ウマ娘冠奏曲に参加しました (負けないでヒシミラクル!メイキング)
のをかです。アニメーションや映像、絵を作っています。
この度こちらの企画に参加させていただきました。
普段アニメーション作家として活動している人間が音MAD合作に参加する、というのは双方から見てもあまりないことだと思うので、経緯や制作過程などを記せればと思います。
結果的にメイキングにもなったので、アニメーションにご興味がある方の参考にもなれば幸いです。
とてもボリュームのある記事になりましたので、目次からご興味のある部分だけ見ていたいただく形でも問題ありません。
この記事、音MADを見ている方が読むのか普段から僕を見て下さっている方が読むのかわかりません。手広めな内容にできればと思います。ということでまずは前提から。
「ウマ娘冠奏曲」について
◼︎音MADとは、合作とは
音MADってなんですか?という方に一言で説明するなら、「既存の音声を加工して作る、二次創作音声・映像作品」です。といっても僕自身音MADの人間ではないので、厳密に説明できる自信はないです。しょっぱなから下手なこと言えないなあと怯えています。
では音MAD合作は何かというと、その名の通り「複数人の作者が集って作る、音MAD作品リレー」です。合同誌の映像版です。
その中でも今回はメドレー形式といって、様々な曲が繋がって10分近くの長いセトリが組まれて、曲ごとに担当作者が変わるという形を取っています。
メドレーというのは僕もこの企画に参加して初めて知ったのですが、多分ニコニコ動画流星群や組曲とかが1番身近でわかりやすいかと。始祖かも。
総じて今回の「ウマ娘冠奏曲」は、「複数人のクリエイターによる、ウマ娘の二次創作音声・映像作品リレー」ということになります。多分そんなに大きくズレたことは言っていないはずです。
◼︎のをかとウマ娘~奏曲シリーズ
ウマ娘が流行り始めた頃から、僕はニコニコ動画の「ウマ娘プリティーダービー」や「ぼっち・ざ・ろっく!」といった好きなジャンルのランキングを時々眺めて、面白そうな動画があったら見ていました。
そしてアプリウマ娘が1周年を迎えた時、ある動画と出会います。
雷撃でした。「音MAD」「合作」という表現手法を強く認識したきっかけでした。観るたびに原作であるウマ娘への愛と熱量に当てられ、そして自分の中にあるウマ娘への情熱も増幅し、まさに二次創作の究極系だと感じました。僕は二次創作のイラストや漫画を描いていましたが、この五十数人による約16分の動画のエネルギーに勝てる気がしない。(勝ち負けじゃないですが)
映像の熱量、ネタの豊富さ、おもしろからかっこいい、かわいい、感動までとにかく幅広くウマ娘の魅力を包括し、ウマ娘というコンテンツの展開をざっくり網羅し、各パートのクオリティもさながら、この16分の尺全体の感情の起伏を見事に構成し切っている。文化的にはグレーな分野だと思いますが、こんなものが生み出せる根本にあるのはコンテンツに対するまっすぐな愛以外の何物でもない。
「自分とは全く関係のない分野だけど、美しいなあ。これに携わるなんてことがあったらどれほど楽しいだろう。自分ならどんな作品で参加しよう。」という、作り手としての界隈の距離感は感じつつも素直な憧れが芽生えました。
まさかその1年半後に本当にお声がかかるなんて想像もしていませんでした。
企画進行について
◼︎招待
全ては一通のDMから始まります。
事件でした。
ずっと追っていた、自分は完全にリスナー側として切り離していた〜奏曲シリーズからのお声がけ。二つ返事で参加表明をしました。
のをかサブがウマ娘2周年記念合作の感想ツイートをしていたのを見つけてお声がけ下さったらしく、基本カスの自炊か大盛りのカレーしか上げてないサブ垢に初めて価値が生まれた瞬間でした。僕の「ウマ娘冠奏曲」が始まります。
(ちなみにこの時点ではまだ「冠奏曲」という名前は決まっていません。)
◼︎打ち合わせ
普段作ってるものも界隈も違います。僕たちは互いのことを成果物以外何も知らない状態です。Discordサーバーにご招待いただき、まずは打ち合わせから。
この時点でサーバーには運営の方7人と他参加者4人という感じで当然圧倒的アウェイなので、どのような空気感なのか興味9.9不安0.1くらいだったのですが、とても気さくで誠実な方々だったので安心しました。現にこの後めちゃくちゃ仲良くなります。
運営の方々と通話で打ち合わせが始まります。
・「破」
曰く、今回の合作は「序→破→急→Final」の4部構成で進めるとのこと。そして僕は破にあたる部分のアンカーを任されるとのこと。この序破急というのは情緒の起伏的な意味もあるのでしょうが、どちらかというと「音MADとして」という意味で使われているらしいです。つまり破のコンセプトは、「音MADの型から外れた、音MADから見て曲芸的な表現」。僕がやるということはすなわち、全編手描きアニメーション。
これはとんでもないお願いなんですが…といった風にご恐縮そうなたいうおさんの提案を半ば上から被せる勢いで「めちゃくちゃ動かします」とお伝えした覚えがあります。
自分の特技を披露するほど浮けるのならば全力でやりたい。そしてこの~奏曲の名を冠するウマ娘合作シリーズにずっと憧れていたし、何より大好きなウマ娘でファンアニメーションを作ってみるという挑戦は、なんとも熱のある響きがしました。
早速キャラ決めと曲決めが始まります。
・キャラ決め
ウマ娘の話をしましょう。
ヒシミラクルが好きです。
何か大きな決意や目標を持って走るウマ娘達の中で極めて特異な、「なんとなく走る」ウマ娘。大学進学やその先の就職までぼんやり考えていた中、トレーナーに君ならレースで勝てる、やれる、いける、できると背中を押されおだてられ、それなら頑張ってみるかあ、された期待には応えたいと自分なりのペースで努力する等身大のがんばりストーリー。
選抜レースで勝つ瞬間の「もう普通の人生には戻れないんだな」という事実を受け入れるモノローグは、個人的にもかなり刺さるものがあります。
菊花賞と天皇賞春を勝つも、どちらのレースもメンバーが薄かったが故に実力はフロック視され、6番人気で迎えた宝塚記念。凄まじいメンバーを相手にロングスパートで捻り倒し、2億円の配当金を手に入れた史実の伝説のおじさんも含めて、まさに名前に倣ったふつ~だけどミラクルなウマ娘です。
アヤベさんが好きです。
ここ信じられないくらい長くなったので今回は割愛。
ウマ娘の話終わり。
ヒシミラクルかアヤベさんのどちらかを中心に描きたいとお伝えしたところ、アヤベさんは最後にがっつり出番があるとのことなので、ヒシミラクルを主役にすることになりました。
今回は合作全体で全ウマ娘を出したいとのことなので、先ほど述べた超豪華宝塚記念のメンバー(シンボリクリスエス、タップダンスシチー、ネオユニヴァース、アグネスデジタル)を描いていくことになりました。楽しくなってきた!
同じ宝塚記念に出走しているダンツフレームという競走馬が、合作公開2日前にウマ娘に実装されることなど、この時は知る由もありませんでした。
・曲決め
キャラクターがすんなり決まり、次は曲決めです。メドレーの前と次の曲は決まっており、その兼ね合いからBPM135前後が望ましいとのこと。それでいてしっかりヒシミラクルというキャラクターやこのパートのテーマにフィットし、視聴者が「ああこの曲ね!」とピンと来る知名度を持った楽曲。
これがまあ出ませんでした。結論から言えばこの打ち合わせでは出ず、打ち合わせ後に僕が7曲くらい提案してみたのですがそれも全部違うなあという感じで、運営陣の方々でめちゃくちゃ頭を悩ませたと聞いております。
その末提案されたのがZARDの「負けないで」。言わずもがな超名曲です。「負けないで もう少し 最後まで 走り抜けて」と曲がまっすぐなエールを送る裏でミラ子がソファでくつろいでポテチ食ってたら面白いよね、そして最後なんだかんだ本気で走ったら盛り上がる曲だよね、という選曲。針の穴に糸が通った瞬間でした。
「おい」「サボるな」「走れよ」ってツッコミを入れられるというのがミラ子(ヒシミラクル)の唯一無二の個性な気がします。練習をサボるウマ娘といえば他にセイウンスカイなどがいますが、セイウンスカイは少し策略的というか、ただだらけているだけじゃないイメージが個人的に強いです。ミラ子はただだらけています。
曲が決まって打ち込みのデモ音源をいただいた時、あまりにも聴き馴染んだ曲だけど改めて聴くとめっちゃかっこいいなと感じました。そしてキットカットおいしいさんによるアレンジも、エレキギターの力強く分厚い音がこう"面"になって全身に押し寄せてくるけど、その後ろのアコギの音がすごく軽やかで、風の吹き抜ける広い空間を感じて(それこそ緑一面のターフみたいな)、「追い~かけて遥かなゆ~めを~」の部分のクラップ音なんか応援されている感じでまさに走るアニメーションにハマりそうだし、展開的にもアツいし、本当に魅力的な音源をいただいてうきうきでした。
余談ですが、キットカットおいしいさんは通話中に画面配信をしながらリアルタイムでこの音源を打ち込んでいて、打ち込み終えた後に「アコギにしてみました」と口にしてさらっと全体を聴かせて下さってかっこよかったです。もはやパフォーマンスに近い。
