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IB教育インタビュー vol.2 シンガポールのノア君とリク君

今回は、「コロナ禍でのIBDPと大学受験」と題して、IBDP修了生の生の声を語っていただきます。
インタビュイーは、リク君とノア君のお二人。

二人ともこの2022年6月にDulwish College (SINGAPORE)から大学受験を終え、卒業したばかりです!

ノア君は、前回vo.1 でインタビュイーをしてくださった、シンガポールのまきさんの息子さんです。


ノビー:今年度の大学受験では、Predicted grade と Conditional offer(条件付き合格)のスコアに、3.0ポイントもの開きがあった大学が少なくなかったと聞きました。

リク君:はい。例えばICL(Imperial College London)はConditional offerでPredicted gradeより3.0ポイント高いRequirementが提示されました。

ノア君:University of Birminghamは4.0ポイント高かったです。

ノビー:なんと、4.0ポイントですか‥。0.5ポイントの差のために、IBDP生は、ものすごい努力をするものだと思っていたので、驚きました。Conditional offerのタイミングでそこまで高いRequirementを提示されてしまうとは。対策しづらいというか、なんというか。。それもコロナの影響ですか?

リク君:そうですね。コロナの影響です。僕たちの1つ上の学年の先輩と、僕らの学年はコロナの影響を大きく受けました。

ノア君:こんな新聞記事も出ています。

ノビー:国によって、コロナの教育現場への影響の大きさが著しく違った、例えば対面での授業ができない、試験ができないなど。そのためIB機構は2021年にシステムを変更し、スコアを出すためのルートを2つ用意したんですね。

(記事から一部抜粋)
今年のIBの優先事項は、学生が受験して合格したか、非試験のルートで評価されたかに関係なく、COVID-19による世界的な混乱を受けて、学生に進歩するための平等の機会を提供することであった。われわれはパンデミックが生徒に与える影響を慎重に検討した。
2つの方策のどちらがローカルな事情に最適であるかを判断するために学校に対して調査を行った。すなわち、安全に実施することが可能なところでは筆記試験、またはそれが不可能なところでは、内部評価コースワーク(授業)と教師の予測による成績の組み合わせを使用した非試験のルートである。

ノビー:結果、世界全体のIBDP生の平均値としては、学習量(≒学力)に対して過去と比較して高いスコアを得る学生の人数が増える結果につながった。大学は当然、Applyは例年のPredicted gradeで受けるけど、倍率が上がってしまったので、Conditional offerでさらに高いRequirementを出して多くの受験生を振り落とすことになったんですね。

リク君:まあ、多分そういう事ですね。

ノビー:世界の大学は、IBDPのスコアへの信頼(生徒の学力を正当に評価してる)というのを前提に大学入試の制度設計をしてきたという背景があるけれど、コロナというあまりにも大きな世界全体へのインパクトで、それが一時的にゆらいだかのように見えますね。
コロナ禍での学校生活はどうでしたか。メリットと感じられることも中にはありましたか?オンラインの授業はかなり増えたのかな。

Dulwish College (SINGAPORE)

リク君:シンガポールでは、授業がオンラインになった期間もあったけれど僅かだった。試験はすべて対面だった。

ノア君:集団で遊んじゃダメと言われて、遊ぶ時にひとりの友達しか誘えなかったから、それは嫌だったな。

リク君:ずっとマスクしなきゃいけないのも息苦しくて嫌だった。

ノア君:多分シンガポールは他の国よりは影響少なかったんじゃないかな。授業が全くできなくなっちゃった国とか、きっと大変だったと思うよ。

Dulwish College (SINGAPORE)の教室で。マスクが必須の毎日。

リク君:学習面では、授業中に学ぶトピック(単元)が減って、ラクだったんだ。例えば、化学は20トピックで、通常さらにオプションのトピックを学ぶんだけど、今年はIB機構の判断でオプションが全部キャンセルになったんだ。

