メルヘン「クラスペディア」⑦
この頼んでもいないのに、背中を押すニコちゃんマークとメッセージ。
会ってもいない彼女の笑顔に見えたり、笑い声が聞こえた。
彼女の鼻歌も、それは僕の鼻歌だったのか。
それともたくさんの本の世界に酔っていたせいかも知れない。けれど僕の糧になり、少しは笑顔が上手くなったかもしれない。
3年の夏休みの三者面談。
母に「先に行ってて」と言われ、先に到着。教室の前の椅子は二つ用意されてるのに一人で座って焦っていた。
母は遅刻せずにギリギリにやってきた。もう。
「ごめん。ごめんね。」
しかも僕の進路には興味がなさそうだった。
「暁の行きたいところならいいです。」
と息が上がりながら言った。
宿題もお盆までにはできた。
元病院の敷地にショッピングセンターが新しくできた。
中に本屋もできたらしく、近くて便利になったので行ってみた。
入口駅を降りて、2階の渡り廊下でつながっていて直接ショッピングセンターに入る事ができる。
新しい本屋の匂いを吸い物色し、親の愚痴、僕への無関心、大原玲さんの事、あれやこれや思い巡らせていて、
梶井基次郎の「檸檬」のように、積み上げられて新刊の上に檸檬をおいて去りたかったが、檸檬を持ち歩いてるわけもなく、代わりになるものもなく。
代わりに黄色いニコちゃんマークのボールを置いて去るイメージをして本屋を去って、
微笑んだ。
つづく
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ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?