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「孤独のグルメ」を観る男の魂 ~Season1 第10話 豊島区東長崎のしょうが焼目玉丼~

 こんにちは、伊波です。
 この企画、毎回仕上げるのになかなかなエネルギーと時間が掛かってしまうんですが、チャチャッと書いてバーッとアップできたらいいなぁと思うことが時々あります。
 まぁ、ドラマを見返す時間も楽しいからいいんですけどね。


あらすじ:あめんぼ赤いな、あ・い・う・え・お

 商談のため、豊島区東長崎を訪れた井之頭五郎(松重豊)。今回の商談相手である安田(窪隆司)は絵に描いたようなギョーカイ人。映画の小道具に使う皿が欲しいという話だが、「シュッとして、パパーンってした柄が…」という話しぶりで今一つ要領を得ない。勢いのままに無茶振りされた井之頭は、気分転換がてら近くの公園へ出向く。そこは演劇や漫才の練習に励む学生たちであふれかえっていた。

五郎さんと東長崎

 駅を出るなり「東長崎って、こんな駅だっけ。ずいぶん久しぶりだ」と呟いており、訪れるのはご無沙汰の様子。池袋と雰囲気の違いを比べつつ「生活感が丸出しだ」と評しています。そして道中、後半で食事をすることになるせきざわ食堂を見つけて「ほぉら、この店構えなんて、実に俺好みだ」と笑みを浮かべていて、好印象の様子です。

所感1:キャラが強いなきゃ・き・きゅ・きぇ・きょ

 仕事の前に自分好みの店を見つけた五郎さん。上機嫌で安田への手土産を買いに寄り道します。
 八百屋を切り盛りするのは、元気でよく話す奥さん(松居直美)。五郎さんを見つけるなり、「何かお探しですか?お土産?イチゴなんかどうでしょう、一期一会…なんちゃって!」とダジャレの応酬。「…苦手だ、こういうの」と心の声で嘆く五郎さんですが、食事中のつぶやき、割と似た感じじゃないのか。や、あれは独白だからOKなのか。難しいお年頃。
 結局キウイを購入してダジャレ乱舞を断ち切り、勝ち誇った表情に。しかし店を出る間際に「飛び出すな!クルマはキウイ(急に)止まれない、なんてね♪」と言い放たれ、逆転KO。こういう時、五郎さんはだいたい負けますよね、ええ。

 程なくして待ち合わせ場所の喫茶店に到着。手土産を渡して「ちゃんとメシは食えてる?」と聞いているあたり、顔なじみである様子。対する安田は軽い調子ながら敬語を崩していないので、五郎先輩と後輩・安田という関係性なのかもしれません。
 作る映画というのが、「四谷怪談のお岩さんと番町皿屋敷のお菊さんが現代にタイムスリップしてパンクバンドを結成する」という話。そのバンドのパフォーマンスが、演奏中に皿を投げまくって客席を血の海にするというものなのだそうな。「なんせパンクなんで」と説明する安田ですが、それってパンク?

 一通り話を終え、気分転換にと大学キャンバス(日大芸術学部 江古田キャンバス、らしいです)の前を通って公園を散歩する五郎さん。そこには友人同士でだべったり、発声練習をしたり、漫才の練習をしていたりと思い思いの活動にいそしむ学生たちの姿が。そんな光景を見て「あったあった、こういうのも変わらないんだなぁ」とニッコリ。すぐに感化されて「あ・え・い・う・え・お・あ・お」と発声練習してみせるものの、「お・な・か・が・へっ・た」と表情を一変させるのでした。

 しかしこの世界の五郎さん、劇団を主宰する先輩がいたり、映画業界で働く後輩がいたりと、ちょいちょい演劇をかじっていたような様子が見られます。そういう設定なのか、それとも松重さんの地が混ざっている感じなのでしょうか。

所感2:安くて美味いよ、や・い・ゆ・え・よ

 「パッと入って、ズバッと決めて、チャチャッと食いたい」と店探しに挑む五郎さん。道中でせきざわ食堂の存在を思い出し、すかさず急行。はす向かいの洋食キッチン長崎に後ろ髪を引かれつつも、食堂へ入っていきます。「何だか美人2人に同時に告白されているみたいだ」と、何とも羨ましい心情を漏らしているけど、これも近年の五郎さん像からするとちょっと違和感あるなぁ。