僕はMVという形で映像を作ることがほとんどなのもあって、音源が最高だと脳内の映像を組む部分がギュインギュイン稼働します。とても長い時間を費やして選曲して下さった運営の皆様、素晴らしいアレンジを下さったキットカットおいしい様、ありがとうございました。
・作業イン
この時点で音MAD担当の方はまだ決まっていません。「音が先か映像が先か、音MADの制作行程がわからない」というお話をしたところ、破パートのコンセプト的にのをかさんがアニメーションを作りやすいように進めたい、という旨をお伝えいただきました。
僕としてはメドレー音源からMV的に映像を作るのが1番やりやすく、音源を頂いた時点で既に映像の構想が浮かんでいたので、まずこの段階でVコン(後述)を制作して、それをベースに音MADをどうするかを考えるという流れになりました。言うなれば音MADの「当て書き」です。普通は音MADが先とのことです。なんならキャラ決めも曲決めも担当者決めより先らしいです。全部逆だ。
映像に着手していきます。
◼︎制作工程、スケジュール
この合作は全部で21パートあり、各パートごとにテキストチャンネルが用意されていて、各々自由に使っていました。僕は進捗ができたら適宜どこかに投げないと次の作業に脳が切り替えられないので、結果的に「10_負けないで」チャンネルが1番うるさかった気がします。
・試し落書き
「やったあウマ娘合作だ!ファンアニメーションだ!」という喜びの勢いそのままに、まだ曲も決まっていない頃手慣らしに送り描きで人体を走らせてみました。この時は落書きのつもりだったのでTwitterにも投下したのですが、結果的にこの勢いで描いた落書きが1番キメのカットとしてうまくいっていたので、ツイートを消して本編Vコンに組み込む形になりました。
すると奇跡的にサビ後半の「か・け」「は・る・か・な」の歌詞とキャラが手前に迫るタイミングがハマっていて、音ハメの神が降りていました。
・絵コンテ、Vコン
絵コンテは映像の設計図(漫画で言うところのネーム)、Vコンはビデオコンテの略で、絵コンテを映像の形にして尺まで決めたものです。
完成したものと比べるといくつか違う部分があって面白いですね。メドレーもキーが違います。
時系列を遡ってみると、
6/10 23:00 曲決定、メドレー仮音源いただく
6/29 2:40 Vコン1稿目
7/7 音声担当がたこーちきさんに決まったとお伝えいただく
という流れでした。音声担当の方が決まる前にVコンが上がっているという奇妙な状況です。
「基本まず音声作品があって、そこに映像が付随する」という音MADの一般的な制作工程を真逆にすることで、破パートの本懐である「音MADの型から外れた表現」も実現したのではと思います。
最終的にこのパートの音声はたこーちきさんによる神人力歌唱一本で贅沢に勝負することになりました。これは僕が先に切ったコンテの内容的に人力でいくしかなくなったぞみたいな側面もあるのではないでしょうか(憶測です)。たこーちきさん、ありがとうございました。
少し音声に脱線しましたが、Vコンには運営の方々からフィードバックをいただきました。
これが本当にありがたかったです。確実に映像が良くなりました。確かな映像の審美眼を持っている方と相談ができるのはとても楽しく安心感があります。
パート単体のクオリティにも繋がりますし、合作全体が見えている運営の方々が各パートに細かくディレクションを入れている様を眺めて「これが〜奏曲シリーズの構成の見事さの要因の一つか…」と納得しました。妥協がないです。あと褒めてもらえて嬉しい。複数人が携わる企画の大事な部分を学ばせていただきました。
さて、Vコンが出来ました。ここで完成までのスケジュール表を制作。運営の方にピン留めしてもらい、途中で変更があった場合は適宜加筆修正するという形を取りました。そして最終的なスケジュール帳がこちらです。
破綻。ミラ子まみれ。頭から全てが崩壊しています。何一つ守れませんでした。格好つけてスケジュール表なんか見せびらかしたらこの有様です。今すぐ消してしまいたい。こんなことになった原因の一つが、1行程目のイメージボードです。
・イメージボード
各カットの印象を決めるために描く絵です。アニメーションを描いた後に想像してた画面と違うぞ!ってなったら修正が大変なので、このイメージボードの工程でしっかり画面を決めたい。
普段の仕事より制作期間が潤沢にあり、尺も30秒しかないということを踏まえた上での今回のテーマが「作画に入るまでをとにかく充実させる(なあなあで描き始めない)」でした。
これまでの制作では〆切までにとにかく完成素材を上げていかなきゃという焦りで、コンテを切り終えたらすぐ作画に入っていたのですが、今回はコンテの後に全カットの背景や色味を一つ一つ練りました。結果的にイメージボードの段階でかなりのんびりしてしまいました。
最終的に作画と撮影(絵を並べて映像に仕上げる工程)の期間はマジでなかったのですが、完成した映像を見た時にやっぱりイメージボードをしっかり練ったおかげで画面が良いなと感じました。
全イメージボードを描き終えた頃には12/12で、キャラ表なんか作ってる暇ないぞと判断し、まあ全部自分で描くならキャラデそんなにブレないだろうということで、ぶっつけでラフ原画(動きのラフ)に入ります。本当はちゃんとアニメーション用にキャラクターデザインを練った方がいいです。
12/9、たこーちきさんの音声が完成します。
ここでは神、とだけ。Vコンの音源も差し替えて、全カットに色がついて、俄然やる気が湧きました。
音源も差し変わりましたし、この段階でかなり映像の印象が見えてきますね。キメのカットの色はあえてアドリブで描いていくことにしました。
・ラフ原画
動きのラフを作る工程です。アニメーションは物を点Aから点Bまで等間隔に複数枚描けばいいというわけではなく、物理や筋肉の力が働くし、キャラクターならその時の感情、らしさが仕草に加わってくるので、加速と減速はどれくらいだとか、どう歩き出してどう立ち止まるのかとか、どういう髪の揺れ方をするかとか、絵単体だけでなく「動き」のラフを練る必要があります。
清書(今回は原画と呼びます)にも時間が必要ですが、今回はとにかく原画に入るまでじっくり作ろうという意気込みだったので、ラフの段階でかなり時間をかけました。おかげでかなり動きが作り込めたと思いますし、全部のラフ原が上がったのは1/19でした。合作公開は2/24。
ここまで進めて初めてカット間の動きのつながりとか見えてくるものがあるので、本当はここまでを早くやるべきなのかもしれません。どんな映像になるかが更に見えてきましたね。
こちらの進捗映像を元に、レース前のスタート時にゲート音を入れていただきました。格段に良くなりました。たこーちきさんありがとうございます。
・原画、仕上げ
あとはひたすら清書です。ここで雑すぎると台無しになるので、時間はありませんが丁寧さも捨てられません。「仕上げ」とは一言で言えばバケツ塗りのことです。色はイメージボードの時点で決まっているので、ひたすら色を置いて隙間を塗りつぶす作業です。
2/16。原画がだいぶ進んできたものの、公開までまあと8日。全カットの背景と撮影が残っている中自分が全ての絵をバケツ塗りしていくのは無理と判断し、急遽メドレーイラスト(後述)で参加されているもふじろ~。さんに仕上げのお手伝いをお願いすることになりました。この判断ができて本当に良かった。本当にありがとうございました。
もふじろ~。さんはTVアニメの仕事をされていますし、趣味絵でもTVアニメのような丁寧で精度の高い絵を描かれるので、むしろ僕自身が手を動かすより遥かに信頼できます。
僕が原画を上げる、もふじろ~。さんが塗る、のやりとりが2/19に終わりました。公開まで5日。この頃にはもふじろ~。さんがジュラキュール・ミホークになっていました。残りの作画は前パートとの繋ぎと、全部自分で描かなければならないキメのカット17のみ!
・背景、撮影
ここで背景美術にも着手!イメージボードの時点でかなり描き込んでいたカットも多く、ほぼそのまま加筆して背景にできました。これはイメージボードをしっかり作った明確な利点の一つでした。
逆にイメージボードの時点であまりピントを合わせられていない背景は、厚塗りじゃなくて線画+バケツ塗りのセル画(アニメの絵)っぽい感じにしました。
一つの映像内で様々なルックが入り乱れるのはここまで来たらもうご愛嬌。偶然室内がセル画、屋外が厚塗りみたいな風に分かれたので、観ていてそこまで違和感はなかったと思います。
c17と全背景を描き終えたのは2/22。公開まであと2日。当然ウマ娘公式も3周年に向けて動きが活発になる頃で、この日は最新情報が公開されるYouTube番組「ぱかライブTV」当日です。3周年で新ウマ娘続々実装!と発表されていたので、企画全体に緊張が走ります。まあとはいえ、
とたかを括っていました。いやめちゃくちゃ来て欲しいのですが、これは今来たらあと2日で描かなきゃいけなくてワロタだなあ、というフリです。既に名前が公開されているオルフェーヴルとジェンティルドンナは来るだろうなあ。
さて冒頭繋ぎも出来て、ここで全作画素材が揃いました。いよいよ撮影開始です!
え?
おい
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!
