神戸からのデジタルヘルスレポート #117(カップルセラピー・セクシャル)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!
今回は全20回のうち14回目、テーマは「カップルセラピー・セクシャル」を取り上げていきます。
<参考:カップルセラピーとは>
カップルセラピーは、夫婦や異性・同性の恋人など、パートナー間における問題の改善・修復を目的としたセラピーです。
▼参考
1. Ritual:バーチャルカップルセラピー
Ritualは、カップルの人間関係に関するカウンセリングおよびアドバイスを提供するバーチャルカップルセラピーを提供している企業です。カップルの約75%が重大な問題に直面しているにも関わらず、セラピーを実際に受けているのは8%に留まっているそうです。「人間関係」というメンタル面に大きな影響を与えるこの分野に対し、「カップル」の人間関係面からアプローチを試みているのが同社です。カップルが子育てやコミュニケーションの問題から、親密さやお金に関する葛藤まで、あらゆる問題に対処できるように支援するツールを開発しています。
現在、割合は少ないもののカップルセラピーを受けているカップルの大多数は、互いの意見の相違について解消できず、半数は離婚する事態に至っているそうです。このカップルの抱える問題とセラピーニーズに応えることが、同社の目標です。米国だけでも推定で1,500人がすでにカップルセラピーを受けており、その市場規模は$30億にもなる見込みだそうです。
サービス内容>
アプリのダウンロードとカウンセラーの選好
14の質問に回答し、セラピストの適合性を判断し、プログラムを推奨
(質問例)
過去6か月以内に重度の精神的健康上の問題を経験したかどうか
パートナーとご自身が互いに話す内容に満足しているか?等、関係性に関すること
※DVを受けている人はサービス利用からは除外される
希望セッション量、パートナーと一緒に参加/ひとりで参加、いずれかを選択
定期的にカウンセラーとセッションを行い、改善していく(ビデオ通話やメッセージでのやり取り)
同社のBlogでは、「パートナーに対してこの言葉を使うのはやめましょう」のような、人間関係において注意しておきたいこと、知っておきたいこと等が記事として格納されています。セラピーだけでなく、啓蒙的な活動も行っているようですね。
また、同社は2022年10月に$200万の調達に成功しています。記事内に記載がございますが、創設者の3名は、パンデミックの最中に人間関係の重要性に気付くのと同時に、それを生活の重要な局面でサポートするリソースがいかに少ないか、外部環境のよってどれほど人間関係が脆弱になる可能性があるかを目の当たりにしたそうです。この人間関係を改善しポジティブな状態にすることが人々にとって価値があると考え、特にセラピーの恩恵を受けている割合が低いカップルを対象としたサポートソリューションの作成に着手したそうです。
2. WeConcile, Inc:セラピストなしでも使用可のカップル関係改善アプリ
WeConcileは、人間関係(特にカップルパートナーとの関係)が円滑となるよう、セラピストがいなくても使用できるように設計されているアプリソリューションです。
<サービス内容>
本アプリをとおして、ユーザーは感情に対処する新しい方法を学び、冷静に選択し行動できるようなサポートを受けれます。(実証済みのカップルセラピーの方法を自社のeラーニング システムに統合しているんだそうです。) 尚、料金も優しく設定されており、セラピストとの 1回のセッションの料金で3~10か月間の人間関係のサポートを受けられます。
アプリの使い方について説明している動画がございます。よろしければどうぞ。
また、サービスを利用したユーザーの声の例についての動画もございます。こちらもよろしければご覧ください。
創業者であるジェニファー・レール氏は、セラピストと同様の知識・理解をカップルでも行うことができ、そのような状態になることで、カップルの関係性の改善および成長に寄与できると述べています。同社のサービスは、この考えを根底に、セラピストによるセラピー/カウンセリングの形式を主にするのではなく、カップル自身が自分たちで学習に取り組みことを推奨し、その学習を提供するプログラム設計となっています。
3. Aisling Marriage & Family Therapy:結婚・家族セラピー
Aisling Marriage & Family Therapyは、結婚・家族に特化したセラピーを提供しています、内容としては、人間関係の葛藤、自己成長の課題、依存症、性の問題、不安、人生への不満、といったメンタル面の不安に対するケアサービスです。
<サービス内容>
特別なテクノロジー等を用いたケアソリューションではないですが、以下のような、家族、カップル、性に関するケアサポートを行っています。
カップルと家族のセラピー カップル(未婚、婚前、婚姻中含む)がパートナーとの健全な関係と強いつながりを回復するためのカウンセリング 不倫、性的懸念、離婚、再婚、コミュニケーションの問題、親密さ、トラウマ、不妊などの家族感問題のメンタルケア