 カウンターのカド席に陣取った五郎さん。雰囲気に満足したのも束の間、メニューの安さと多さに嬉しい悲鳴。「こっちは嬉しいけど、お店が心配になる値段設定だ」と漏らしています。確かに、アジフライ定食410円、チャーハン380円なんて、12年前という年代を差し引いても安すぎる。
 色々とメニューを眺め回した結果、しょうが焼目玉丼、肉じゃが、ウインナーフライ、ポテトサラダをオーダー。安さに惑わされたのか、いきなり飛ばし過ぎのようなオーダー量、そしてまさかのイモかぶり。いいじゃないか、そのわんぱくぶりが五郎さんだよ。

 程なくして、しょうが焼目玉丼以外の3品が到着。ウインナーフライは「ウインナーをフライにした、そのまんまの味だ。でもこういうの、なかなか食べられないんだ、望んでも。この“普通味”が美味い」と満足げ。
 キャベツとの組み合わせが嬉しいポテトサラダにも納得の表情。「頼んで良かった」とニンマリです。さらに肉じゃがには「そうそう、こういうのでいいんだよ」と、これまたニンマリ。「店の人の人柄が染みているような味だ」と感想を漏らします。料理で人を見るのが何とも五郎さんらしい。
 隣の席の人がオーダーしたワンコイン定食の煮物もすかさずチェックするあたり、何とも抜け目ない。五郎さんって、食事している時ほど妙に視野が広くなりますよね。

 そしていよいよメインのしょうが焼目玉丼が到着。添えられたスプーンにお店の意図を読み、さっそく目玉焼きの黄身を潰していきます。
 一口目で「美味い!」と顔を綻ばせると、二口、三口と矢継ぎ早に飯をかき込む五郎さん。「ご飯と肉の間にキャベツが少し入っているのが素晴らしい」「ピーマンに紅ショウガ。どこまでも、どこまでも気が利いてる」と脇役たちへの賛辞も惜しみません。やっぱりね、ガッツリ系メニューのガッツリ感を支えるものって、こういう脇役具材なんですよね。いい仕事してますね~。

 怒涛の食べっぷりであっという間に完食。4品オーダーで1,030円という激安ぶりは衝撃的。そりゃ頬もつねるって。
 「俺にとっての夢のような店は、こんな店ですよ」と最大級の賛辞を送り、「さて、安田君に頼まれた皿をピカピカッと探すか!」と気合を入れて店を後にするのでした。

今回のマニアックポイント

>> 今回のズームアウト

 安田との商談を終え、それぞれの活動に励む学生たちを眺めて微笑みを浮かべる五郎さん。演劇部らしき集団の発声練習をマネて「あ・え・い・う・え・お・あ・お……」とやっていると、「お・な・か・が・へっ・た」と険しい顔になり、ズームアウト。発声練習のお手本にしたい、口形の良さは見逃せません。

>> 今回の珍客

 今回のお客さんは、五郎さんのオーダー候補から漏れたメニューをフォローするような役割。若いサラリーマン客(安井秀和)はサンキューセット、ワンコイン客(柏木厚志)はワンコイン定食を……といった具合。しかし役名、「後から入ってきた客」とか「キャップ帽の客」とかあったろうに、ワンコイン客って……ねぇ?(笑)

ふらっとQUSUMI

 店の軒先を見るなり「シブいなぁ~、大好きですね!」と、佇まいぶりを激賞する久住さん。さらに入店すると、メニューの激安ぶりに驚きを隠せません。
 「ビールとかってあるんですか」と切り出し、肉じゃが&きんぴらごぼうと合わせてオーダー。「そんなね、飲んでる人じゃないんだよ!」とは、酒飲みがよくやる言いつくろいよ(笑)。
 加えて頼んだワンコイン定食は、ライス・みそ汁・チキン揚げ甘酢あんかけ・ひじき煮物・あったか~いとうふの5品。あっという間に久住さんの目の前は大渋滞です。あー、でもこういう食堂いいっすよね。「ものすごい贅沢気分!」と言うのもうなずけます。

