【デジモン】神曲 Butter-fly 「無限大な夢のあとに」込められた想い

この曲を聴くと、
条件反射的に少年時代が回想され、
懐かしさやら熱い思いやら色んな感情が込み上げてきて、
気が付くと目が潤んでくる…。
同世代の方には同じような方が少なからずいるのではないでしょうか。

この曲ほんと何回きいても飽きないし、
聴くたびに毎回新しい感情が湧き上がってくる気がする。
それは少年時代に見たデジモンアドベンチャーのせいなのか、
最高に格好よくて衝撃的だった渡邉けんじさんが書いたメタルグレイモンのせいなのか、
不死蝶としてこの歌を歌い続けてくれた和田光司さんのせいなのか、
死ぬほど嫌いだった早起きをしてこそっとプレイしたデジモンワールドのせいなのか、
よくわからないけど、
きっとそのどれもが正解で、
自分の色んな思い出や色んな人の思いがこの曲に詰まってるからなんだろうなあ、という気がする。

でもやっぱりこの曲自体がものすごくいい曲で、
曲の良さなしには今聴いてそこまで感情が揺さぶられることもなかったんだろうなと思う。

そんな中、この曲の作詞作曲者である千綿偉功さんのインタビュー記事を読んだ。

デジモン「伝説の主題歌」生みの親、千綿偉功さんの「佐賀時代」
https://withnews.jp/article/f0180930001qq000000000000000G00110601qq000018059A

この記事を読んだら、長年ちょっと不思議に思っていたことが腑に落ちたと同時に、Butter-flyがどういう曲で、何を伝えたい曲なのか、っていうことがよりわかった気がしたので、個人的な想いを書いてみます。


まずButter-flyの歌詞に対してなんとなく思っていたことなのですが、
この曲、ちょっと暗いよなあ…と。
明確に暗い、というほど暗くはないし、
最終的には前向きな歌詞なのですが、
子供向けアニメの主題歌としては、かなり現実的な歌詞なんですよね。

僕はデジモン曲ではEDのkeep on も大好きな曲なのですが、
この曲はものすごく明るい歌詞なんですよね。
子供向けアニソンは基本的には、
夢を叶えよう!
前向きに生きよう!
何度でも挑戦しよう!
諦めるな!
みたいなメッセージ性を前面に押し出してることが多いんですよね。
keep on も改めて読んでみるとそういう歌詞だと思います。

振り向かないで 走り続けよう
Sunshine day
擦りむいた痛みに 負けられない
Adventure
(略)
今こそ飛び立つ勇気をもって
心の羽 広げて まだ見ぬ世界へ

子供にはやっぱり元気に生きていってほしいっていう製作者の願いが基本的にはあると思うので、
こういう歌詞になるのが普通なんじゃないかなと思います。
新デジモンアドベンチャーの未確認飛行船もそういう類の歌詞だなーという印象があります。

それが悪いとか言いたいのではありません。
むしろそういう底抜けに明るい歌詞だからこそ、
子供のときに聴いたアニソンなんかを今聴くと、ものすごくパワーをもらえるってこともあります。
前10年ぶりくらいにkeep on 聴いたらほんとに泣きましたからね…。

そういう「底抜けポジティブソング」が多い中で、
改めて歌詞を読んでみると、
Butter-flyの歌詞って結構異質なんですよね。
なんというか、
子供向けアニメとは思えない諦念のようなものを感じます。

何が WOW WOW~
この空に届くのだろう
だけど WOW WOW~
明日の予定もわからない

無限大な夢のあとの 何もない世の中じゃ
そうさ愛しい 想いも負けそうになるけど

この辺の歌詞って、
後ろ向きな言葉が並んでて、
特に「無限大な夢のあと」っていう言葉がすごく大人的で、
なんでデジモンのOPがこういう歌詞なのかが長年の謎だったんですよね。
デジモン本編のストーリーともそんなにリンクしていない気がしましたし…。
一方brave heartなんかはまさに夢に向かって突き進むことを歌っており、本編の内容ともかなりリンクした歌詞になっていると思うのですが、
「無限大な夢のあと」という言葉はデジモンアドベンチャーの内容からはなかなか出てこない言葉な気がしていました。

そこで、上記の作曲者千綿さんのインタビューを読んだら、なんでこういう歌詞なのかがなんとなくわかった気がしました。

上記記事から引用します。

 「東京には全国から数え切れないほどのバンドが集まっていた。少々頑張っても芽が出るわけでもなく、だんだんと生活するにも窮屈になり、練習もおろそかになり、1年ちょっとでバンドは解散した。その後、高校の先輩と2人で『CHASE』というユニットを組んでメジャーデビュー、1998年にソロデビュー。そのころに『Butter-Fly』の作詞作曲を手がけました」

