黎明
生まれてきた瞬間の光を
本当はまだ覚えている
思い出せないだけ
時間は体の中を通り過ぎて
世界に存在が渡される
光は心を透過して
あたたかさとは何かを示す
水のような空気
泳ぐように歩く
遥か頭上の水面に
揺れる輝きを見る
沈むことは浮くこと
本当の底まで沈むこともなければ
本当の空まで浮くこともない
藻のように漂う
魚のように光を受けて
青と赤のとけあう瞬間
すべての存在に熱を宿す
今日を生きるために息を吸い
明日も生きるために息を吐く
青と赤の分離する瞬間
二度とは会えないものたちのことを
幾度光が心を透過しても
覚えていられるようにと願う
本当は全部、覚えている
思い出せないだけ
明け方の感情