猫(頼りない僕は寝転んで)
最近、同居している(と言っても2世帯住宅で、食卓で毎日顔を突き合わせるような関係ではないのだが)兄が猫の保護活動を始めた。
自宅の周りにはたいへんに野良猫が多い。
ウッドデッキにちょうど誂え向きの屋根もついているため、そこで母猫が子猫を育てる姿をしばしば見かけていたのだが、今年は特に我が家を訪れる子が多く、毎日餌をねだりに何匹もの猫がウッドデッキに集まった。
家族全員が猫好きのため、周囲に迷惑のかからない範囲を心がけつつ世話をする毎日だった。
北海道の冬は寒い。10月にもなればいつ雪が降ってもおかしくなく、野良猫たちには辛い季節がやってくる。
冬を目前にして、家族全体にうっすらと「なんとかしなければならない」という使命感が湧いた。猫の保護活動を始めた経緯はこういったものだ。
最初に捕獲したのは、ウッドデッキで生まれたといっても過言ではない3兄妹だった。
3匹ともほぼ家猫と言って良いほど人馴れしていて、僕や家族が撫でるとすぐに喉を鳴らすような子たちだ。
譲渡すること、そして家で飼うことを視野にいれて、兄はその3匹をいの一番に保護した。
去勢や検査を一通り済ませたあと僕に課せられた仕事は、部屋をこの子猫たちに明け渡すことだった。
保護した兄の居住スペースには明確に部屋と呼べる空間がなく、先住猫と隔離して保護猫たちの世話をすることが困難だったためだ。
こうして僕は3匹の保護猫と同じ部屋で寝起きすることになった。
早朝どころか真夜中に兄妹喧嘩の音で目覚め、ウンチを掃除し、強烈な臭いに悩まされながら一週間を過ごした。
そして今日、3匹のうち2匹が新たな家に引き取られていった。といっても、トライアル期間という扱いでだが。
引き取られていったのはどちらも三毛猫だった。
「きなこ」と呼んでいた縞のある三毛猫は最もおしゃべりで、大騒ぎする子だ。ケージの段差を登り降りする音や、切なげに鳴く声で何度も目覚めさせられた。
「みたらし」と呼んでいた黒の濃い三毛猫は運動神経が良く、また物怖じしないようで部屋のドアを地力で開け、脱走を図ったこともあった。
猫じゃらしやネズミのおもちゃを咥え、誰も取ろうとしていないのに「ウー」と唸る、愉快な子だった。
結局、唯一のオス猫が我が家に残った。
野良猫にしては珍しい長毛で、保護した3匹の中で最も人に慣れていた子である。
額に三日月型の黒い模様が入っていることから、「モンド」と呼んでいる。
名付け親は母だ。「旗本退屈男」という作品を僕はここで初めて知った。
有り体に言って、少しアホである。あまりに簡単に抱き抱えられるし、あごをひと無でするだけで喉をゴロゴロ鳴らしている。
捕獲したのは兄だが、捕獲器を使わずとも抱きかかえて捕獲できたらしい。野良猫というのはもう少し警戒心があるものだと思っていた。
おそらく、モンドは我が家の新しい家族になるだろう。
今日、初めてモンドが僕の部屋から出た。
両親の寝室やリビングの様子を鼻をひくつかせながら散策していた。
僕はモンドが来る前から、1匹の猫と暮らしている。
6月で3歳になったこのアメリカンカールは、子猫時代からペットショップで暮らしていたためか他の猫に対して慣れていない。
兄と一緒に暮らしている猫と対面したときには威嚇が止まらず、取っ組み合いの激しい喧嘩をしてしまうため、二匹が出会わないように注意を払っているほどだ。
メス猫らしく、僕たち飼い主に対してもツンとした態度を取るほどの、とても気位の高い猫だ。
先住猫のななと新たな家族(現状はあくまで候補だが)のモンドは、今のところ付かず離れずの距離感を保っている。
2匹はこれから上手く仲良くなれるのだろうか。
この2匹の行く末をなにかしらの形で残しておきたくなり、noteを利用しようと思った。
まぁ、飽きるまでは続けたいと思う。