今回題材にしている2003年宝塚記念の7着。前年の覇者、ダンツフレーム。間違いなくヒシミラクルに立ちはだかった強豪馬の一頭です。おまけに勝負服も公開。
落ち着いて。とりあえず現状上がっている素材を一本の映像に繋げましょう。
9割完成しました。この状態で本編で流れてももう恥ずかしくありません。そして公開まで2日を切っています。目の前にはこのレースに出走している競走馬が新ウマ娘になった姿。
逃げません。
少し迷う時間もありましたが、迷ってる時間があるなら描いてしまおう。だって2日前に実装されたキャラがもう動いてたら面白い。それに役者が登場したのに出さないのはおかしい。というかダンツフレームがかわいい。もはや少しおいしい状況だとすら感じてきました。
4拍に合わせてキャラを登場させていたパートを5分割に崩して無理矢理ダンツフレームを差し込むことにしました。最後ゴール板を駆け抜けるカットは史実レースの全着順、着差、勝負服を参照していたので、モブの格好をさせていたダンツフレーム枠を本物のダンツフレームに差し替えることにしました。
こちらは手が回らないので、6枚ループの横走り素体だけお渡ししてもふじろ~。さんに6枚まるまる描いていただきました。助っ人の人材が贅沢すぎる。僕の描くキャラの頭身って多分ちょっと変なんですが、合わせていただきました。神。
というか本当は順番的にもふじろ~。さんに頼んで描いていただいた方が先です。上がってきた横走りダンツフレームを見て、これは俺も描かないとダメだろうと腹を括りました。もふじろ~。さんありがとう。運営の皆さん、お待たせしてしまい本当にすみません…。
Vコンには存在しなかったダンツフレームのカットを無理矢理捩じ込み、撮影処理をさらに詰めました。ここで気になるのはカット追加によるリズム感の破綻ですが、僕はもうこの映像を繰り返し見すぎててフラットな判断ができなくなっています。
本来なら一晩寝かせて判断するのですが、この時点で2/23 21:00。一晩寝たら公開されています。ということで合作内の皆さまにご意見を求めたところ、
ドナルドとたいうおさんがGOサインをくださいました。このお二人の映像の審美眼には全幅の信頼を置いているので、間違いありません。
2/24 00:29、公開日当日 納品完了。
言わずもがな大遅刻です。映像まとめのとりのえささん、運営の皆様、本当にご迷惑をおかけいたしました…………。すみませんでした……。
おかげで本当に悔いの残らないアニメーションが完成しました。が。
これで終わりではありませんでした。
ライブ公開の22時を目前に控えた21:06、12.seyana+亀上的竜宮生活(タマモ、イナリ、オグリ、クリーク)パートの音声を担当されていた竹塔さんからメンションをいただきます。
あ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ウマ娘世界の「馬」の字は点が2つなのです。4足歩行の馬という動物が存在しないので。これは世界観の根幹に付随するとても大事な設定です。僕のパートだけこれを失念していました。
21:25 データ更新、21:31 差し替え完了。発見して下さった竹塔さん(おそらく全パート確認して下さったのでしょうか…)、そしてギリギリすぎる差し替えのお願いに迅速にご対応いただいたとりのえささん、本当にありがとうございました。ご迷惑をおかけしました…。
これにて10.負けないでパートは完全に完成となります。本当にお疲れ様でした。キットカットおいしいさんの最高なアレンジとたこーちきさんの超絶クオリティな音声も合わせて、素晴らしいパートになったと胸を張れます。
(単品は人力歌唱を含んでおりませんので、ぜひ本編でお聴きください。)
◼︎制作以外で意識したこと
進捗が出来たら適宜投げる
思ったことやウマ娘の更新とかがあったらチャンネルで喋る
全員の全ての進捗にスタンプを押す。時々感想も投げる
通話してたら入る
です。
僕自身、他チャンネルで進捗が出たら俺もやるぞってなるし、自分の進捗にスタンプや感想がついたら嬉しいし頑張れる。逆にスタンプが付かなかったら少し寂しい。そういう小さなコミュニケーションの応酬が互いのモチベーションや企画への意識を高め合って、企画全体が盛り上がっていったらいいなあ、と思ってこういう立ち回りをしました。業務連絡だけのサーバーより、常に何かしらで賑わってる内輪のお祭り感があった方が個人的に楽しいです。
あと普通に皆さんの作品が素晴らしかったので、ちゃんと「素晴らしい!」の気持ちはお伝えしないといけない。
という打算を抜きにしても普通に楽しくてやってました。全部この企画が楽しいおかげです。結果的に少しだけでも全体を鼓舞する要因になれたのではと思ったのでこうして書きました。運営以外の方々ももれなく企画の一員なので、臆せずガンガン発言して乗っかってもいいと思っています。単純に互いに作品を投げ合う環境って楽しいし。
僕は合唱祭で指揮者をやるタイプです。というか毎年やってました。文化祭も毎年クラス実行委員でした。僕がそういうタイプなだけな気がしてきた。個人の趣味です。
メドレーイラストについて
この激動の音MAD本パート制作の裏で、10月中ば、このような企画も並行して進んでおりました。
メドレー音源単体で動画を出すので、楽曲ごとにイラストを用意したいとのこと。もちろんやります。やらせてください。
元々公開後に口どり写真(競馬で勝った馬とその陣営の記念写真)風のイラストを描こうと思っていたので、このイラストを含めて負けないでパートの物語は完結、とすることにしました。
・11/14 打ち合わせ
このタイミングで新しく入られたイラストレーターさんより先に、まずは音MADの空気感をある程度把握している面々で打ち合わせの流れをを詰めたいとのことで、最初の打ち合わせに参加します。進行中に大ラフを切りました。
運営の方からはレース後の後日談的なイラストか、本編内の絵的に映えそうな部分をイラスト版として改めて描くかみたいな提案をいただいたのですが、
このラフをお渡ししたら、もうこれでいきましょうということになりました。
・12/11 ラフ
メドレーPV映像制作のラグマットさんが動きの調整を先に行えるよう、レイヤーを分けたイラストラフを12月中に提出することになりました。お渡ししたのがこちら。この時点ではざっくり手前4人、奥2人と1人という感じでした。後に1人1人レイヤーを分けることになります。
・1/9 完成1
完成しました。この時点で本パート映像はまだラフ原画の作業中で、イメージボードがあるとはいえ最終的なルックが見えていません。結果的にこのメドレーイラストの線質を映像本編に導入する形になりました。
カラッとした晴天の色味、記念写真という形式の中で佇まいや表情にそれぞれのキャラが立っていて、我ながらいいイラストだと思います。全員の足の設置点がめちゃくちゃなんですが、まあトリミングされるしええやろのノリで描いています。
・2/18 演出進捗
メドレーPVはイラストをただベタ貼りするだけでなく少し演出を加えるとのことで、こちら。
感動しました。素晴らしい。自分のイラストがこんな素敵な登場の仕方をしたら本当に笑顔になってしまいます。絵描き冥利に尽きます。
メドレーPVが俄然楽しみだなあと思いながら、映像本編の進捗の方がやばい。ということでイラストはこれにて納品、映像に一極集中という状態になりました。なったはずでした。
・2/22
え?
おい
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
理由なき実装、ノーリーズン。ヒシミラクルの菊花賞で1番人気だったものの、理由なき落馬で武豊をスタート直後に振り落とし110億の馬券を散らせた、同期の皐月賞馬です。
今回のメドレーイラストはヒシミラクルの同期のファインモーションとタニノギムレットも登場させているので、これでノーリーズンがいないのはおかしい。ダンツフレームと合わせて、既にギチギチのメドレーイラストにもう2人加わることになりました。描かないという選択肢はないのです。ラグマットさんすみません……。
ひとまず音MAD本編の映像をしっかり終わらせて、余裕があればメドレーイラストに加筆、ということになりました。
・2/24 00:29、音MAD映像納品完了。そして
・2/24 03:50 ダンツフレーム追加
・2/24 05:27 ノーリーズン追加 完成2
何も間に合っていませんが、ノーリーズンを追加し、メドレーイラストが2度目の完成を迎えました。PV映像担当のラグマットさん、本当にご迷惑をおかけしました…………。ありがとうございました。
これにより音MADの負けないでパート映像、メドレーPVの負けないでパートイラスト、両方が当日朝完成しました。無論大遅刻です。本当に多大なるご迷惑をおかけしました。すみません。本当にありがとうございました……。
おかげで一つの後悔もない作品になりました。
「負けないで」映像内容について
ここまではスケジュールの話でした。ここからは自分のパートのアニメーションの内容について触れていければと思います。
◼︎総評
・コンセプト
「ヒシミラクル(ウマ娘)の魅力を30秒に詰め込む」
・レイアウト
特に何かをこだわったかと言われると難しいです。とにかく見やすいようにしていたと思います。
・イメージボード
好きなアニメop、アニメpvを眺めながら描きました。平家物語とかぶらどらぶとか、それを愛と呼ぶだけとか風のゆくえとか。結果的にどれくらい影響が出たかは微妙ですが、背景も頑張って描くぞとか全カット色味いい感じにするぞという気概になったと思います。
なるべく淡白な撮影処理で彩度強めのルックがいいなあと思うようになっていきました。普段とあまり変わらないかも。夏合宿のシーンなんかは特にイメージボードの色作りが活きてると思います。普段のプロセスじゃ絶対に辿り着けなかった色です。
・キャラクターデザイン
キャラ表は作っていませんが、今回大事な挑戦をしました。それは「影色を色ごとに決める」です。これがかなり大きかったと感じます。今までは乗算で全ての影を上から1色でまとめて塗っていました。
レースシーンのみライブ感を出すために影を乗算の投げ縄ツールで描きましたが、それ以外のカットは全てイメージボードの段階で影色を決めました。乗算で作る影と比べてかなり色が鮮やかに残せるので、今後もスケジュールが許すならそうしたいです。
ミラ子にやわらかい印象を持たせるため、ハイライトは頭に丸2つ。あとほっぺの赤みは最初アップのカットにしかなかったのですが、最終的にほぼ全カットに入れました。頬が赤いとかわいいので。
毎回線画用のブラシに悩んでいるのですが、今回はメドレーイラストの際に使用した少しざらつきのあるペンを採用。これで大正解!という感触ではなかったですが、じゃあどんな線質が良かったかというとまだ辿り着いていません。レースシーンの荒々しい感じは上手く行きましたね。
・作画
前述の通りラフ原画にかなり時間をかけました。これまではスケジュールの都合上1発目から原画で絵と動きを同時に決めるという意味のわからないことをしていたのですが、やはり動きの詰めが甘くなるしアニメーションを楽しめていないので、今回はかなり動きをこだわれて嬉しかったです。
ただ単に絵をたくさん描いて並べただけではなく、キャラクターのらしさをしっかり咀嚼して、自分なりに作画をやったなあという実感があります。