ノビー:それもIB機構の判断だったんですね。テスト対策が少しラクになったと。つまりどちらかというと学習量が少ないのに高いスコアが得られやすい状況ですね。

ノア君:数学以外、ほぼすべての科目で同様のことがあったんだ(トピックが減った)。でも来年から例年通りに戻るとIB機構は発表してる(オプションが復活する)。

リク君:しかも、僕らの1つ下の学年の子たちが受験する時には、さらにPredicted gradeとConditional offerが上がるだろうと予測してる人たちもいる。それは本当にそうなるかどうか、わからないんだけど。

ノビー:そうなんだ。2年連続で上がってしまう。
そうなると来年は逆に、Predicted gradeと比較してConditional offerが下がったりする現象が起こる可能性もありそうですね。いずれにせよ来年も安定しない、と。

リク君:その可能性はある。来年受ける子たちも、過去のPredicted gradeやConditional offer を目安に頑張るだけじゃ不十分で、目指す大学の合格を最終的に手にするまで気が抜けない。

ノア君:うん。高いスコアを獲得するに越したことはないんだけど、大変だからね。学習量が増える中でも高いスコアを目指さないといけない上に、受験のときに大学から提示されるConditional offerの内容がすごく予測しづらいんだ。


ノビー:二人は、進路選択や、大学を選ぶとき、迷ったりしませんでしたか?

リク君:僕の場合、12歳ではじめてインターに入った時、ほとんど英語ができなかったんだ。うちは父も母も日本人で、家庭で英語を話す機会は少なかった。小学校は日本人学校に通ってた。
だから数学とか、語学に頼らなくても伸びる教科を頑張るようになったんだ。でも授業は英語だし、みんなと話は通じにくいし、はっきり言って学校じたいが楽しくなかった時期もあった。今だから言えるけど結構つらかったんだ。でも、数学とか物理とかで、だんだん成績が伸びはじめて「面白い」と思えるようになった。

ノビー:英語も頑張ったんだよね。そうじゃなきゃICL (Imperial College London)を目指せるような高いスコア取れないよ。

リク君:いや、英語はまだまだだって、自分では思ってる。
とにかく理系に進みたいなっていうのは自分の中で決めていて、IGCSEからIBDPへ進んだけど、IGCSEの時は、日本の大学に進学しようと思ってた。日本の大学生活に憧れをもっちゃってたんだよね。

Dulwish College (SINGAPORE)の仲間たちと。

ノビー:日本の大学に魅力を感じていたの?

リク君:よく言えば自由、悪く言えば勉強しなくてもいい。バイトしたり、とにかく、みんなすごく楽しそうに見えたんだ。
でも、IBDPに進んで、進学について自分でも色々調べるようになって気が変わった。

ノア君:うちの高校は、進学について学ぶための授業があるんだ。
学校でほとんどの情報を得られるようになってるし、学校が示すタイムラインに合わせて自分がその締め切りを守れば、Applyのストレスはほとんど無くて。恵まれてたと思う。

リク君:うん。学校に詳しい人がいないと、自分で調べて、自分でカウンセラーを探して、大変だと思う。特にApplyのためのタイムラインを自分で作るのは難しいよ。

ノビー:親御さんは進学についてどんなアドバイスをしてくれましたか。

リク君:僕の親は、勉強や進路について、ほとんど口を出さなかった。「行きたいところに行きなさい」と言ってくれて。
でもIBDPは学費もすごく高いんだと分かって「こんなに高いなら、それ相応の大学に行って本気で勉強しよう。IBDPの学費を親に返せるくらい稼げるようになろう」と思うようになった。

ノビー:すごい動機ですね。リク君は早稲田大学も受験して受かったんだよね。

リク君:祖父母が「子どもや孫が早稲田大学に入る」という夢をもっていたんだ。だから受けて、受かったけど、世界では早稲田大学の知名度はそれほど高くないから。
ICL (Imperial College London)に受かったから、そっちへ行くことにしたよ。僕は進学先を、その大学のブランド・知名度を重視して選んだ。まだ研究内容までは決めていないけどね。

