003 構図「画面の大きさと構図」
今回は小休止でテレビの大きさと構図について考えてみます。
四半世紀前のアナログSD時代の4:3 CRT(ブラウン管)のころ、画質が悪いから、きちんと見せるためにドアップを多用するという暗黒時代?がありました。
今はスタジアムの客席にいる知り合いを見つけられますね。
SDからHDで画素数は約6倍、走査線やプログレッシブ化により実質さらに上。
4Kに至ってはもはやこれ以上を誰が望む?というところまできています。
カメラマンにとっては「幸か不幸か」引き画(Long Shot=ロングショット)の細部まで気を遣わなければならないようになりました。
気を遣いたくない人たちはアップショットを多用し、細部まで見えないよう被写界深度を浅くし、雑多な背景がないよう鼻の穴の中が見えるほど下から「あおる」画を撮る、別の意味での暗黒時代になったわけです。
そんなこんなでテレビドラマでは「ドアップの山」
さらに、アップなのに構図が悪いという笑えない事態。
話せないほど頬張るリポーターのドアップには目を背けます。
視聴者が見ている画面を想定
さて、家電メーカーはテレビ画面高の3倍の視聴距離を推奨しています。
それって「構図」ではどうでも良い、考えないでもいいこと?
パーソナルスペースでは、会話相手との距離は0.5~1.5m前後。
視聴距離を1mとすれば、3倍を逆算すると画面高さは33cmですね。
頭のてっぺんから33cm下のポイントはどこ?
そのサイズが、アップショットです。
画面に映る顔の大きさが実物より相当大きくなるのは、
「余程の理由がある場合」
です。
人を正確に撮れれば1人前の「カメラ番」と言われるので別項できっちり書きますが、そこでアップと表現されるショットは別名ショルダーショット、すなわち肩が入る(頭は切れてもOK)サイズとしています。
それより寄るのはビッグクローズアップ(BCU)。
なので今のテレビドラマはBCUの山です。
BCUは微妙な心情を表したいなどドラマの重要なシーンに使います。
ピントやごまかし、ましてやつなぎで使うカットではありません。
ニュースや情報番組などではアップより少し引いたバストショットがとても素直な「大きさ」として多用されます。
それでも表情など十分に伝わっていますよね?
肉体表現をするダンス系、この季節フィギュアスケートなど最たるものですが、演者は身体全体で表現しているのだから演技中は「身体全体が必要」で「表情は演技前と終了後」です。
弦楽四重奏は4人のGS(グループショット)を見せるべきで、指先や表情のアップなど不要。
カメラマンにとっては
「引いた(広角の)まま耐える」
「寄らない(アップにしない)根性」
を試されるときです(笑)
ドラマじゃないんだからカット割りをする必要もありません。
耐えきれずに寄りを入れてカットカットでつなぐけど音楽のリズムと合ってないなんて洒落にもならない・・・
ミュージックカットができないからオーバーラップなんて愚の骨頂。
※ミュージックカットについては別項で詳説します
大画面+高精細なので見たい部分は視聴者が決めるべきもの。
「アップショット」という考え方はじっくり腰を据えて考えたいものです。
50インチをはみ出す巨大顔が映されればファンでも目をそむけるのかな?
怪獣じゃないんだから、自然な大きさで見たいのが人情と思うのは昭和生まれだけ?
アップ依存症の理由
放送用テレビレンズでは、
1.ドンまで寄る(ドン=限界=望遠いっぱいまで)
2.アイリスを開ける(アイリス=絞り)
※レンズの最も浅い被写界深度にする
※1と2が同時または逆になる場合もあります
3.フォーカスをとる(ピントを合わせる)
4.必要な構図まで引き、アイリス調整
5.録画開始
という手順(原則として)を踏みます。
ちなみに1~5まで約2秒です。
※NDを入れて開放にするときは5~6秒。
フォーカスは被写界深度が浅いほど、すなわち望遠ほど合わせやすく、カメラマンとしては「楽」になります。
脳を使わないように、ついつい、寄り過ぎてしまいます。
人は「楽」を選びやすいもので・・・
もう一つの理由は、
「アップほど構図を作りやすい」
すなわち、寄れば寄るほど、構図が簡単=「楽」になる。
望遠レンズを好む理由は
「遠くのものを大きく撮りたい」(それを迫力という人もいます)
と同時に
「無意識に楽なレンズを使いたがる」
とも言えます。
望遠レンズを使うと、画面を構成する部品数が減るので誰が撮っても同じような構図になりやすい。
すなわち、考えない。
すなわち、腕の差が出にくい。
そのうえ、レンズが大きくプロっぽいと思うようで。
「レンズは望遠になるほど簡単で、広角になるほど難しくなる」
今の世の中アップだらけで視聴者もそれに慣れて・・・
それも時代の流れなのか・・・
ホントは広角ほど楽しさも悩みも増え、被写体との距離も近くなります。
広角レンズの「幕の内」感は、依存症におちいります。
雑多な構図を整理整頓する快感が麻薬的なのかもしれません。
構図が雑多なので長~~いタイトルになりますが・・・
せっかくテレビが高精細になり、画づくりが楽しいのだからアップばかりじゃもったいない。
悩ましい引き画でカッコいい構図を作る。
カメラマン冥利につきます。
たわむれです(笑)
次回からまた真面目に書きます。
最後までお読みいただきありがとうございました。