あと今回は影も線画で描きました。これまでは投げ縄で全セル塗ることが多くてなんかぶるぶるしていたので、だいぶ整ったのではないかと思います(整う=良い、というわけではないのですが)。
まだ工程が頭に入っていないのも含めてだいぶ時間がかかりましたし、カットごとにレイヤー構造が違うみたいな状況が発生しました。
・背景美術
イメージボードでだいぶ書き込んだカットはそのまま厚塗りしました。部屋やプールなど屋内の直線・曲線は誤魔化しが効かないので、イメージボードからザクザク整えていくには時間がなく、線画とバケツ塗りを基本に描きました。
結果的に異なる質感の背景が混在する形になりましたが、室内と屋外という質感の分かれ方をしているおかげでそこまで違和感になってないと思います。
アニメーション制作でここまで全カットしっかり背景を描いたのは久しぶりでした。描写を詰め切れてはいないですが雰囲気は悪くないのではと思っています。
・仕上げ
ほとんどをもふじろ~。さんに委託しました。ありがとうございます……。多少のピクセル抜けは気にしないでということにしています。影線周りのレイヤー構造がカットごとに違ってたりして、とても他人に委託できるキャンバスデータではなかったです。本当にありがとうございました。
・撮影
撮影も凝るぞ!と息巻いていたのですが1日くらいしか出来ず。基本クリスタ内でグラデ素材を作って、それを上からベタベタ貼るだけの作業でした。ただこれ以上何かやるべきかと問われるとこれが完成かな、という感じのルックになりました。上からノイズを重ねた質感が好きです。次はもう少しキャラにグラデとかかけてみたい。
続いてカットごとに振り返れたらと思います。ざっくり以下の項目に分けます。
・構成 … 全体を通して観た時のこのシーンの意図
・イメージボード … 色味や構図などのルック
・作画 … 動き、アニメーション
・背景美術 … 背景美術
・仕上げ … 主にもふじろ~。さんに特殊なお願いをした場合
・撮影 … 撮影処理
◼︎繋ぎ、c01,02
・構成
だらけているミラ子。「負けないで」がかっこよく流れ始めた後ろで思い切り欲望に負けてる様から始まるのがヒシミラクルというキャラを立たせていると思います。
冒頭繋ぎは部屋にお菓子とジュースを持ち込む様子。打ち合わせではざっくり「ただいまーっ!!」を参照する形にしようという感じでしたが、ミラ子はお邪魔しますという感じで入ってきそうなので、そろり。
部屋のカットの俯瞰をしっかり見せてだらけてる感を強調したいので、c02に入るタイミングを少し拍子から送らせています。全カットガチガチに拍子に合わせて切り替えると単調になる気もするので。
・イメージボード
昼の室内感がフラットに出たらいいなと思いました。あと最初のカットなのでとにかくミラ子がかわいく映るように意識しました。c02のアップなんかは全身全霊でかわいく描かなければなりません。
ヒシミラクルがサッカーボーイ産駒なのでトレーナー室のカゴの中にはサッカーボールしか入れませんでした。産駒繋がりでトプロもどこかに出したかったなあ。
・作画
特に遊びもなく、自然な動きにしました。
c02はポテチを口に放る→もぐもぐ→スマホ落とす の3つの動きが入ってて地味に忙しく、ポテチが8フレームで消えています。こんな食べ方はスケットダンスのキャプテンしかできません。「おーすこし」の拍に合わせた咀嚼。「さー」でスマホ落下。
・背景美術
基本セル画的な線画とベタで、少し厚塗り風のタッチを加筆しています。物が多かったのでこうなりました。
・撮影
だいたい右上に蛍光灯の青白いスクリーン。c02は撮影時にさらにトーンカーブで色味を強くしました。ミラ子の髪が白っぽいグレーなので、画面いっぱいに映ると色味が寂しくなりがちです。
◼︎c03,04
・構成
育成シナリオの夏合宿イベント。夜にそろりそろりと宿を脱出するミラ子をトレーナーが発見し、翌日の練習メニューを増やすという運動部合宿あるあるみたいな内容です。ミラ子は1度目の夏合宿でとにかく走り込みをやらされるので、早朝ランニングの風景もここに織り交ぜました。
・イメージボード
アプリウマ娘の実際の背景の色を参考にして、夜と早朝の色味にこだわりました。かなりいい画面になったと思います。ミラ子の色も背景に合わせて一から作っています。
・作画
c03は「いーごま」のリズムに合わせて忍び歩き、「で」で右からライト、「は・し」でミラ子がびっくり、という音ハメ。コピペを多用していますが、いい感じに忍び歩き感が出たんじゃないかと思います。びっくりして仰け反る動きはもっと上手くやれたなあと思いますが、難しい。
c04のぽてぽて走りがお気に入りです。今まで描いたことのないリズムの走りが描けました。この走りはぽてぽて感を優先したいので、曲の拍に合わせていません。手前の自転車は拍を取っています。
地面を背景美術のタッチのままProcreate(iPadのお絵描きソフト)で6枚描いてループさせるというかなり変なことをしています。自転車は全部コピペ。
・背景美術
イメージボードから少し加筆したくらいでほぼ変わっていません。夏合宿の屋外の空気感と時間帯が表現できたと思います。
・撮影
月光・日光と反射光、室内から漏れ出る明かりを合成しました。 背景もキャラもかなり色が決まっているので、特殊なことはしていません。
◼︎c05-06,07,08
・構成
逆張り精神もなくはなかったのですが、やはりヒシミラクルというキャラクターを象徴する映像を作るならプールの描写は欠かせませんでした。
育成シナリオのプールから逃げるイベントに倣ってヤエノとバンブーを登場させて、c08は後ろで缶をカンカンしてます。夏合宿シーンと合わせて「逃走→がんばる→逃走→がんばる」の繰り返しになっています。
あとアップ→カメラ引くのカットを1つは入れたかったのでここでやりました。作業的にそこまで難しいことはしていないのですが、やはりカメラがぐっと動くと嬉しいので。
・イメージボード
プール屋内の色味はアプリ内背景と1期の背景の色味を参考にしましたが、もっと詰められたかもしれません。c08の構図がとても気に入っています。
・作画
c05-06 「どんなに」カメラ引く→「は」後ろに走り出す
c07 「な」で蹴り出し、走って逃走
の流れがとても綺麗につながったと思います。
c07で顔が画面外に出た後も目と口のパーツだけ次の絵に残すという変なことをしているのですが、これは直近で天国大魔境OPの面白オバケを観た影響です。顔がちゃんと見えるフレーム数が少ないので、顔の印象を残すみたいな効果が出たらいいなと思っています。
c08の作画は1番お気に入りです。ビート板の浮き方、溺れるミラ子の身体のうねり、水しぶきなど全体的になかなかいいアニメーションが描けたと思っています。「れーてても」に合わせた溺れる動き。後ろの缶で拍取り。
・背景美術
とんでもない大嘘パースです。特にc07。どのカットも尺が短いので、一瞬の見栄えがよければいいと思っています。もっと広々としたプールの感じを出したかったですね。全然背景を描く時間がなかったので線画+バケツ塗りベースです。
・仕上げ
05-06のバンブーとヤエノの影はもふじろ~。さんが付けてくださいました。感謝……。
・撮影
05-06はカメラが引いているように見せるために前景・キャラ・背景の3つに分けて特殊な素材の動かし方をしているのですが、常に3人の足が手前のプールの素材で隠れてなきゃいけないので結構微調整に手間取りました。
ブラー(ぼかし)も使って、ピントが
キャラ→奥に行くキャラ→せり出てきた手前のプール
の順に合う流れにすることで、ミラ子の絶望の顔→その視線の先にあるプール という順番で認識してもらえたらなと思いました。
07,08は特殊なことはしていません。
◼︎c09,10,11,12,12a,13-14
・構成
レースの導入です。ミラ子の前に立ちはだかる強力なライバル達の紹介パート。印象としてはアニメウマ娘1期OPのチームリギルのカットや、アプリウマ娘旧OPで各ウマ娘がモーショングラフィックスと共に順番に登場してくるシーンをイメージしました。
豪華メンバーの象徴として勝ち鞍を並べました。二つ名やヒーロー列伝(競馬のポスター)、名馬の肖像(競馬のポスター2)から持ってくる手もありましたが、ネオユニのものがなかったり、ダンツフレームが挑む側っぽい文面だったのでなしになりました。
ダンツフレームはc12と13の間に無理矢理捩じ込んだのでc12a。最後にヒシミラクルにわあとんでもないメンバーの中に入っちゃったみたいなリアクションをさせて、そのままゲート内のカットに自然に移行できたと思います。この一連のシーンで登場したウマ娘もとい競走馬にもざっくり触れます。宝塚記念2003の旨みなので。
・シンボリクリスエス
年度代表馬で後に天皇賞秋を連覇、ラストランの有馬記念を9馬身差でこちらも連覇。前年の有馬記念も逃げ切る勢いのタップ相手に一頭だけありえない末脚で捉え切っているので観てほしい。
・タップダンスシチー
この宝塚記念の後クリスエス相手にジャパンカップを9馬身差で勝ち、翌年の宝塚記念もリンカーンやゼンノロブロイ、ツルマルボーイ、スティルインラブ相手に先行押し切り勝ち。
・ネオユニヴァース
皐月賞、日本ダービーの2冠を制し、その勢いのまま3歳で宝塚記念に乗り込むという異色ローテ。
・アグネスデジタル
前走の安田記念含め芝ダート中央地方海外すべて関係なしにマイル~中距離でGⅠを6勝し、世紀末覇王テイエムオペラオー(1年間5つのG1含む全てのレースで無双した埒外の強さの馬)の時代に引導を与えた一頭。
・ダンツフレーム
前年宝塚記念覇者。アグネスタキオンやジャングルポケット、マンハッタンカフェを擁する強世代で皐月賞、日本ダービー、安田記念2着と好成績。これから知っていきたい。
・イメージボード
完全にアプリ版ウマ娘旧OPのオマージュをするつもりでした。あの映像より遥かに尺が短いのと、モーショングラフィックスに割ける時間がほとんどなかったのでシンプルな形に。結果的に勝ち鞍やキャラクターが見やすくなったと思います。
・作画
立ち絵のポーズを引用したシンプルな1仕草。ダンツフレームも頭を動かしたかったけど流石に時間的に無理なので手とポニテだけ。目パチだけでも入れたらもっと印象に残ったな~と反省。ミラ子以外は一瞬しか出番がない分、ハイライトや影のシルエットなどのキャラデザの情報量はここが1番多いです。
・背景美術
実は背景の図形素材は全てクリスタで描いています。AEやイラレで作った方が綺麗だし融通が効くと思いますが、ツールをカチカチいじる時間が本当に面白くないので手で描いてしまう悪癖です。
・撮影
極めて単純な内容とはいえ、こういうモーショングラフィックス的なモーショングラフィックスをやったのは初めてです。デジタルの勝ち鞍が多過ぎるし名前が長過ぎるしでどう足掻いてもデザインが破綻しましたが、ここは破綻させた方が面白いのでそのままにしました。
◼︎c15,16
・構成
レースの導入その2。c15はc13-14でミラ子がゲート内で構える流れを受けてのゲート全体を映すカット。ウマ娘がアップで構える→カメラがゲート全体を映す→ゲートを横から映す という流れはアプリのレース前と同じカット割りです。
・イメージボード
ゲートの全体像が映るc15はRTTTにかなり近い構図のカットがあったので、それをスクショして仮置きしていました。c16(スタート時)の構図は迫力を出すためにカメラを地面に置いています。これ以降のカットも含めて、青空と緑一面のターフが映えるカラッとした画面を目指しました。ザ・青、ザ・緑みたいな捻りのない色を使うのは、チープさと強い色の良さのスレスレを狙っている感覚がしました。色、難しい。
