神戸からのデジタルヘルスレポート #109(子供・青少年②)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!
今回は全20回のうち6回目、テーマは「子供・青少年②」を取り上げていきます。
1. Checkit:ウェルケア
Checkitは、ウェルケアとよばれるメンタルおよびフィジカル面での健康を管理する行為によって予防医療を促進するため、健康評価を1か所で管理できるプラットフォームを提供しています。大人向けだけでなく、子どもの予防ケア、健康診断にも力を入れています。
<サービス内容>
Checkitは、新規もしくは既存の健康診断の情報を簡単に一元管理できるシステムです。主な機能内容としては、以下となります。
子どもの予防ケア 小児期の定期的な健康診断と健康診断のデータ管理 【Checkitあり/なしの比較】
データ管理 なしの場合:紙のフォームで保護者の同意および支払いを手動で収集(推定時間:3時間) ありの場合:オンライン同意書で支払い含む一括メールで保護者へ送信・収集(自動化されたワークフロー)
健康診断 なしの場合:患者情報、支払いおよび同意書、スクリーニング結果のそれぞれの文書化(推定時間:20時間) ありの場合:子どもの情報は事前に入手ができ、試験結果はプラットフォームへ直接記録(推定時間:4時間)
診断結果の共有 なしの場合:保護者への試験結果を印刷した手紙に記入(推定時間:3時間) ありの場合:保護者は、Checkitポータル上で子供の検査結果を確認できる(自動化されたワークフロー)
統計および追跡調査 なしの場合:紙のフォームに文書化された結果をスプレッドシートに収集、つまり手動での集計(推定時間:10時間) ありの場合:ダッシュボードとレポートでの効率的な統計および調査を実施(自動化されたワークフロー)
企業のウェルネスプログラム※上記、小児期の健康診断と同様
カスタマイズされたワークフロー 地域医療プログラム、企業の健康診断、学校の検診、または個人の患者の健康情報について、カスタマイズされた個々のソリューションと連携
ライフダッシュボード すべての健康評価データを統合させ、スクリーニングを簡単に行うことができる
管理者のデータ管理および必要な書類関係の効率化 例:デジタル同意書、オンライン患者アンケート、請求書、自動患者レポート
<数秒で各児童を検査できる視力検査セッションの成功>
Linkedin上の投稿では、先進的な検査の一例として数秒で可能な視力検査セッションについても紹介しています。より効率的かつ迅速な検査手法を取り入れ、Checkitポータルに自動的に管理されるデジタルプラットフォームの利点が垣間見えます。
2. Nulearn:10代思春期のメンタルサポート
Nulearnは、うつ病や不安に悩む13~18歳までの思春期10代の子たちを対象とした、AIによるメンタルサポートプラットフォームです。
<サービス内容>
▼10代の思春期世代(うつ病、不安、学業成績の低下を経験している青少年を対象)
診断前のアセスメント:10代特有の悩みやニーズに沿った臨床診断を実施 親がアンケートに回答する形で行う 回答が完了すると、診断のもと、専門家とのカウンセリングを行う
1に基づくメンタルサポートを個別にカスタマイズしプログラムを策定 根本的な原因を特定し、数週間以内に不安やうつ病の兆候を軽減できるようなアプローチを作成
オンラインによるメンタルヘルス専門家とのセッション、ライフコーチ メンタルサポートだけでなく、栄養や生活習慣、身体的健康面もサポート
▼保護者
お子さまの長期的な回復と最適な健康状態を確保するためのガイダンスを作成
(例)
子供との接し方、会話方法
家庭で健康的な生活習慣を促進するためのアドバイス
お子様が自分のユニークな能力や才能を認識できるようサポートする方法
子どもが具体的な目標を設定し、人生の目的を達成できるように助ける方法
また、子どもとその親だけでなく、学校にも本プラットフォームへの参加を推奨しています。参加した学校は、Nulearnのサービスを通じて専門の心理学者から、青少年のケースを分析し、プログラム中の発達をサポートする方法を指導いただけるようになります。
学校が青少年の発達と成長にとって最も重要な場所の 1 つであることから鑑みても、積極的な取り組みといえるかもしれません。
▼参加学校の例
3. Lumate Health:10代の不安症ケア