――手がけた経緯は
「当時、所属していたのがアニメ系に強い事務所だった。僕とは関係ないセクションのディレクターから『千綿くん、最近作った曲で、アニメ向きのいい曲ない?』と言われた時、自分が歌おうと思っていた曲のストックがあった。それが『Butter-Fly』でした」

 「アニメ側のプロデューサーさんも気に入って『これを使わせてくれ』って。『やった、俺が歌うんだ』と思っていたら、『ごめん、歌う人は決まっているんだ』と。それが和田光司くんだった」

――アニメ用に作った曲ではなかったんですね!
 「はい。アニメの内容を聞いて、歌詞の言い回しとかはちょっと変えましたけど。ほぼ原曲」
 ――サビの「無限大な夢のあと」というフレーズが印象的でした
 「夢って描くのは無限大じゃないですか。でも、思い描いた後にふっと現実に戻ると、『何だこの世の中は』って思う。『何を信じればいいんだ、何が正解なんだ』って、すごく虚無感に襲われる。『そんな世の中でもきっと飛べるさ』と。前向きな曲ですよね」

この記事から、
・デジモンのために書き下ろした曲ではないこと
・自分で歌おうと思って作った曲であること
・千綿さんのデビュー直後に作った曲であること
がわかります。

これで腑に落ちたのですが、
Butter-flyは元々デビューしたての千綿さんが、
作りたいように作った、「自分らしい曲」なんだろうなと思いました。

当然デビュー直後なので、売れたい!という強い思いもあったかと思いますし、
かといって「売れ線の曲」みたいなのがあまり好きではなかったんだろうなと思います。
そういった中で、迷いつつも自分の音楽性を信じる、という想いがButter-flyに繋がったんじゃないかなという気がします。

売れ線の曲作っても売れるかわからないし、売れないかもしれない。
けどデビューしたからには売れないといけない。
売れなかったら、明日の予定はどうなる?
だけど、きっと自分ならできる。

完全に妄想ですが、
そんな思いからButter-flyの歌詞ができたのではないでしょうか。

多分色々なタイミングが積み重なってButter-flyが生まれたんだと思いますし、
ちょっとでも何かが違っていたらデジモンのOPは「底抜けポジティブソング」になっていたのかもなあと思ったりします。
そうなっていたら、デジモンの初代OPは何十年にもわたってこんなに愛される曲にはならなかったんじゃないかと思います。

無限大な夢のあとの 何もない世の中じゃ
そうさ愛しい想いも負けそうになるけど
Stayしがちなイメージだらけの頼りない翼でも
きっと飛べるさ on my love

子供のころはただただカッコいいなあと聴いていたButter-flyですが、
大人になってから聴くと歌詞が沁みてきます。
それはやっぱりこの曲がただただ明るいだけの歌詞ではなくて、
現実の上手くいかないことや不条理を踏まえた上で、
それでも頑張れる!って励ましてくれるような歌詞だからだと思います。

大人になってから、
「無限大な夢のあとの」「愛しい想い」が負けそうになっている瞬間、結構あります。

Butter-flyがここまで愛される曲になったのは、
「子供達」が大人になって、
現実が身に沁みるよう歳になって、
それぞれの「無限大な夢のあと」を現実として生きていく中で、
そっと励ましてくれるような心地よい温かさがこの曲にはあるからだと思います。

そしてもちろん、和田さんの歌です。

きっと千綿さんにとっては曲だけ提供して、歌は別の人、
っていうのはミュージシャンとしてはかなり悔しかったんじゃないかなーと想像します。
やっぱりいい曲作ったら、自分で歌いたくなるのものだと思いますし。

でも、その後の和田さんのことを考えると、
やっぱりこの曲は和田さんが歌っていたことによって、より普遍的な曲になったんじゃないかと思います。
(もちろん結果論でしかないのですが…)
病気を乗り越えた和田さんの歌う姿には、自分も含め多くの人が励まされたましたし、
何よりもButter-flyはそんな和田さんが歌うにはあまりにぴったりすぎる曲でした。


そんなことを考えると、色んな偶然が運命みたいに重なり合ってできた、奇跡みたいな曲が「Butter-fly」なのかなあなんて思ったり。


最後に、「無限大の夢のあと」は、間違いなく「何もない世の中」ではないと思います。
千綿さんと和田さんの無限大な夢のあとには、
何年経っても、何度も勇気をもらった「子供たち」がいます。
もしかしたらその声はなかなか届かないかもしれないけれど、
少年時代をデジモン、そしてButter-flyと過ごした大人たちは、
きっと今、少し強く生きているのではないかと思います。
(少なくとも僕はそうなので!)

千綿さん、和田さん、素敵な歌をありがとうございます!

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