・作画
c15は作画素材なし。c16は手前から奥まで複数人が映るので結構面倒でした。c17に向けて、c16の時点で線を汚し始めています。
・背景美術
c15の作り方が本当によくわからなくて、先述したRTTTのカットと実際の当時の阪神競馬場のゲート周りを見ながらそのハイブリッドみたいな景色を描きました。もっと背景に時間を割いて興味を持ちたいですね。
・仕上げ
c16はどのパーツがどの子かかなりややこしい絵だったので自分で塗りました。
・撮影
c15はカメラレイヤーを使用し、若干前後感を出しています。最初は「宝塚記念 GⅠ」だけだったのですが、最終書き出し直前で「2003」を追加。
2億円おじさん※も含めとても象徴的なレースなので追加して良かったと思います。c16は草の反射光として緑のソフトライトを下から当てています。
※ この豪華メンバー + 2200mの中距離で、それまで3000m級の長距離でしか成績を残していないヒシミラクルの単勝に1222万円ぶち込んで、見事的中させ2億円を手にした伝説のおじさん
◼︎c17
・構成
この映像のサビです。とにかく映像のサビで全てを破壊することが自分のセオリーだと思っているので、当初からめちゃくちゃな線で描くつもりでした。
・イメージボード
ありません。最初に落書きで描いた走りのアニメーションがある状態で、あとはアドリブでなんとかしようという感じでした。
・作画
実際の内容やクオリティは置いておいて、意識的にはかなりRTTTの前並武志さんの線質や勢いを意識しています。タイミング感含めてとても真似できないなという結論に至ることになりました。
(RTTT4話。劇場公開の関係で現在非公開)
動きは送り描きで勢いに任せて作りました。曲のBPMも相まってリズム的には結構ゆったり走っているのですが、キャラがカメラに迫る強弱や線の強弱で結構走りの迫力を出せていると思います。
ザラついたブラシでラフと清書の間みたいな線画を描いて、更に上から太い線で強弱を付けて、バケツと投げ縄で無理矢理塗りました。このカットは作画のライブ感を優先するため、影を上から乗算でまとめて塗っています。この上から更に加筆して汚すことも出来ましたが、キャラクター感は残したかったので程々にしました。
みんなの必死な顔が描けて楽しかったです。ミラ子はハイライトがないと別人感がすごかったのでミラ子だけ乗せました。
・背景美術
本当に時間がなかったのがかえって勢いになって、めちゃくちゃに描いたほぼエフェクトみたいな背景を6枚くらい1~2コマ打ちでループさせました。コーナー→斜め→最終直線の3段階に分かれています。最終直線はブラーもかけて荒さを誤魔化しています。
・撮影
貼りっぱなしだと流石にマット過ぎたので上から少しだけ光のスクリーンを差しています。影にオレンジ色が滲むような処理をかけています。
◼︎c18
・構成
ゴールの瞬間のスローモーション、その後画ブレと紙吹雪と共に一気に色がついて駆け抜ける爽快感。
・イメージボード
アニメやアプリウマ娘のメインストーリーを観ていると、ほとんどの場合ゴールの瞬間のカットはゴール板とゴールしたキャラが画面の中心になっています。これはやはり中心に置いた方が見やすくわかりやすいからということなのでしょうが、今回はc17の最後でミラ子がほぼ画面左端に走り抜けていく勢いがあったので、それを追う視線に合わせる形でゴール板も画面の左側に配置しました。
熱戦を繰り広げたクリスエス、タップ、ネオユニ、ツルマルボーイも俯瞰的に映して、焦点をキャラクターではなくレース全体に当てて、「劇的な勝利を挙げたヒシミラクル」というよりは「このメンバーを相手にヒシミラクルが勝った2003年宝塚記念」という距離感のカットにしました。走り抜けるウマ娘たちも贅沢に映せたのでこれでいいと思います。ただやっぱ散々ミラ子に注目してる映像だったのでミラ子中心でも良かったかなー!完成後のたらればです。
色味は15-16と同じくカラッとした晴天の感じに。青と緑の景色を引き立たせるために、画面が白むカットでは赤みがかった影を載せています。
・作画
17人分の横走り6枚ループ。全着順、着差、勝負服カラーの参照。コンテを切った時点で覚悟はしていましたが、案の定とんでもない工数でした。走りの素体は全員分使いまわしています。
このカットの作画が終わった時点でアニメーターさんの友人方と走り作画(ウマ娘走り含む)について話す機会があって、これが本当に勉強になったので先に相談しておけば良かった……になりました。
具体的にはこの走りループ、走りの基本である着地→踏み込み→蹴り出し、の踏み込みの絵がありません。あるにはあるのですが、絶妙に脚が伸び切っちゃっているという感じです。ずっと脚がべたっと地面に張り付いているので、走りというより競歩みたいになっていると教えていただきました。なるほどすぎる。今回は着地の絵を浮かせることで少し誤魔化しました。
あとRTTTを改めて見るとウマ娘の走りって本当に重心が低いです。このカットも「こんな低くしていいの!?」と思いながら描いていましたが、まだまだ低く出来ました。
(RTTT2話。劇場公開の関係で現在非公開)
・背景美術
バケツ塗りメイン。やたら平面的で変な絵だと思います。ゴール後の高揚感的にももっとしっかり描けたらよかったかもしれない。ただこういう変な背景も結構好きなので、今後も変な映像を作る時は使っていきたいです。
・仕上げ
もふじろ~。さんに17人塗っていただいた挙句、公開直前に実装されたダンツフレームの横走り作画を丸々お願いしました。本当にありがとうございました。
・撮影
撮影としては1番工程が多かったかなと思います。画ブレ、紙吹雪、白→カラー、スローモーション→走り抜けを同時にやったのがキマりすぎててお気に入りです。
ゴール時のスローモーションは絵をクリスタで2枚だけ描いて、AEでフレーム補完したのちポスタライゼーション時間でコマ数を落としています。このエフェクトをお教えくださったたいうおさん、ありがとうございました…。
逆光の感じもマスクでなんやかんややっています。紙吹雪は納品直前にチュートリアル動画を見てアドリブで作りましたが、足して本当に良かったなと思います。おめでとうヒシミラクル!
◼︎c19,20
・構成
ゴール後おっとと、という風に立ち止まり、電光掲示板の方を振り向き、わーい!のポーズ。ヒシミラクルは多分勝利の感動で泣いたり心の底から震え上がるようなリアクションを取ったりはせずに、わあ、やったあ!みたいな感じの喜び方をしそうだなと思いました。アプリの勝利モーションも参照しています。
そのままこの映像をテレビで観ているネイチャとマチタンの"自称普通"組を映して次のカノープスパートに移行する、という繋ぎになることが打ち合わせの時点で決まっていたので、映像が小さくなることを考慮して顔アップのみ。
とてもギリギリの納品で素晴らしい繋ぎ、映像まとめを制作下さったとりのえささん、本当にありがとうございました……。
・イメージボード
c15から続くカラッとしたターフの景色ですが、この一連のシーンの色味はc19,20から最初に作りました。ミラ子の顔アップはとにかくかわいく映るように。
・作画
あのスピードで走った後にこの立ち止まり方はかなり危ないと思うのですが、この尺でスピーディに立ち止まる→振り向くまでをやりたかったのと、最後までミラ子のぽてぽて感を出したかったのでこの芝居になりました。
振り向く際の髪のふわっとする感じが面白くなったなと思っています。上手いかと言われるとわからないです。振り向いてからc20まで綺麗につながったと思います。
c20はかなりコピペを多用しているのですが、わりとコミカルでミラ子らしい自然な喜び方になったのではと思います。ハイライト回転も初めて使ってみましたが、どれほど効いてるかはわかりません。でもないよりはぱあっ…!って喜び方が伝わるかも。
このカットも納品直前に舞い散る草を描いたのですが、青い空とミラ子に対して緑が映えて良かったと思います。
・背景美術
先にメドレーイラストを完成させていたので、背景の木と建物は流用しました。
・撮影
上から青のスクリーン、下からターフの緑のソフトライト。今更ですが今回の映像の撮影処理はほぼこういった形です。最後のカットはジャンプするミラ子に追従する形でカメラワークを付けました。
以上で全カット振り返りとなります。総じて30秒の尺をじっくり作れたな、という感想です。コンテもいいし、作画も現時点の自分の中でかなりよくできた方だと思います。
作画、やっぱりキャラクターありきなんじゃないかと思うようになりました。普段の自分のアニメーションはキャラがみんな澄ましててそこまで性格が見えてこなくて、故に動きもこだわりようがない。でも今回はヒシミラクルという既に用意された個性的なキャラクターを動かしたので、こういう時はこういう動きをしそうだな、という想像が膨らんでアニメーションも豊かになる。普段の制作からもっとキャラクターを練ろう、と思いました。
背景や描線、撮影を含めたルックはもっとこだわれると思うので、更にいろんな映像を見て頭を使って作らねばなあという思いです。
今回は自分が立てた企画の性質上避けられなかったのですが、普通のアニメを目指しても誰でもたどり着くような無個性な画面になりがちなので、今後はまた破壊の方向を考えたい。今回のアニメとてもよく出来たと思っていますけどね!何の悔いもありませんし。ただクオリティじゃ勝てない作品が多すぎるし、もっと目指せる魅力があるはず。
やりきった作品が出来て初めて次の作品への反省、考えが始まります。逆にやり切れないと「今回はやりきれなかったので、次はもっと頑張る」しか残らない。その点で見ても今回の映像は大成功だなと思っています。
さて、このアニメーションは音MAD合作内の1パートの映像に過ぎません。全21パートが繋がることで、この合作は完成します。
合作感想
◼︎ウマ娘冠奏曲 全パート
僕のパートに絞ったお話をしてきましたが、全体を通して本当に素晴らしい合作ですので、構成についても触れながら全パートの感想を書き散らそうと思います。音MADに関しては完全に素人視聴者の視点ですが、よければお付き合いください。自然に見た時の感触で、メドレーも音MADも映像もごっちゃになった感想です。
担当された方の話をお伺いしたりもしてるので、そういう内側の立場からの視点もどうしても混じってしまっています。ご了承ください。
01.NEXT FRONTIER
完璧な入り口。これから凄まじいものを見せられるんだなという期待感がこの1パートで極限まで高まります。楽曲に合わせて前半はシニア級のレースとウマ娘に絞っているのが3年目合作の始まりとしてこの上なく適任だし、その後の各ウマ娘の決めゼリフラッシュがこれこれこれ!!という感じ。
全てのセリフがそのキャラを簡潔に象徴していて刺さるし、映像もリッチな加工がされながら徹底して原作を素材にしているから"ウマ娘"への没入感があって、これ以上ないトップバッターという感じがします。
02.気分上々↑↑
競奏曲はしゅぎょう、疾奏曲はモルカー→ ワンダー!という感じでゆったりと迎えられて徐々にギアが上がるイメージがあったけど、冠奏曲は2曲目で「気分上々↑↑」×ギャルウマ娘×ゴリゴリの3D× 超色彩。「おい初っ端からこんなトップスピードでいけるのか!?」という高揚感があります。無理矢理気分を引き上げられる。
