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神戸からのデジタルヘルスレポート #106(FemCare・MaleTech①)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!

今回は全20回のうち3回目、テーマは「FemCare・MaleTech①」を取り上げていきます。


1. Axena Health:女性の骨盤底筋管理

企業名:Axena Health
URL:https://www.levatherapy.com
設立年・所在地:2023年・ニュートン(米国)
直近ラウンド:SeriesA
調達金額:$25M

Axena Healthは、骨盤底筋の衰えによって引き起こされる女性の尿失禁と慢性便失禁の治療を目的とした、デジタル療法を提供している企業です。
同社が提供しているLeva Pelvic Health Systemシステムは、FDA認可を得ており、アプリに接続する膣運動センサーから骨盤底筋トレーニングを通じてユーザーをガイドする仕様となっています。自宅でできる1日わずか 5分の骨盤底筋トレーニングで、非侵襲的、薬を使わない方法です。

上記製品が対象としている疾患は主に以下の3つです。

  • 腹圧性尿失禁(SUI): 咳、笑い、またはくしゃみをしたときの不随意の尿失禁

  • 軽度から中等度の切迫性尿失禁 (UUI ) :過活動膀胱 (OAB) を含む。突然の強く 制御不能な排尿衝動。例えば、トイレに行く途中で尿を漏らす等

  • 混合型尿失禁(MUI): 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の症状

2014年の研究では、米国女性の骨盤底疾患はかなり一般的であると報告されています。同報告によると、米国女性の17.1%が中等度から重度の尿失禁を有しており9.4% が便失禁を少なくとも毎月管理しているとされています。

299人の参加者を対象とした同社の8週間の臨床試験では、「1日に約2回の尿漏れ」が発生していた状況から、「1週間に約2回の尿漏れ」に改善した結果が確認されているそうです。Leva Pelvic Health Systemシステムによる骨盤底筋トレーニングを行うことで、尿失禁の改善につながることが示唆されています。

出所:https://www.levatherapy.com/hcps/clinical-results/

2. Iron Health:女性のプライマリケア

企業名:Iron Health
URL:https://www.ironhealth.io/
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:$4.5M

Iron Health は、産科医と婦人科医を仮想空間上で繋ぎ連携させ、その患者をサポートするプラットフォームを開発しています。このプラットフォームでは、産婦人科医とプライマリ、専門、行動およびウェルネス ケアの提供者との間のギャップを埋めることを目的としています。

<サービス内容>

  • To産婦人科医

    • 患者に必要なケア・サービスの選択肢(プライマリケア、メンタルヘルス、栄養、慢性疾患、更年期障害など)の提供

    • 患者をスクリーニングし、選択した各ケアのリスクを階層別に表示

    • バーチャル訪問とダイレクトメッセージによるケアの提供

    • 患者履歴をEHRで管理できる

    • 患者の進行状況をトラッキングし、診療のサポートを行う

  • To患者

    • プライマリケアから栄養や運動等の日常の健康に至るまで、産婦人科の Iron Healthケア チームのメンバーとバーチャルで面会できる

    • 医師の診察か必要かどうか?についての相談も可能

    • パーソナルケアプランの作成とサポート(健康状態や目標の管理)

出所:https://www.ironhealth.io/

同社が上記のような女性向けプライマリケアサービスを提供している背景には、プライマリ・ケア医の利用の減少と女性人口の最大60%がPCP(プライマリ・ケア医)を持っていない現状がある、と述べられています。また、米国では産婦人科医の不足に直面しているため、それをテクノロジーでサポートすることが求められています。そのような中、女性のヘルスケアを点ではなく線で、過程のすべてを包括的にサポートできるソリューションを目指して構築されたのが本サービスとのことです。(以下のRedesign Health Venture会長のブログ記事内でIron Healthの立ち上げ背景、女性のヘルスケアを取り巻く状況について述べられています。)

3. theblood:経血(月経血)による検査

企業名:theblood
URL:https://www.theblood.io
設立年・所在地:2022年・ベルリン(ドイツ)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:€1M

thebloodは、これまで捨てられるしかなかった経血(月経血)を、血液に代わるデータとして用いる新たな検査手法を開発している企業です。同様の取り組みとして過去に本レポート#66で紹介した「NextGen Jane(使用済みタンポン)」がありますが、今回ご紹介するthebloodは経血そのものを月経カップで採取の上で解析するそうです。

