鑑賞記011「TAGBOAT×百段階段 展」~序~
ホテル雅叙園東京にある「百段階段」にて、「TAGBOAT」がセレクトした30名の新進アーティストによる独創的なアート作品が文化財とコラボする展覧会が2020年10月11日まで開催されています。
まずは会場である百段階段について少し。
百段階段という呼名は俗称で、元々の名は目黒雅叙園3号館でありました。1935年に建築された木造の建物です。長い階段が繋ぐ7つの部屋はそれぞれ趣向が異なり、当時の著名な画家達が作り上げた美の世界を堪能できます。
床から天井まで、どこも気が抜けない、どこを観ても「ほぉ。。。」ってなる、部屋全体が芸術品。
そんな各部屋に、現代のアーティストによる作品がそこかしこに展示されているのが今回の展覧会です。
階段の脇には段数を示すプレートが置いてありました。一番上まで登りきってふと目をやると、そこに書かれていたのは「99」。あれ、百段やないやーん。何故99段になっているのかは諸説あるそうですが、2つの説が紹介されていました。
1つは「縁起担ぎ」。奇数は「陽数」といって、縁起が良いとされているそうで、百までの数字の中で一番大きな陽数にした、という説。
もう1つは、「発展の余地」。百といったキリの良い数字というのは完璧を意味するので、それを1つ欠けさせることでこれからの発展性を残した、という説。
いずれにしても末永く発展して欲しいという願いを感じるお話ですよね。
百段階段には、この階段を通路として7つの部屋が造られています。
十畝の間
この部屋を担当した画家・荒木十畝から名付けられた部屋。唯一の平屋であり、一番広い部屋でもある。神社仏閣やお城で造られる格式のある天井「格天井(ごうてんじょう)」が特徴の1つ。
漁樵の間
部屋の名前は、床柱に彫られた中国の画題「漁礁問答」に由来。床柱・欄間・天井が彫刻で装飾されている。床柱は樹齢300年のヒノキを一本の木から掘り出して造られている。
草丘の間
この部屋を担当した画家・磯部草丘から名付けられた部屋。天気の良い日は富士山が見えて、昼間の宴会場として人気の部屋だったらしい。
静水の間
二間からなる作りの部屋は、担当した画家・橋本静水から名付けられた部屋。実際は5名の画家が携わっているとされる。
星光の間
この部屋を担当した画家・板倉星光から名付けられた部屋。百段階段の部屋の中では天井が低い部屋であるが、圧迫感を和らげる工夫が施されている。
清方の間
近代日本画の巨匠、"東の清方"と呼ばれた鏑木清方から。目黒の地をとても好んでいたことから、欄間絵には目黒の風景が多く盛り込まれているのが特徴。
頂上の間
当初西村五雲に揮毫を依頼していたが、描く前に他界してしまい、叶わなかったと伝わる。最終的に川端龍子門下の画家により描かれた天井画が配される。
公式ページではGoogleインドアビューでお部屋を見学することができますので、是非御覧ください。
エレベーターも必見!
なお、受付は雅叙園入ってすぐのところにあって、チケットの確認と体温チェックの後、エレベーターで移動するんですが、それがこんなすごい扉で。
エレベーターからして芸術作品。言うても扉だけだろう、、、と思ってたら、扉開いてまたびっくり。
それでなくても大きなエレベーターだったんですけど、その中の全面が螺鈿の装飾。。。びっくりしすぎて乗り込んでから行き先ボタン押し忘れまして、3階行かないといけないのに地下行ってしまったぐらいw
始まる前から驚きと感動をくれる会場です。