合作タイトルにある"極彩"を表すような2パート目。飛ばしてるパートという感じ。結果的にこの勢いが10分間ノンストップなのがすごい。駆け抜けている。
03.ウマーベラス+ Danger Zone
音声、映像共に気分上々↑↑からシームレスに速度をキープ。冠奏曲は「逃げて差す」をやっているかもしれない。僕はこの合作で初めて知った曲が多いけど、食いしん坊組×マーベラスサンデーでウマーベラスという選曲もハマってますよね。Danger Zoneの入り方が好き。イラストがかわいいし終始楽しい。
強烈な色味のパートが続きますが、なにせ3回目なのでこれくらい尖った始まり方も新鮮で楽しめる。「過去に成功した例と同じことをもう一度やるつもりはないです」という気概も感じます(僕が勝手に感じてるだけ)
04.Cordelia Margarita
ブチ上がりが一旦落ち着く。強烈な画面が続いたので、ウマ娘アニメの絵が出てくる安心感が4パート目としての着地感に繋がっていると思います。レースで例えるならスタートから位置取りが終わって追走に入るパート。
前パートマックイーンの「パクパクですわ!」からのパクパクマックイーンリメイクは嬉しい。メジロ家パートになってる点から、人によっては「全キャラ出す総まとめ感」を感じ始める部分だと思う。編集力のあるもすもすさんだけど、このパートは映像的にも見やすく落ち着いているのでやはり着地感があると思う。
共に励みましょう わたくしたちメジロ家の 勝利をこの手に!の流れ、映像カッコ良すぎますよね
05.ハイラルサーキット
がっつり見応えを担保しつつ息が入ったパートが続くと感じます。ロブロイ周りの英雄、魔法使い、皇女、仕事人。異世界イベントのBNWをゼルダの伝説で絡める。キャラクターのブレワイへの落とし込み方が見事すぎる。
キャラ同士のやり取りがパート内で一つの物語として完結してて綺麗。競奏曲のウマ娘裁判パートに続きメスシリンダーさんは本当に巧みな方だなあと尊敬します。疾奏曲のオンリーパートに勝てる作品を僕は今後作れるのかわからない。
06.Life Will Change
夢女子パート。スタイリッシュウマ娘にスタイリッシュなペルソナ5ルック。このルックのおいしいこと全部やってくれてる。途中音声がウインディとフジ×スカイの2軸で同時に流れていて、ここの映像どうするんだろうと思ってたけど、ここでペルソナ5のカットインの演出が活きるのがいい。キングに繋ぐのが綺麗。
07.BLOODY STREAM
前半の終盤を飾る盛り上がり。ここで「グループごとにパートを組んで、ひょっとして全キャラ出す勢いなのか」というコンセプトに気づき出す人も多い気がする。ウマ娘の大きな旨みである血統ネタを完全に引き出し切ってる選曲と内容。各々の親子関係の違いを書き分けてるのも嬉しい。セリフの完成度がすごすぎますよね。
08.フィクション
曲が止まりBPMが変わり、ゆったりと破パート突入。あんまり音MADで見ない映像が続くというコンセプトのトップバッターを飾る、ない漫画のないセリフのないPV。一から全部作ってるという事実。とんでもないことをしています。
色々な作家さんをお呼びしたことでアンソロジー感があって楽しいし、各キャラが活きてるシナリオだと思う。全キャラ出すというコンセプトにおけるデジたんってジョーカーすぎる。
ド頭のすももさんの絵の精度が公式級過ぎますよね。翌子アサダさんの描くキャラ、生き生きとしててかわいい。すがもさんの絵、美麗…。ちぇのさんの描く表情ってポップな親しみやすさがあって好きです。射和さん最後の絵はまさにこのパートを象徴してますよね。
ここからの3パートは全部先に漫画の脚本、ドット絵のモーション、アニメのVコンがあって、それに合わせて音MADを組んでいくという変則的な作り方をしている。なんなら曲選びやキャラ選びより先に映像担当者を決めている。
09.ポーズ
ポケモン風ドット絵パート。ポケモンのタイプに合わせたウマ娘のチョイスが楽しいし、超クオリティの18枚のドット絵がどんどん通り過ぎていく贅沢さがすごい。モーションも見事すぎる。
モーションに合わせたセリフ合わせが気持ちいい。ドット絵素材だけが上がっている段階では映像どう組むんだろうと思ってたけど、マイクラ的な立方体でできた3D空間がハマってて見事すぎる。
10.負けないで
破パートアンカーのフルアニメーション。なんか急にアニメでワロタという感想が引き出せたら嬉しい。
前2パートで比較的ゆったりとした時間が流れていたのに対して、1音目からエレキギターによる厚みのあるロックアレンジで盛り上がる。そのアツさとは裏腹に後ろでだらけているミラ子のコントラストが「おい」感出せたと思う。
人力のクオリティが凄まじすぎる。最終的には楽曲のまっすぐなアツさとロックアレンジに恥じないレースのアニメーションが描けて、ミラ子を中心にしたストーリーの起伏としてもパート内でうまく完結させられたと思う。テープバックで破パート終了。一旦落ち着く。
11.Unwelcome School
静かになってからUnwelcome Schoolのイントロと共にターボが入ってくるの流石に嬉しすぎる。ノリノリターボリメイク。ノリノリ○○ってこまりさんのターボが1番最初だったんですね!特殊なパートが続いたこの流れでめちゃくちゃ正統派な音MADの音声と映像が来るのが嬉しいし、パートの切り替わりとしてわかりやすいとも思う。
ノリノリターボリメイクなのもそうだけど、やっぱりカノープスとUnwelcome Schoolの組み合わせが楽しい。サウンズオブアースの入り方が神すぎる。ロイスアンドロイスも一言でキャラが立ってる。今年のカノープスは一味違うぞ、がこのパートを締めるセリフとして完璧すぎる。
12.Seyana.+亀上的竜宮生活
選曲がすごい。江戸vs関西という具合でわかりやすいし、オグリとクリーク合わせていつもの4人という安心感。今年のカノープスは一味違うぞ、に対するせやなぁ……がやりとりになってて面白い。音声も映像も破壊的で攻撃的で、バカァ!ボコォ!という感じ。後半のクリークのコーラス(?)が気持ちいい。ここから情報の洪水が始まる。
誰でも知ってるみたいなSeyana.だけど、ここで映像のフォーマットもアカネチャンにするのは避けていると思う。故に情報の洪水。なんでクリークが壁の奥に行くのか最初わかんなくて変なカットだなと思ってたけど、公開後に教えてもらって面白かった。
13.盆回り
神。情報の洪水といえばというキャスティング。フクキタル周りのわちゃわちゃ組(?)の個性を出しつつ伊藤社長さんの映像が見れて満足すぎる。何気に起承転結が1パート内でマジでしっかりしててすごい。情報量が多すぎて毎フレーム味がする。スズカ発電、誰が思いつくんだよ。
僕は先日伊藤社長さんに対して「ウマスライダーをリメイクし続けてるだけで面白くなり続ける天才」みたいな大変失礼な感想をお伝えしたんですけど、この盆回りパートも元を辿るとウマスライダーなのかもしれない。しゅぎょうとウマスライダーを同時に発表された結果ウマスライダーの方の作風が生き続けてるのアツすぎる。というかウマスライダーは普通何度もリメイクできない。しかも作るたびに構成も情報量も進化している。すごすぎる。ドッ散り散り本当に爆笑してしまったもんな。天才。話脱線し過ぎ。
このパート、情報の洪水ではあるけど、決して意味不明ではない。むしろ流れとしてはかなり簡潔でわかりやすいお笑いなのがすごい。
14.檄!帝国華撃団
その点から言うとこのパートは明確に意味不明(にしてある)と思う。キャラクターと選曲はわかりやすくサクラ軍団。前半の歌詞がヴィクトリークラブのばか的側面に溢れてて愛らしいし、各キャラのセリフがらしさを立たせていていい。
映像は冒頭の繋ぎ方がバカすぎていい。目が光ってるし車乗ってるし何が起きているんだ???その後の映像も空気感は作りつつ情報を着地させないカメラワークが組まれていて、咀嚼しきれない映像が続いて盆回りから続く混沌が加速する。この辺、ウマ娘的情緒も内包しつつ映像の加速度的な気持ちよさに比重を置いているんだと思う。加速した混沌の行く末が次パート。
15.GOLD RUSH(メイン:ゴーゴー幽霊船)
混沌の終着点。それでいてまとまっていてすごい。ゴーゴー幽霊船のイントロから「GOLD RUSH」の文字と大量のゴルシと純金の船(公式がプレゼント企画にしたやつ)でゴルシパートに入るのがかっこよすぎる。凄まじい情報量を音声と映像で叩きつけられ続けて、内容が繋がっているようで繋がっていなくて、何もわからない。とにかく高揚感だけがある。このわからなさが心地いいし、アプリ版を中心としたゴールドシップというキャラの旨みだよなと思う。ゴルシのセリフ自体が持つ様々なイントネーションが繋がって出来る、音程やリズムの波がすごく心地いい。
16.20th Century Boy
一転シリアス。競馬CMの曲に演出。三冠馬組+エースの気高さ、美しさが全面に出ている。強く、それでいて貫禄があるというか、余裕があるというか、落ち着いている。Finalパートの始まりにふさわしい静かなシリアスさがある。映像的に混沌とした加速が続いて一転、ここからかなりわかりやすくなる。でもここからもギアが上がり続ける。
17.閃光少女
神。前の三冠馬パートとは打って変わって余裕みたいなものは感じられず、瞬間に全てをかけるウマ娘達という感じ。曲が始まってから更に音も映像も溜めて、ケイエスミラクルの「もっと速く!」→ボーノの「ボーノへいっちょくせ~ん!」で爆発するという構成が気持ち良すぎる。メドレーも音声も映像も覚醒している。カレンチャンの「瞬きは禁物だよ?」でゴールしたんだなという着地感もある。
各キャラの決意を短時間で2周してるのがすごし、全てのセリフがそのウマ娘の決意の真を突いている。わかりやすくスプリンターパートのスピード感だと思う。
閃光少女、史実の競走馬カレンチャンを応援する横断幕に書かれていたワードらしいですね。それでウマ娘のカレンチャンの固有称号も閃光乙女。曲調も歌詞もこれ以外ないだろうというハマり方をしていると思います。すごい。
18.Starry Drama
前パートゴール後の開放感を引き継いで、ダートウマ娘パート。後輩の3人に対するファル子という構成。「ファル子オンステージ!」のハマり方があまりに素晴らしい。ファル子の強者感がいい。
ファル子が1人でダート界を引っ張っていったというシナリオ(とウマ娘の状況)もあって、そこからタルマエ、リッキー、ワンダーアキュートらのライバルが出てきてくれた(実装された)ことに対する喜び、そして負けないよという覚悟みたいなものが後半に溢れている。眩しいパート。
知らない曲だったけど、まさに大井競馬のCMの曲とのことで、ぴったりだと思う。
19.ソシテミンナノ
神。アニメ3期は個人的に張った伏線とその昇華、登場キャラクターの回収の仕方をあまり一つに収束させていない印象を受けていたので、これのどこに焦点を当てて1パートにまとめるんだろうと思ったのですが、なんと全てを音声と映像双方でまとめ上げています。
キタサンに対するライバルたちの想い、キタサンのラストランでの想い、キタサンへ各々の形でアドバイスを託す先輩、そしてダイヤ。テイオーのセリフで終わるのも味わい深い。とても見やすく整理された美しい再構成だと思います。
20.Glorious Moment!
