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005 構図での「レンズ」あれこれ

レンズの特性を知る

 1.望遠と広角とズーム
 2.開放値=被写界深度
 3.フィルターやらなにやら
 
ご存知の通り、レンズにはそれぞれ焦点距離というのがあって、何mmと表示されています。
人の目と同じような「遠近感」の40~60mmくらいを標準レンズと言います。

ちなみにズームは画角を変える動作のことです。
単に望遠側へは
「寄って」「寄り」「寄る」
広角側へは
「引いて」「引き」「引く」
などと言います。
ズームは
「AからBにズーム」
のような言葉を使います。
※低価格の写真用のズームレンズでは画角によりピント位置が変わるので、映像制作で言うところのズームはできません。

映像の場合はズームレンズがほとんどです。
私が使っているのは
FUJINON HA-18x7.6BERM
30~1100mmなので即座に確実に撮影できます。
開放F1.8。
MOD(えむおーでぃー:最短撮影距離)が60cm、マクロも使えます。
この数値ですから被写界深度コントロールなんてお手の物。
フォーカス、ズーム、アイリス全て左指だけで操作できるのも大きな利点。
「ガチョ~ン」も、1分間のスローなズームもできます。
また、小型化されていて、この性能で重さ1.7kgしかありません。

望遠と広角の違い

何でしょう?
 
広角は手ブレしにくい・・・2点かな。
画角の違い・・・8点かな。
合計10点

遠近感(パースペクティブ)の圧縮と誇張・・・60点かな。
合計70点、まぁイイ線です。

1.遠くのものを大きく写す・・・望遠
2.近くのものを広範囲に写す・・・広角
と考えることも少なくないと思います。
実は大きく写すためには、まず「自分が近づく」のが基本のキです。
どうしても近づけない場合はレンズに頼ります。

映像では
「遠近感 = 速度」
とも言えます。

「望遠 = 距離の圧縮 = 低速」
「広角 = 距離の誇張 = 高速」
ということも頭の片隅に置いておきましょう。
ここまで答えれば満点です。
もちろん、正しい撮り方をすればという条件付きですが・・・
※遠近感の表現・撮影方法はまた別項詳説します。

望遠の利点
1.単純な画面=背景の処理が不要(簡単)
2.迫力のある撮影=構図が簡単
3.遠近感の圧縮=スピード感の減少

広角の利点
1.写り込むものが多い=背景処理が難しい
2.立体感の表現が簡単にできる
3.遠近感の誇張=スピード感(増速)
4.手ブレに強い(写真の場合のみ)

ストーリー

写真もテレビも映画も基本は平面です。
そこに奥行き・立体感を出す
1枚の写真に物語をというのも大げさな話ですが。 

看板と状況を

観光地の看板だけではなくストーリー的に
「滝を見るために、こんな山の中まで自転車で来たんだ・・・」
と、同じ画角のレンズでも全く違った写真になります。
映像なら複数カットで表現したり、パン、トラック・・・様々な手法を使えるので別項詳説します。

被写界深度

ピントの合う範囲

構図で最重要ポイントの一つです。
※構図への取り入れ方は別項詳説します。
この表さえ理解できれば被写界深度という言葉は「OKです」
ある意味、覚えるっきゃない!かもしれません。

ニコンはレンズに被写界深度を記載

被写界深度を浅くしたいなら、
1.レンズを望遠側
2.被写体まで近ずく
3.絞りを開ける(照明の調整)
4.撮像素子の大きなカメラを使う
ことで流行りの浅い画は撮れます。

被写界深度が浅いほうが良い・カッコイイというような風潮ですが、どういう理由で浅くしたか深くしたか説明できるようにしてほしいものです。
「このカメラ・レンズだから」ではなく、せめてドラマ制作などでは放送用レンズを使えれば良いのですが・・・

一つだけ追記しておきます。
被写体までの距離は前方/後方という分け方もでき、当然、前方被写界深度のほうが浅いことも構図の中で知っておくべきです。

レンズの∞の位置

余談です。
あまり語られてないけど、レンズの∞の位置は温度差、バックフォーカスなどによりずれるため「おおむね」であり、そのため、望遠レンズでは特に∞よりかなり先まで回るようにできています。 

FUJINON HA-18x7.6  CANON J20x8B4 WRS

放送用レンズです。
無限位置よりかなり回ることがわかると思います。
それぞれのレンズの特性・特徴も把握しておく必要がありますね。
ちなみに、一番左のギザギザがフォーカス、中央の2本がズーム、一番右がアイリスです。

レンズ雑学

偏光フィルター(PL)

オートフォーカスに対応したC-PL(サーキュラーPL)が一般的。
空を暗く落とす、ガラス・水面の反射を無くすくらいしか使わないかもしれませんが、実は一番使いたいのは新緑や紅葉など。
葉っぱなどの表面の乱反射を取り除くことができます。 

