運命①
私の祖母は仏のような人だ。
「何事にも感謝しながら生活しなさい。」
祖母と会うといつもそう言ってくれる。今こうして生きていられることに感謝をしなさいと。
そんな祖母が結婚するまでの話を書き留めておく。
祖母は貧しい家に生まれたため、高校には行けず15歳から働き始めた。
中学校を卒業したばかりの純粋無垢な少女は、エスカレーターの隣で客にフロア案内をする係に配属になった。1時間働くと30分の休憩がもらえる。毎日その繰り返しだった。同僚の女の子達は、休憩時間を利用してお菓子を買うことに楽しみを見出だしていた。予算は一人あたり大体100円。(昔と今では相場が違うことを理解していただきたい)
しかし少女は、100円すら出すのが惜しかった。
稼いだお金はすべて家に入れ、少女がお小遣いとして貰えるのはせいぜい500円程度だったからだ。
そんな状況を周りは知るはずもなく、少女はここでは続けていけないと悟った。
それだけでなく、勤務中に男子大学生に手を捕まれ、連れていかれそうになったこともあったそうだ。
結局少女はその会社を辞め、新しい会社で事務として働き始めた。