エンディングがちゃんとエンディングしてるというのは本当にすごいことだと思う。ラストに相応しい、最高の盛り上がり。RTTTという濃度の高い4話アニメを、トプロの菊花賞を中心にアヤベさんの運命のジェミニもしっかり絡めて圧縮。全てのセリフが勢いを加速していくし、風や土を踏み締める音とかの演出も効いているし、映像の繋げ方も巧みすぎる。
「私はアヤベさんと走るのが楽しいです!」→「私もね、楽しかったよ!」が繋がるの、すごすぎる。これがMADだよなあと思う。アヤベさんとの思い出ラッシュ、当時の新聞ラッシュ、否応なしにアツい。
AMVらしい情緒的な感動と、映像的な感覚に訴える速度感、気持ちよさが両立している。このバランスすごすぎる。
シームレスに黄金世代に繋がるのがいい。ああこの動画のゴールが近いんだな、あっという間だなと感じさせる。休むことなく次々とアニメや漫画の主要ウマ娘の決意が流れ込んできて、これまでのウマ娘のおさらいのような形を取ったのち、新ウマ娘ラッシュでこの先のウマ娘の展開へと想いを膨らませる形でタイトルコール。最高速度を維持したままでのゴール。まさに逃げて差した構成。
このEDとOPを作りながら全パートにめちゃくちゃ的確なディレクションを入れまくってるたいうおさん、音MAD合作星から来た音MAD合作星人なんだと思います。
21.走れウマ娘
熱を保ったまま最高速度でのゴールを迎えて一転、エンディングは適度なわちゃわちゃ感、適度な落ち着き。競奏曲のうまぴょい伝説みたいなスピード感のあるミームラッシュというわけでもなく、走り終えた後のクールダウンというか、流して走ってる感じというか、ふんわりとしていて、こういう終わり方も好きだなと思う。大団円。終宴ッ!かあ……という静かな喪失感がある。
◼︎メドレーPV 全イラスト
こちらも全イラスト触れます。
01.NEXT FRONTIER
掴みからすごいな!となる。厚塗りベースでしっかり各カット色彩設計をされた、シリアスで緊張感のあるルックが美しい。撮影処理をほぼかけずにこの色だったので本当に絵作りが素晴らしいと思います。背景の描写が上手い。音MAD合作側との空気感と合ってる。
静止画というよりここは映像を意識して作られているなと感じる。止めのコンテですもんね。いかんせん自分がアニメーションのパートを任されていたので、こちらの進捗を眺めている際は独特のライバル感というか緊張感がありました。
02.気分上々↑↑
楽しい!楽しそう!元の絵を存じ上げないのですがらき☆すたパロディとのこと。ギャルウマ娘達に合っていますよね。各キャラの表情やポーズが立っていてかわいい。とにかくキラキラしてて賑やかで楽しい。
03.ウマーベラス+ Danger Zone
がばのきさんの経歴を存じ上げないのですが、構図も色彩構成も発想も素晴らしく、独自の間や空気感を持たれていて、確実にアカデミックな絵作りの知識を研鑽されている方だよなあと個人的に感じております。静止画って時間軸がないのに、がばのきさんのイラストには時間の"間(ま)"があるんです。
今回のイラストは各ウマ娘、スイーツのオーダーだったと思います。先ほど述べた構図等の要素を抜きにしても、この突き詰められたデフォルメ自体がとても魅力的だなあと感じます。ちょこんとしていてかわいい。
もふじろ~。さんはとにかく描線の精度が高くてかっちりとしていて、キャラ似せも卓越していて、まさにアニメーターさんの絵だと感じます。作業配信をたまに拝見しますが、一本の線をほぼ一度のストロークで決めるし、そのストロークがとにかく速い。絵が出来るまでが早い。どれだけ描いてきたのだろう、形が見えてる方の絵だと思います。
ラグマットさんの撮影処理も併せて普通にTVアニメで流れてる絵なんですよね。これが出来て音MAD的な美意識を持っている方ってクオリティによるギャップの面白を生成できるので極めて貴重なんじゃないでしょうか。
僕のパートより先にアニメーションが完成していて、進捗を眺めていて独特のライバル感と緊張感があったパート2です。メドレーPVはイラストって伺ってたんですが!!
04.Cordelia Margarita
賑やかで楽しい!この人数を描き切るのは本当に大変なことです。もすもすさんは企画屋としての発想力が卓越しているなあとお話ししていて感じるので、ワンアイデアの絵を描かせたら無限に面白いものが出てくる方だと思います。みんなの表情や仕草がらしさに溢れてて素敵ですよね。
05.ハイラルサーキット
かわいい!!!!!!!!!!!本当にかわいい。応援したくなるような感じ。こういう温かみのあるデフォルメって誰にでも描けるわけではないので素敵だなあと思います。メスシリンダーさんによる音MAD側の映像とは全然違ったアプローチなのですが、このイラストの雰囲気もまたこの曲に馴染んでいて面白いなあ、と思います。
06.Life Will Change
ソリッドでスタイリッシュ。おもち屋サカモトさんのシルエットの取り方本当にかっこいい。色面として機能してる描線のリズムも心地いいし、光、影、反射光も図形的に入っているんですけどよく見るとかなり細かく描写されていて、塗りの厚みや立体の説得力と形としての気持ちよさが両立していてすごいなあと思います。参考にしたい。
07.BLOODY STREAM
すだちさん、キングといえば!という感じでとてもよくお見かけしていたので個人的にもとても嬉しいキャスティングです。鮮やかな色彩から、高貴な2人というよりある種プリキュア的な勢いがあるのがまさにこの2人という感じがして好きです。とにかくダントツで早く提出されていた気がします。すごい。
08.フィクション
ここ映像の様子がおかしいですよね。ない漫画のCMを見ている。この真正面ですんとした表情のデジたんってなかなか見る機会がなくて、そのギャップがめちゃくちゃ好きです。どきっとします。背表紙とか作者名、ロゴとかも全部ちゃんと作られているんですよね、ラグマットさんのとんでもないこだわり。
09.ポーズ
楽しい!ゲーム世界という感じがします。それぞれのタイプに対応させた背景が巧みですよね。魔法使いと戦士という感じで、衣装や武器の意匠がめちゃくちゃ素敵。ドットのアイテムもかわいい。音MADのパートイラスト、アニメーションも含めて、素晴らしいデザイン力と想像力だなあと尊敬します。
10.負けないで
口どり写真風なので真正面からキャラを横に並べる何の面白みもない構図なのですが、その絵的な演出のなさがちゃんと記念写真感に繋がってていいと思います。ダンツフレームとノーリーズンは前述の通り一晩で無理矢理描き足しました。
ダンツフレームは立ち絵のポーズに倣ってもよかったのですが、個人的なプライドでどうしても現状の情報から取りそうなポーズと表情をちゃんと考えたくてこんな形に。写真撮る時はおめでとう~みたいな感じでミラ子を立てる仕草をしたりするんじゃないかなあ。劇場公開後改めてこのイラストを見た時にどういう感想を抱くか楽しみです。自分の絵が解釈違いになる可能性が全然ある。
11.Unwelcome School
ここも様子がおかしいですよね。Aiobahnさんとodykさんのremix MVパロディ。音MAD合作のセリフとキャラの登場尺が対応しています。動きが楽しいしキャラが立っててかわいい。すいろさん感謝祭の作品もすごく好きなんですよね。デフォルメされたシルエットがかわいい。たこーちきさんの動画の組み方も見事だなあと思います。個人的に進捗を眺めていて独特のライバル感と緊張感があったパート3です。
12.Seyana.+亀上的竜宮生活
リチャード神。本当にかわいい。賑やか。楽しい。暖かい。嬉しい。登場しているキャラみんなが活き活きと楽しそうにしていて、こちらも口角がにこりとなる感じ。様々なポジティブな感情に溢れた画面です。そういう絵を作られる方だなあと思います。結構ごちゃごちゃしたイラストなんですけど、登場する全てのモチーフに愛がこもっている。デフォルメするってそういう行為です。あと色使いもとても巧みなんですよね、めっちゃ賑やかなのに全く目が痛くない。ベースカラーや差し色の扱いが見事だなあ、と思います。
13.盆回り
アルマゲドン。有マゲドン。最高ですね。全員表情がいい。伊藤社長さん、イラストのかわいさ・整頓されたデフォルメと動画のカオスさが僕の中で全然接続しなくて、最初はあくまで伊藤社長さんはイラスト担当の方で動画は別の誰かが作ってると思ってたんですよね。今でもこんなかわいい絵柄でめちゃくちゃなこと描くなあと思っています。最高という意味です。俺は沖スペ合作2222になりたい。
14.檄!帝国華撃団
マジの名画です。本当に大好きなイラストです。たく餡さんありがとう。桜色が画面全体を包んでいて、春の澄んだあたたかさがある。みんなの仕草や表情にらしさが込められててとてもかわいい。さくらもちもかわいい。
絵的な話をすると構図が素晴らしいですよね、真ん中にがっつり青空の穴を開けることで色がぎゅっと締まるし、空間の開放感があるし、バクシンオーの派手なポーズが立つ。逆に画面端には一切空の穴を開けず完全に桜で包んでいて、まさに満開の桜に囲まれているような密度と華やかさがある。桜色の光のグラデーションがかかっているのも美しいです。
そんな真面目な切り口で語ろうとしなくても、こんなイラストは愛してしまいますよ、本当に。
15.GOLD RUSH(メイン:ゴーゴー幽霊船)
すごい絵ですよね。dedeenさんは本当に線の強弱とハッチングによるエネルギーの打ち出し方が巧みで、登場するモチーフ一つ一つにパワーがあります。競走馬ゴールドシップの筋肉のハッチングの隆々しさに目を見張るし、満載の遊び心とかっこよさが両立している。