出演者について

 オープニングの八百屋でダジャレ乱舞を放ち五郎さんを多いに困惑させた奥さんを演じたのは、松居直美さん。イメージそのままの朗らかな笑顔が印象的でした。「いよかん持っていい予感」は、いつかどこかのタイミングで使えたら使いたい。
 近年はやはり「はやく起きた朝は…」のイメージが強い松居さんですが、「クロサギ」や「半沢直樹」、「相棒」などにも出演歴があり、役者としての一面も持っています。個人的には坂本冬美さんなどモノマネタレントの印象が強いですが。

 ザ・業界人!の安田を演じた窪隆司さんもモノマネ芸人として活躍。本人の公式HPによると「家電ものまね、政治家ものまね」といったレパートリーがあるそうです。Facebookには弾き語りのカバーなども披露されていて、芸達者ぶりがうかがえます。

 公園で漫才の練習にいそしむ学生を演じたのはアイデンティティの2人。ボケの田島さんは今やDB芸人として唯一無二のポジションを確立しており、テレビなどで見る時には“野沢雅子コス”でバッチリ身を固めていますが、この時は珍しく(?)ノー野沢雅子のカジュアルなスタイル。こんなネタやってたんだ~と妙に貴重なものを目撃した気分です。

 食堂でカツ丼を注文する劇団員女学生(ツインテールの方)を演じた七瀬美菜さんは、“ななみん”の愛称で今も現役バリバリのアイドル歌手。舞台では小学生から大人まで幅広く演じ、ライブ活動では日本だけでなく米仏でも公演を行うというワイドっぷりです。

クレジット

脚本:田口 佳宏
監督:溝口 憲司
音楽:久住 昌之、Pick & Lips、フクムラサトシ、河野 文彦、Shake、栗木 健、戸田高弘
タイトルバック:「JIRO's Title」(作曲:久住 昌之)
松重“五郎”豊のテーマ「STAY ALONE」(作曲:久住昌之、フクムラサトシ)
撮影協力:せきざわ食堂、長崎十字会 あらい青果、江古田の森公園、珈琲専科 柚香里、OFFICE101

【出演】
井之頭五郎:松重 豊
八百屋の奥さん:松居 直美
業界人・安田:窪 隆司
主婦の客:芳賀 めぐみ
食堂のお父さん:森屋 実
食堂のお母さん:田崎 怜依
男子学生客:山内 貴人
中年男性客:桂野 恵一
ワンコイン客:柏木 厚志
若いサラリーマン客:安井 秀和
劇団員女学生1:七瀬 美菜
劇団員女学生2:野々宮 なな
芸人を目指す学生1:田島 直弥(アイデンティティ)
芸人を目指す学生2:見浦 彰彦(アイデンティティ)
公園にいた学生たち:日大芸術学部のみなさま
オープニングナレーション:柏木 厚志

今回の名言

「ほんの二駅しか離れていないのに、池袋とは雰囲気が全然違う。もっと生活感が丸出しだ」
 東長崎駅を出た五郎さんが、町の様子を眺めて漏らした一言。これは井之頭流賛辞。

「……苦手だ、こういうの」
 ダジャレを畳みかけてくる八百屋の奥さん(松居直美)に困惑する五郎さん。独白の五郎さんと大して変わらない気はするけど、誰かに言うのと独白とじゃ意識が違うんでしょう。知らんけど。

「……勝った」
 八百屋の奥さんのダジャレラッシュをキウイで強引にストップさせた五郎さんが、勝ち誇った表情でつぶやいた一言。はい、負けフラグです。

「四谷怪談のお岩さんと、番町皿屋敷のお菊さんが、現代にタイムスリップしてパンクバンドを結成するって話なんすよ!あ、雪女もいたかな」
 安田が今回携わる映画の設定。お菊さんが演奏中に、皿を客に投げるパフォーマンスがあるとのこと。パンクならなんでもアリだと思うなよ!