PLで白い反射を除く

PLフィルターの失敗例 

飛行機の窓 太陽位置でムラが出る フィルターを重ねて四隅がケラレる

ND(えぬでぃー)フィルター

色味を変えずに光量だけ落とす。
写真機動画や民生ビデオカメラでは必携。

何故必携かというと、
明るくて絞りきれない時、電子シャッターを入れると、
「タイヤが止まったり逆回転してしまうから」
です。
これはビデオカメラ+テレビの特性です。

5歳の子に叱られるみたいな番組で某大学の先生が人間の脳は1秒に数枚の絵しか見ていないからと言っていましたがデタラメです。
正しくは
「タイヤが止まって見えるのは電子シャッターを使っているから」
です。
また、飛んでいるヘリコプターのローターが止まって見えるのも同じ現象です。
数学的にキッチリしたことはここに書いておきましたのでご参照ください。

そういうおかしなことにならないためにNDが必須なのです。
ついでに、高速電子シャッターを入れると手ブレが防げるというのもおバカな話です。
写真は高速シャッターを切れば手ブレは減りますが、ビデオではパラパラになりかえって見ずらくなります。
ちなみに、サッカーのゴール前の混戦でボールが見えなくなるのも高速電子シャッターが原因です。
ダメ押しですが、スポーツでスローをきれいに撮るために高速電子シャッターを入れるというのも間抜けな話です。
スローモーション撮影(ハイフレームレート=ハイスピード収録)する場合に収録コマ数に合わせて高速電子シャッターを入れます。
毎秒120コマ収録し、30コマ再生すれば1/4の速度になりますね。
これはフィルム映画と同じ理論です。
もはやブラウン管でCADの時代でもないので、電子シャッターは東日本の蛍光灯下での撮影で1/100、ハイフレームレート時に使うくらいですね。

諸悪の根源の電子シャッターですが、なぜ流行ったのか書いておきます。
先の5歳に叱られる番組の言い方をすれば
「高価な絞り機構を使わないのでビデオカメラが安価になるから~」
テレビは60フィールドでOAしていることは変えられない原則なのでビデオカメラは原則1/60シャッター(=電子シャッター無し)しか使えない。
例えば絞りがF5.6しか無い!とすれば昼間はただ真っ白な画!
そこで既に機能として持っている電子シャッターを使えば絞り羽根にお金を掛けず、F5.6のままで済むという電気メーカーの事情があります。

適正露出にするために
1.F5.6 電子シャッター1/1000
2.F5.6 電子シャッター無し1/60+ND16
これで同じ明るさになりますが、1はタイヤが止まったり逆転したり、飛んでるヘリのローターは止り、パラパラの見苦しい映像になります。

いちおう念の為、NDの数値は「べき乗」なので、
ND4(2)、ND8(3)、ND16(4)、ND32(5)、ND64(6)・・・
カッコ内は絞り値の変化量。
2の3乗は8のように覚えるしかないか・・・
なんでこんな面倒な数値にしたんだろう?
ちなみにND8とND16とND64を重ねると13乗なのでおおむねND10000になります。
私は登山用にハンディカムを持って行く時、重ねてもケラレないよう37~52mmステップアップリングを付けND4、8、16に加えPLの計4枚を組み合わせて使い、電子シャッターを使ったことはありません。

絞り羽根

20年以上前にハンディカムを分解したことがあります。

絞り、あれこれ

大昔、絞り羽根はメーカーによって枚数がある程度決まっていてキヤノンは6枚、ニコンは7枚なので右のように7角形のゴーストが出ました。

光が小さな穴を通過する時、光が屈折します。
これを回折(かいせつ)現象と言います。

民生のハンディカムはたった2枚の羽根です。
だからコントロールが難しく、かといって枚数を増やす予算は無い・・・
絞りたくとも回折が起きるのでそんなに絞れない・・・
そこである程度絞られてくると隅に貼ってあるNDフィルターが自動的に入る仕組みになっていました。
映像の仕事していて一番驚いたことかもしれません。
編み出した人の頭の中見てみたい(笑)
 
あくまで個人的な好みですが、私は円形絞りより無骨な7枚が好きです。
羽根3枚は無意味で4枚は2枚と同じなので2の次は5枚です。
また、今はバリアブルNDなどの新機構も登場してきています。

ついでに、ビデオカメラの絞りは無段階です。
多くの写真機は段階的に絞りを変えるので動画では明るさがカクカク変わってしまうのも辛いところですね。

さらに、もう一つ。
全てのレンズはさかさまに写ります。
画面の上に写り込んだゴミは、撮像素子では下にあります。
掃除の時のご参考に。

長くなりすみません。
最後までお読みくださりありがとうございました。
 
なお、専門用語やカタカナ用語が登場します。
覚えても仕方のない英語などはできるだけ排除しますが、ご不明な点はログインしてコメントを残していただければ回答いたします。 

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