民間の保険会社に請求されるそうです。保険請求の面でも便利な機能が搭載されていますね。

出所:https://www.appthera.fr/dtx-manufacturers

6. DI&CARE:不眠症

企業名:DI&CARE
URL:https://di-care.com
設立年・所在地:2023年・ロス(仏)
直近ラウンド:Non-equity Assistance
調達金額:N/A

DI&CAREは、睡眠とメンタルヘルスのための 「デジタル医薬品 」を開発している企業です。 同社は、認知行動療法 (CBT) *を使用して慢性不眠症を治療するためにDTxを開発し、実際に販売されています。
↓のようにeurasante.という欧州のライフサイエンス分野に特化した開発支援機関でも紹介されています。

https://www.eurasante.com/entreprises/sleepify/

*認知行動療法(CBT) は、不安障害、恐怖症、うつ病などの他の多くの精神病状に対する標準治療法とされています。

同社は、「睡眠とその病理学」という専門で大学を卒業した2人の薬学博士によって設立されたものです。健康業界で15 年間の管理経験を積んだ彼らの目標は、メンタルヘルスの分野で革新的なデジタルソリューションを開発すること。
WHOの発表によれば世界の8人に1人が精神障害を抱えており、精神的健康が悪い患者の中には睡眠障害に苦しんでいる35~49歳の人々が含まれているそうです。彼らの開発によって、このペインが解消される未来がくるとなれば、救われる人が多くインパクトが大きいですね。

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志/のぞみ
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