セックス(性)、ジェンダーに関するセラピー 性的な問題、悩みに関するカウンセリング 性的関係(カップル、夫婦間)の関係改善、強化 ※男女のほぼ 3分の2が生涯のうちに一度は性的問題を経験しているんだそうです。
子供/プレイセラピー お子様の行動や精神的な健康に関するカウンセリング お子様が新しい対処スキルを学び、親子関係を良好にできるようサポート
その他個別カウンセリング
創業者であり代表のサラ・ストックトン氏は、結婚&ファミリーセラピーの認定資格を持つセラピストですが、同時にジェンダーの問題をめぐる若者や家族に関する医療現場に携わっていた臨床医でもあります。性転換手術を承認するための手続きにも多く関与してきた彼女だからこそ、家族やカップルパートナー間のメンタルケア、性に関する問題およびケアに特化したサポートを始めたのかもしれません。
以下サラ氏のインタビュー動画では、彼女自身のこれまでのトランスジェンダー等、臨床医としてその分野に携わってきた経験について語っています。1時間超えのボリュームある内容ですが、よろしければどうぞ。
4. Ozex:産後の性的ヘルスケア
Ozexは、アプリを通して第一子出産後の新米ママ・パパ(新米両親)たちの性的ヘルスケアをサポートするサービスを提供しています。※フランス語圏のみ
<サービス内容>
同社は、第一子を出産した夫婦が直面する「親と恋人の役割をどうやって両立されたら良いのか?」に対し、産後のセクシュアリティ問題の解決に取り組んでいます。実際、2016年に米国で実施された調査では、調査対象の239組の夫婦の内90%が、出産後、性的の懸念を抱えるようになったと回答しているそうです。
サービス提供方法はアプリのWebプラットフォームによるサブスクリプションモデルとなっており、遠隔かつ匿名で専門家に相談できるような設計となっています。
父、母、どちらもサポートできるようになっており、性的欲求、夫婦関係、父/母であることに関する精神的健康、ご自身/パートナーの身体的変化とその理解(ホルモンバランスの変化による身体的変化等)、子供に対する適応、といった、出産前後で大きく変わる要素について、パーソナライズされた内容をニュースレターとして受領することができるそうです。
<コンテンツ例>
コンテンツの一部として、「性的パフォーマンスのプレッシャーを軽減し性的快感を高めるためには」というテーマでの解決のヒントとして、以下のような動画も公表しています。センシティブなテーマですが、夫婦間の関係性を深めるためには大事なテーマですよね。フランス語の動画となっていますが、よろしければ、翻訳機能を用いてご覧ください。
ある研究によると、性的パフォーマンス不安、恐怖が、男性の約9~25%、女性の6~16%に影響を与えているそうです。(Pyke、2020)
同社は、夫婦で参加できるワークショップ等も開催しているそうです。よろしければ、Facebookも覗いてみてください。
また、性教育団体がデジタルツールを使用してインターネットユーザーを教育する方法を提案するシンポジウムを開催した際、Ozexプラットフォームの創設者、Marie-Claire Hamel氏が登場しています。彼は、「人々は疑問があるとグーグルで検索したり、友達に相談したりする傾向がありますが、これらは信頼できる信頼できる情報源ではありません」と述べ、インターネットで拡散されている不確かな性情報への警鐘と、確かな情報を持つ専門家の情報発信、プラットフォームの機能を強化する必要があることを訴えています。出産後のカップルだけでなく、「性教育」という大きな括りでも、同社が果たす役割は大きそうです。
5. HeHealth:AIでペニスの健康管理
HeHealthは、AIを活用した性的健康検査プラットフォームで、男性向け、男性のペニスの健康状態を把握することができるサービスとなっています。
<サービス内容>
初期検査(AIによる診断)にはわずか1分、匿名性で手頃な価格で、性感染症やその他の疾患の症状をスクリーニングできるようになっています。現在、190カ国以上で利用できるそうです。男性の性器に関する症状は見過ごせない重要なものであるにもかかわらず、そのセンシティブな特性から、重症化するまで受診に至らないケースが多くあります。このサービスは、早い段階での疾患の検出と、早期治療での性感染症の拡大防止にも寄与したいとの目的からうまれたものです。
同社のFacebook動画で、本サービスを紹介しているものがございます。よろしければご覧ください。
同社は「メンズヘルス革命」を掲げ、男性の性的健康をよりアクセスしやすく、偏見のないものにしたい、と述べています。HeHealthの創設者であるYudara Kularathne博士、Lu Mei Ling博士、および Rayner Kay Jin Tan博士が、HeHeHealthを設立した理由について語っている動画もございます。こちらもよろしければご覧ください。
同社は、TwitterやFacebook等のSNSで、男性の性的健康に関すること、カップルのより良い関係のためのセックスについて等、様々なTipsを紹介しています。(初めて知りましたが、ペニスは骨折することもあるんだそうです。そういった注意したほうが良いことも紹介されています)