女性は一生のうち合計約7年間生理により出血するといわれているそうです。現在、経血(月経血)は廃棄物であり、研究や臨床に用いられることはほとんどありません。 しかしながら、月経血は簡単に手に入る体液であり、通常の血液採取で針と注射器を用いる血液採取のような侵襲性もない(つまり非侵襲的)です。同社の研究によると、子宮不妊症のマーカーとして提案されている多くが月経血内のデータに存在し、結果的に診断目的に使用できることを実証されたそうです。また、通常の採血による血液では確認できない約400種類のタンパク質が検出されているそうです。

尚、経血は粘度が高く、組織に浸透するため、従来の採血によって採取された血液と同様の遠心分離機でのサンプル分離は困難だそうです。このため、当初はこのプロジェクトは懐疑的にみられていたそう。このような従来型の方法では解析が困難であった経血を解析可能にし、かつ採血サンプルでは得られなかった新たなバイオマーカーを得られた同社の研究およびサービス開発は画期的といえます。

<サービス内容>

  • 提供してもらった月経血の主要なパラメータを分析・追跡

  • 個別の健康レポートを作成(自分の身体と生理周期をより深く知ることができる)

  • 経血はいわゆる月経カップにて採取

出所:https://www.theblood.io/blog/menstrualbloodthekeytobetterdiagnostics

4. SOULA:妊娠、出産、産後のAIアシスタント

企業名:SOULA
URL:https://soula.care/
設立年・所在地:2022年・リマソール(キプロス)
直近ラウンド:N/A
調達金額:$150K

SOULAは、女性の妊娠から出産、出産後(新生児子育て期間)までのメンタルやケアサポートを行うAIチャットボットを提供しています。GPTベースのチャットを利用したデジタルアプリであり、初めてママになる新米ママのための約3割がかかるという産後うつや家族の不和を軽減するために、健康情報や24時間サポートを提供しています。
サービス内容は以下の動画をご覧ください!

<サービス内容>

  • 健康情報コンテンツ 主にメンタル面を中心に妊娠、出産、出産後の赤ちゃんの世話を乗り切るための実践的なポイントを発信

  • AIベースのチャットボット 30,000 人以上のママのドゥーラ*経験を組み合わせて作成

    1. *ドゥーラの詳細は後述。

  • 妊娠プランナー&妊娠トラッカー パーソナライズ設計された妊娠プランとそのサポート、毎週の妊娠記録

出所:https://soula.care/

<ドゥーラコミュニティ>
ドゥーラとは、元々ギリシャ語で「女性に仕える女性」を指しますが、最近では、出産前・出産中(通常陣痛が始まってから出産が終わるまで)・産後早期を通して継続的な身体的、心理的なお産のサポートができる専門家のこと、を指すそうです。

▼参考

同社では、提供製品内でユーザーに提供するコンテンツ作成のため、このドゥーラのコミュニティの作成にも取り組んでいるそうです。

また、FacebookやTikTokでも、プレママおよび新米ママ向けのTipsを発信しています。よろしければご覧ください。

5. MilkMate:母乳育児サポート

企業名:MilkMate
URL:https://www.milkmate.com
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:$5M

MilkMateは、働く母親従業員が自分のキャリアを選択できるよう、常に搾乳ポンプを持ち歩かずとも、オフィスでも授乳できるような搾乳ソリューションを提供しています。産休から復帰する大切な従業員をサポートすることを目的とした、ママ従業員のためのサービスとなっています。

MilkMateは、オフィス内に設けられる搾乳スペースとなっており(以下の画像参照)、産後職場復帰する従業員は、何も準備や持ち込みなく、出社先で搾乳を行うことができるようになっています。

  • 組み立て・滅菌済みの使い捨てリサイクル可能な搾乳器

  • お手洗いや休憩室等の従来スペースでは難しい搾乳を、専用スペースを設けることで解消

出所:https://milkmate.com/about/ https://milkmate.com/wp-content/uploads/2023/04/MilkMate-Company-Backgrounder-2023.pdf

尚、レポートBreast Pumps Market Outlook (2022-2030)によると、2030年までに 搾乳器の売上はCAGR4.6%まで増加、市場規模は$1.72Mまで到達する成長市場と見込まれているそうです。 背景に、産後の早い段階(新生児のとき)に職場復帰をしたい、と考えている女性が仕事を続けながら母乳育児を行いたい、とするニーズが高まっていることがあります。ワーママといった言葉があるように、働きながら子育てする女性は増えています。この時代背景から考えるに、子育て支援の一環として取り組みたいと考える企業のニーズとも合致しているサービスといえるかもしれません。

同社の搾乳ソリューションは、今年2023年春にFDAの認可を得ており、今夏にはマンハッタン都市圏で正式な発売が開始される見込みのようです。(現在は、一部の早期購入者によるソフトローンチ段階だそうです。)


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志/のぞみ
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