Lumate Healthは、不安症をはじめとした10代の子どもたちの精神疾患を治療するための遠隔療法プラットフォームを提供しています。この遠隔療法は、認知行動遠隔療法という、30年以上に渡って研究されてきた手法(同社の代表でもあるコロンビア大学教授がリーダーとして進めてきた研究)に基づき提供されてます。このため、Lumate Healthの所属する専門セラピストたちは、全員、博士号または修士号レベルのスキルを有しているそうです。
同社によると、10代の若者たちの80%は、毎日「ストレス」を感じており、そのうち30%は重大な不安に苦しんでいるといいます。この不安症は、昨今の若者に影響を与える最も一般的な精神疾患である、と本研究のリーダー的存在であるAnne Marie Albano教授は述べています。詳しくは、以下の動画、彼女に関する当該企業のページをご参照ください。
<サービス内容>
短いクイズを、サイト経由もしくは電話にて実施
1の診断結果に基づき、遠隔で3~4か月間のプログラム(認知行動療法)を提供
<本サービスの基となっている研究について>
本サービスの基となっている研究を牽引している、Anne Marie Albano教授を含む主要チームでは、
①10代の不安症について
②10代の不安に影響するソーシャルメディアの影響について
③児童・青少年不安複合研究(CAMS)における薬物療法、認知行動療法 (CBT)について
といった研究とその内容を公開しています。
よろしければ、以下それぞれご覧ください。
①10代の不安症について
②10代の不安に影響するソーシャルメディアの影響について
③児童・青少年不安複合研究(CAMS)における薬物療法、認知行動療法 (CBT)について
4. Braver Challenges:暴露療法による子どもの不安症ケア
Braver Challengesは、不安や強迫性障害に最も効果があると証明されているという「暴露療法*」による、セラピーサービスを提供しています。
*暴露療法:不安の原因になる刺激に段階的に触れることで、不安を消していく方法。 主に不安症やPTSD、強迫症に用いられる行動療法。
<サービス内容>
パンデミック下において、バーチャルでの体験は加速しましたが、一方、子どもたちがリアルの場で体験すること、経験することに制限が生じました。このため、日常に戻る際に不安を感じる子どもが増える、という弊害が起こっています。同社のサービスは、子どもたちが不安に対して逃げるのではなく、立ち向かえるように、トレーニング設計されているサービスです。
小児の精神的健康状態の評価と治療の資格を持つ専門家(小児学者)とコーチが連携し、Braver Challengeと呼ばれるツール(トレーニングプログラム)を使用して、子どもたちが不安を乗り越えて日常生活に戻れるようにサポートしています。
▼Braver Challengeを行うコーチと子ども。ゴミ捨て場での汚染の恐怖に立ち向かう
本サービスの内容について、CEOはじめ、専門家が解説している動画があります。よろしければ、ご覧ください。
5. Autism Center of Excellence:自閉症ケア
Autism Center of Excellenceは、ABA療法の専門家であるMarie Ratliff-Blackが牽引する臨床チームによって開発された2~14歳までの自閉症の子どもたち向けのABAセラピーを提供しています。
*ABA療法:応用行動分析(Applied Behavior Analysis)」、別名「行動療法」。長所となる行動に対しては褒めることで伸ばし、短所となる抑えたい行動に対しては、褒美を一切与えない、軽い不快を与える、といった行動とによって抑える、ということを基本とする方法
<サービス内容>
ABA療法:主なセラピープログラム。自閉症の子供たちとその家族にABA療法のスキルを身に着けられるよう支援
早期介入ABA療法:発達の遅れや障害がある可能性のある幼児 (4 歳未満) 向けに設計
学校におけるABA療法:自閉症の子どもも従来の学校で教育を受けられるよう準備できる
言語療法:失語症や音韻障害を持つ子ども向けの、同社のの言語聴覚士 (SLP) による特別トレーニング
作業療法:同社の作業療法士による。小さな物を拾う、書く、衣服を留める などの重要な日常動作に使用される指など、体の小さな筋肉に焦点を当てたトレーニング
ペアレントトレーニング:治療以外でも保護者ができるABAテクニックのレクチャー
内容としては、Step1でのヒアリング、Step2でヒアリングの診断結果、Step3での治療計画の策定、Step4での治療計画の実行とと進捗管理、を行う格好です。