でたらめに荒々しく描けばいいというわけではなくて、これほど強いパワーを絵に持たせるには繊細にコントロールしなければならない部分もたくさんあると思います。ゴーゴー幽霊船とゴールドがかけ合わさってる色の置き方も素晴らしいバランス感覚。
16.20th Century Boy
強そう!ポージングが決まってる。立ち姿でこれだけ強そうな雰囲気を醸し出させるのはすごいことです。この3人、かっこいいですよね。黒ずんだ影をがっつり顔に乗せるのってかなり勇気がいると思うんですけど、メドレーのヘビーなアレンジにドンピシャでハマっていると思います。
17.閃光少女
かわいい!!!!my0nruriさんの描く女の子、とても丁寧だけどふにゃとしたかわいさがあって本当に好きです。強烈に独特な描き方をしているというわけでもなく、結構美少女イラストの基本を抑えたバランス感で描かれていると思うのですが、どうしてこんなにmy0nruriさん特有の雰囲気が出るんでしょう。シルエットにあるんでしょうか。少し白味がかった塗り味も好きです。
どのキャラの表情も仕草も素晴らしくかわいいですよね。ルビーがすんとしててかわいい。マーちゃんがふにゃとしててかわいい。カレンチャンがしゃきっとしててかわいい。みんなかわいい。かわいいねえ。
18.Starry Drama
ここに来るとメドレーと合わさって泣きそうになります。名画。時間や季節を絵に内包させられる方を心から尊敬します。鋭い感性を持って日々過ごされているのかと思います。帰り道、夜、星空、高校生、先輩と後輩。どこかで実在した時間の中の一瞬を切り取ったような質感があります。
陳腐な言葉でまとめてしまうと「青春」になるんでしょうけど、こういう若き少女たちの確かにあった日常みたいな絵を見せられると勝手に感極まってしまいます。あくまで「情景」が描かれているんですよね。強烈にキャラクターに視線が行くようなイラスト的演出をあえてしていない。それがこの絵の中に流れる時間に現実味を与えているのだと思います。ファル子が奥から見守っているのがいい。
19.ソシテミンナノ
描写力。比類なき描写力。ダイヤちゃんの袖を見てください。ここだけで1時間は見ていられます。強いライティング、色味、構図、レンズ感、表情。どれも凄まじいクオリティです。いかんせん自分の絵も空と雲とターフの背景だったので、いやあこう描けばよかったのかあと圧倒させられました。それでパッと出来るものではないですが。特に雲の描き方が本当にかっこいい。ターフの処理も本当に美しいです。あまり描いてないんですよ、これ。
ゆうひどらさんの描き味って「描いてなさ」がめちゃくちゃかっこいいんです。タッチの残り方と言いますか、遠目で見るとリアルだけど、拡大するとストロークがそのまま残っている感じ。これ絵の醍醐味だよなあと思います。どこに何を置けばいいのか掴めている方でないとこの描き味って出来ません。普通描き切らなかった分未完成っぽくなるので。
キタサンやダイヤの顔周りに注目するとものすごく細かく反射光が入っているんですよね。あとキタサンの左腕の端には線画がないんですけど、黒い塗りに対して奥にターフ及びダイヤの勝負服の黄緑を入れてぶつけることで手前奥の強弱をつけたり、2人をくっきり分けたり。そういったデッサン的なテクニックが至る所に散りばめられています。あと厚塗り系の絵ですがかなり巧みにグラデや効果レイヤーも使われているんですよね。本当に勉強になる。
20.ウイニングライブメドレー
楽しい!活き活き!主人公!グランドフィナーレに相応しい真っ直ぐで素晴らしいイラストです。ポーズや表情でとてもキャラが立っていますよね。無垢な絵という感じがします。勢いのベクトルも画面いっぱいにこちらに向いていて、見ている側まで元気が出てきます。ラフが上がった段階でとてもテンションが上がったのを覚えています。
21.走れウマ娘
かわいい!!たのしい!!大団円という感じのエンディング。キャラクター1人1人が本当に活き活きとしててかわいいですよね。じーま太郎さんの描かれる表情やポーズが素晴らしい。
全てのパートのネタがイラストとして回収されていって、回収の仕方もニヤリとする感じで、まさに文化祭の賑やかさであり、その文化祭の片付けの寂しさも感じます。ウマ娘合作って文化祭だったのかもしれない。
最後にミラ子が宝塚記念のレイやトロフィーを眺めてるのもパート担当として嬉しすぎる。駆け抜けましたね。
◼︎予告動画、ロゴ
予告動画
競奏曲の予告はウマ娘といえば!の「うまぴょい伝説」、疾奏曲予告はウマ娘1周年を彩った楽曲「Ambitious World」、そして冠奏曲の予告はマサラダさんの重音テトオリジナル曲「ウルトラトレーラー」。なんでだよ。ただのサクラ○ヨノオーさんの動画。なんと!でヤエノがぬいぐるみになるの最高過ぎる。やってくんの?恥まるよー!賑やかでただ面白いだけの最高の予告でした。これだけでも何周も見てる。その3倍の数クレジットを見てることになる。ちよちよちーよ ちーよのおー♪になってきた……
ロゴ
上昇していくようなベクトルを感じる書体のリッチさと、エネルギッシュな色味で、高級感とパワフルさが両立してますよね。キラキラした競奏曲、爽やかな疾奏曲に続いて、今回は燃える炎のような情熱的なイメージを感じます。
おわりに
最初に書いた通り、~奏曲シリーズは自分にとって畑は違えど明確に憧れの二次創作企画でした。その最終回に参加させていただけて感無量です。異色のパート担当として、少しでもこの合作に彩りを加えられていたらと思います。
参加者として進行の様子を内部で眺めて感じたことですが、これを毎年やるのは異常です。一年を通して企画が動いているので運営の方々の人生が乗っかっています。しかも運営側の打ち合わせの様子は僕ら参加者からは見えないので、見えている範囲よりも遥かに多くの労力と時間と愛が費やされていると思います。凄まじいことです。この作品群の持つ熱量に納得がいきました。隔年でもとんでもないと思います。負担がデカすぎる。どうか休んでください。
でもリスナーとしてはまたいつかどこかで新作を観たい気持ちもあります。心がふたつある。この合作に当てられた誰かが新たに面白い企画を始める、といった形で何かが受け継がれていくこともあるのかもしれませんね。というかきっと既にある。ウマ娘の継承のごとく。
それでもこの三部作シリーズは、他の追随を寄せ付けない、この企画でしか到達し得ないところまで到達してしまおう、限界を見せつけよう、頂点に立とうという勢いを勝手ながら感じました。
競奏曲が凄すぎて動画が作れなくなってしまったという方もきっといると思うし、創作の土俵って常にそういうものだと思っています。でもクオリティや規模って良さの基準の中の一つに過ぎないし、こと音MADにおいてはそれらの軸って多分そこまで絶対的でもないと思うので、その人なりの愛やアイデアが詰まっていれば絶対素晴らしい作品なんですけどね。そういう作品も大好きです。
凄過ぎる作品を見ると、作り出す前のモチベーションの段階で折られてしまうことがある。別にお金や生活がかかってるわけでもないし、みんなでワイワイ動画を上げてお祭りをやる方が楽しいのでしょうけど、強過ぎる光の裏には常に影ができます。
でも逆にその強い光に手を引かれるように作品を作り始める人もいるわけで。負けてられるかと燃える人もいるわけで。「あの作品やたら目立ってるけどここが気に入らねえんだよな」って自身の正解を突きつけようと動く人もいるし、一度折れた人も時間や何かしらのきっかけでもう一度筆を握るし、その時に折られた時の感覚というのは必ず武器や燃料になる。逆にどんな作品が出てこようが自分とは関係ないですという感じで自身の美意識を探究し続ける人もいる。
凄過ぎる作品は強大な希望にもなるし絶望にもなり得て、僕らは見たものの影響を受けずにはいられなくて、作品発表の場は作家同士の相互作用の場でもあって、そういう創作に対する愛憎渦巻くシーンが僕はとても好きです。その渦中で有りたい。
そしてこれらはあくまで作り手としての見方であって、視聴者としてはこんなに素晴らしい作品を見せてくれてありがとう。がまず口をつく言葉ですよね。この人数と熱量を一本にまとめ上げるというのは言うまでもなく誰でも出来ることではありません。それができる限られた誰かがやらなければこんなものは勝手に生まれたりしません。その役目を全うするかどうかはその人次第です。
そういうシーンを生み出すような強烈な作品が出てくることはそうそうあることではないし、その光を見ている内はまさかこれを人が組み上げたとは想像がつかないし、組み上げた方々の労力と熱量は何度動画を反芻しても計り知れません。終わってしまうというのが非常に寂しいですが、惰性で続かせず自らの手で完結させたということに対する安心感やリスペクトも個人的にあります。心に残る3部作をありがとうございました。本当に本当にお疲れ様でした。
見当違いなこと言いまくってそうで怖い。全て僕個人の勝手な感想です。というか終始堅すぎましたね。
最高に楽しかった!!!!!!!!!皆さんとこんなに熱くて楽しい時間を共有できて感無量です!!!!!!!!!お誘いくださり、ご一緒させてくださり、観てくださりありがとうございました!!!!!!!!!生涯の思い出です!!!!!!!!!
参加された皆様、視聴された皆様のさらなる躍進や次の試み、情熱的な視線を大変楽しみにしております。僕も頑張ります。
この記事37000字ありました。ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。また次の作品でお会いしましょう。
のをか
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