正しい判断をするための「もし...だったら」

年間売上高が7兆円を超えるテクノロジー企業・Intel。
マイクロプロセッサやクラウド製品を提供していて、サーバーやデスクトップCPUの市場では圧倒的な存在です。

半導体メモリーの製造企業だったIntelが、CPUに注力製品を変えたことで1980年台以降大きく成長を遂げたことは有名なお話です。
創業のときの事業から離れるという決断はけっして簡単なものではないはず。スタートアップだってなかなかピボットできないし、カネボウのような大企業でも創業事業にこだわりすぎて成長が止まってしまいます。
なぜIntelはそんな決断ができたのか。

アンディ・グローブとゴードン・ムーアの対話

インテルの創業以降の成長を描いた↓の本で、決断に至った経営者同士の会話が描かれています。(昨年『パラノイアだけが生き残る』という名前で復刻出版されました)

場面は1980年代中盤。日本メーカーがDRAM製造分野で力をつけ、コスト優位性がなくなってきていました。1979年からCEOを務めていたアンディ・グローブは、創業者であるゴードン・ムーアと会話をします。

グローブ:もしわれわれが追い出され、取締役会が新しいCEOを任命したとしたら、その男は、いったいどんな策を取ると思うかい?
ムーア:メモリー事業からの撤退だろうな。
グローブ:それをわれわれの手でやろうじゃないか。

全く新しい人ととして考える

この「まさにいま、新しいCEOが就任したらどういう意思決定をするのか?」という問いは、素晴らしいと感じました。

日々の判断には、どうしても昨日までにしてきた行動やそれまでの意思決定に縛られてしまいます。思考にも慣性が働くし、どうしても人間は一貫性を求めてしまう。その結果、ベストな意思決定から少しずつ離れてしまう。

過去を振り払い、ベストの意思決定をするために、いま、この瞬間に自分の立場に立った人間だと仮定して考えること。
言うは易し、行うは難し。
それを行うために、↑の問いかけ・対話が必要だったんだと思います。

「もし今この瞬間に、自分の立場に立った人だとしたら?」という問いかけ

この問いかけは、企業経営での意思決定はもちろん、もっと小さな意思決定をするときにも活かせます。

・「10年後の自分がいまタイムマシンで今の自分になったとしたら、どんな意思決定をするのか?」(時間軸の移動)
・「いまこの自分と同じ立場に全く別の人が立ったら、どんな意思決定をするだろうか?」(人軸の移動)

のような問いかけは、慣性・感情のバイアスに縛られた自分の思考を開放するきっかけになるでしょう。正しい決断をするために、一つの仮説を深く追求していくのではなく、一歩引いて問いかけ・対話を行うことでよりよい答えに行きつけるのかもしれません。

私も、一緒に働くパートナーやクライアントが、より良い意思決定をするための問いかけをできるように、日々前進していきます。

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志/のぞみ
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