「仕事はがんばってるみたいだけど、ビジュアル関係ってああいうの多いんだよな」
 ※五郎さん個人の感想です。

「あった、あった。こういうのも変わらないんだな」
 演劇部と思しき学生たちの発声練習を見つけた五郎さんの感想。五郎さんは学生時代から表現系のサークルが身近だったんだろうか。

「うん、やっぱりいい。俺の目に狂いはない」
 せきざわ食堂の前に戻ってきた直後の一言。五郎さんの審美眼は骨董品と下町と大衆食堂で磨かれています。

「何だか美人2人に、同時に告白されているみたいだ」
 近作の五郎さんなら言わなさそうな喩え。たぶんだけど、そんなシチュエーションにあったら何とかごまかして逃げそうよね。知らんけど。

「キャー、嬉しい悲鳴だ。安すぎないか」
「こっちは嬉しいけど、お店が心配になる値段設定だ」

 せきざわ食堂に入り、壁一面に貼られたメニューを見まわしての一言。定食が400円台で頼めるって、そりゃキャーですよね。キャー。

「ポテトサラダ、勇み足だったかな。……今思えば肉じゃがとポテトサラダ、イモがダブってる」
 低価格にはしゃいで(?)4品もオーダーした後の、迷いの一言。まるで小遣い貰ってウキウキの少年じゃないか。

「ここの飯なら、実家のお母さんも安心だ」
 男子学生客と食堂のお母さんとのやり取りを横で聞いていた五郎さんの一言。学生さんに優しい食堂はありがたいもんですよ。

「この普通味が美味い」
 ウインナーフライを一口頬張り、見た目通りだった味わいに目じりを下げて漏らした一言。

「そうそう、こういうのでいいんだよ。店の人の人柄が染みているような味だ」
 肉じゃがの味にも納得の表情。五郎さんは料理の中に人を見出すのだ。

「あの煮物も間違いないな…」
 ヘイヘイ、よそ見は禁物だぜ五郎さん!

「カツ丼をあっという間に燃やせる体力がなければ、どこの世界でも大物にはなれない」
 本日の格言、いただきました!後から入ってきた女学生がカツ丼を勢いよくかき込む姿に五郎さんもニッコリ。

「生姜焼き、目玉焼き、ご飯…。全部俺の大好物だ。…でも、こういう風に食べるのは初めてだ」
 食のわんぱく少年・五郎さんでも未体験ゾーンの豪華3点盛り。素晴らしい。

「ご飯と肉の間に、キャベツが少し入ってるのが素晴らしい。ここのご夫婦、いいセンスしてるなぁ。こういうセンスが、小洒落たレストランじゃあ望めないんだよ」
 主役のご飯をどう生かすか。それが五郎さんの求めるセンスだ。助演に賛辞を送る五郎さんの眼差しは優しい。

「ピーマンに、紅ショウガ。どこまでも、どこまでも気が利いてる」
 脇役がいい仕事すると、それだけ食が進むんですよ。これぞ食の神髄。たぶん。

「こんだけ食べて……夢のようだ」
 安すぎるお会計に思わず頬をつねる五郎さん、可愛すぎじゃないか。

「俺にとっての、夢のような店はこんな店ですよ」
 飾らない雰囲気と、お客さんの食欲を満足させるための細やかな心配り。これこそ夢の店ですよ、ね!

「ピーンひらめいたらジャーンで、ドドーンと来て、ポワワーンとしちゃった」
 まさに夢うつつの感じ。ポワワーンですよポワワーン。

本日の五郎さんのお食事

【珈琲専科 柚香里】 ※店名の映り込みなし
・コーヒー

【せきざわ食堂】
・ウインナーフライ:どこにでもありそうでなかったウインナー料理 サクッとした歯ざわりがイイ感じ
・ポテトサラダ:150円とは思えない量と質 おまけに嬉しいキャベツ付き
・肉じゃが:煮汁が染み込んだジャガイモはまさにおふくろの味
・しょうが焼目玉丼:ホカホカご飯の上でしょうが焼と目玉焼が合体!ガンガン行ける最強の丼!
・みそ汁

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