見出し画像

009 人物撮影のサイズ

静止画構図の仕上げ

仕上げの「人のサイズ」(1人の場合)です。
人物を正確に撮れることがカメラマンへの第一歩です。

流れが読めてディレクター的撮影ができると1人前。

ディレクター=指揮者
カメラマン=コンマス
という関係が成り立てば一流の仲間入りかな?

人物サイズについては前もってお断りしておきます。

欧米ではもう少しラフな考え方をします。
LS~MS~US(ロングショット~ミディアムショット~アップショット)
程度の区分けで、
「その道の専門家に任せる」
というカッコイイ割り切りです。
日欧の違いは面白く、スピード感やカットの長さ、はたまた空撮のヘリの影を入れるかなど、探ると面白いのでご興味のある方はどうぞ(笑)

日本では意思疎通のため?細分化されています。
必要かどうかは別にして少なくともスタッフ間で話は通じます。 

人物サイズ

ここで一番大切なことは、
「人を正確に撮れれば何でも正確に撮れる」
ということです。

人物サイズはどこで切る?
アップショットのサイズ

人物サイズ、何か気付きましたか?

サイズの切り取りは全て関節を原則としています。
曲がる部分で区分けしています。
そう考えると結構簡単かもしれません。

アップショット

US(Up Shot)=肩関節
Detail shotはBCU(ビッグクローズアップ)とも言います。
テレビの画質が良いので余程の理由が無ければディテールショットまで寄ることは稀かもしれません。
基本はUSが限界と思っていただいて良いかと。

2004年の「森田正明の映像教室」でも書きましたが、CU・BCU含めてディテールという文言でまとめることを推奨しましたのでだんだん定着してきているかもしれません。
ディテールショットは私がJICA専門家(ドラマ制作)として海外放送局の番組制作指導をしている頃にバイブルとしていたBBCのジェラルド・ミラーソンの文献(残念ながら和訳はありません)から引用しました。

ちなみにCUでは「頭切ってもアゴ切るな」です。
これ以上いくと眉毛が切れちゃうゾという時までアゴは残します。

また、余計な事ですが、
切れる=画面から外れて見えなくなる
見切れる=映ってはいけないものが画面に入って見えてしまう
ことです。
マイクが映り込んでるとき「マイク見切れてるぞ!」などと使います。
日本語で「見切る」は「見える」という意味です(為念)。

バストショット

BS(Bust Shot)=肘関節
最も多様される、そして、見慣れたショットかもしれません。
サッとパンしてアナウンサーの横に事件の映像がPinPするアレです。
ニュースの基本ショットなのでアナバス(アナウンサーバストショット)とも呼ばれます。
BSに限り、タイト/ルーズという言葉を使うことがあります。
タイトなBS=肘を曲げた時、曲げた腕が切れる程度
ルーズなBS=肘関節から5cmくらい下まで入れたもの
何故、このようなショットが生まれるかというと、
タイト:もう少し表情を見せたいなど
ルーズ:下部にテロップを入れたいなど

ウエストショット

WS(Waist Shot)=腰もしくは下ろした手首
ルーズなBSより大きな文字や肩書き含めて2行のテロップが入る場合限定。
何故限定かと言うと、WSは微妙に中途半端でサイズ的に美しくないからです。
講演等どうしても必要な場合、7秒だけWSにし肩書と名前の余白を作ります。
それくらいしか使い道が無いかも(笑)

ニーショット

KS(Knee Shot)=膝関節
4:3の旧テレビではこのサイズで両手を広げるとちょうど画面に収まるので踊りなどに多用されたものですが、私はあまり使いませんでした。
やはり、サイズとして美しくありません。

WSとKSはサイズ的に区分けするより、作業や動きによって、もしくは複数人の兼ね合いによって使われると考え、このサイズで撮りますということはあまり無いと思ってOK。

フルフィギュア

FF(Full Figure)=全身
FS(フルショット)とも、現場では「えふえふ」。
踊り系は「指先つま先まで含めた全身で表現するもの」なので基本FF。
これはもちろん、フィギュアスケートなども同じ。
「ダンス系は全身を」は憲法です。

指先やつま先が切れることはご法度なので動きに合わせてズームし続けるので結構大変ですし、ズームはマニュアルしか使えません。
 
あっ、ちなみに関節だからと言って、足首で切ることはありません。 

楽器などの演奏

もう一つ、追加で入れておきます。
楽器の演奏を撮る場合は特殊な考え方をします。
歌手なら上記人物サイズが基本でOKですが、演奏は考え方を変えます。
一番大切な「音」を出しているのは楽器
と考えます。
従って、楽器をアップにするか、FFにするか、はたまたロングショットにするか?が第一義、それが決まったら演奏者をどのように入れるかを考えます。
だから、演奏者の表情のアップは原則あり得ません。
商品紹介でもないのだから楽器のアップも不要かな。
これは「何かを行う道具を持っている」という撮影に共通する考え方です。
視聴者に何を見せるべきか?ここをしっかり把握しないと撮れません。
2人以上ではとても複雑になるので別項詳述します。

ロングショット

LS(Long Shot)=FFより広い画
人物が置かれている状況を示すもの。

この空間、すなわち空気さえ構図に取り込む考え方はディレクター的撮影の必須条件です。
今後はディレクターライクなカメラマンを目指す方を対象にまず撮影をひもときます。
その後に制作=ディレクターを考えます。

時間に制約された講義ではまずディレクターから始めました。
ゴールを見ながらルートを導くやり方です。
何故そうするかの理由が分かる、とても良い手法ですが、カメラマンスキルがおろそかになるという欠点がありました。

このNoteでは時間も紙面もたっぷりあるのでスタートからじっくりゴールを目指していきます。
今回は1人を撮る1S(いちえす)で考えましたが、実際には2S、3S(にえすす=二人、さんえす=三人)、GS(ぐるーぷ=グループショット=4人以上)のほうが多いと思います。
このへんは制作的にどうすべきかで解き明かしていこうと思います。
そういうわけで、次回からはかなり複雑になってきます。

最後までお読みくださりありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!