ノビー:早稲田大学はどんな入試のスタイルでしたか。

リク君:DPのPredicted gradeと、IELTSと、英語の志望動機書の提出だけだった。あと学校が発行する推薦文が必要だったんだけど、実は、その推薦文には僕は物理が得意だという事しか書かれていなかったんだ。

でも受けたのは政治・経済学部だったんだよ。「これ、本当に受かるんだろうか。大丈夫なのかな。。」と思って出したんだけど、受かってしまった。もしこれがイギリスの大学だったら「志望動機書と推薦文を、なぜうちの学部で学びたいのか、わかる内容で提出し直すように」と通知をもらってもおかしくないんだ。だからビックリした。

日本の大学は、基礎学力が基準に達していると思えば合格を出すんだなと思ったよ。なにが得意か、何を学びたいと思っているかはあまり重視していない。
アメリカはアメリカで、起業したことがあるか、とか、スコアと同じくらい経験や動機を重視する傾向があるような印象を持ってる。
要するに、国によって、Appricationの求められ方が全く違うんだ。

ノビー:受かってしまった‥けど、早稲田は蹴って、イギリスに行くんだよね。日本の大学は、IBDP生向けの入試で異常に高いPredicted gradeを要求する大学もあるけど、世界のIBDP生から見て魅力あるのかなと、不安になりますね。
学費は安いのはメリットだと思うけれど。

リク君:うん、日本の大学は学費が安い。僕はイギリスでインターナショナル生としての学費を払わなきゃいけなくて、現地での生活費もかかる。だから、本気で勉強しないと。
ユニクロは、日本にいる学生で、海外の大学を目指すけど学費がない人向けの奨学金を出してるよ。海外の大学からのConditional offerがあればApplyできる。僕は貰えなかった。倍率が高いんだ。今年は、50人の枠に、400人くらいの応募がきたみたい。
僕は、イギリスの大学は、オックスフォード大学かケンブリッジ大学どちらかは受けようと思ってて、オックスフォードを選んだ。結果、合格できなかったけどね。イギリスでは、どちらかしか受けられないんだ。

ノビー:イギリスでは、日本みたいにいくつもいくつも併願できないんだよね。
ノア君は、イギリスの国籍・日本の国籍、両方あるから、イギリスに進学しても学費は比較的安いのかな。

ノア君:うん、でも国籍があるだけじゃダメで、Applyした時に現地に住所がないと自国生として適用されないとか、細かい条件があるんだ。よく調べた方がいいよ。
僕は大学を選ぶ時はブランド・知名度より、環境を重視していた。ロンドン郊外のBATH大学や、北アイルランドのクィーンズユニバーシティ大学は医学や理系に強くて、病院が併設している。設備が整っているのが魅力的だった。
16歳の時は、医学・生物をもっと学びたいと思っていた。IBDPに進学してから、数学よりも、生物・化学がだんぜん面白いと感じるようになったんだ。経済も好きなんだけど、受験する時にIELTSが必要になる大学もあって、面倒くさくて。僕は英語が第一言語なんだから、英語できるに決まってるのに、IELTSのために複雑な試験対策をしなきゃいけないのが嫌だと思った。しかもお金もかかるし。

リク君:そうなんだよね。僕もIELTS受けるのに3万円くらいかかったよ。


Dulwish College (SINGAPORE)の卒業式で。

ノビー:コロナ禍での混乱にも屈せず、IBDPを修了し、大学受験に挑戦して、お二人とも、本当に本当におつかれさまでした!今は思う存分、羽を伸ばしてね。
来年、海外の大学受験にチャレンジするIBDP生の後輩たちへ、アドバイスをもらえますか?


IBDPを無事終えて卒業旅行へ。ドイツにて(1)

リク君:IBが世界一すぐれたカリキュラムだと言う人たちもいるけど、
僕はそれは幻想だと思っていて、勉強量は、日本の学生だって負けていないと思うんだ。IBDPが難しいのは、スケジュールに合わせて勉強をし続けなきゃいけないところだと思う。
例えばIBDPでイギリスの大学を受験する場合、1年間、継続的にPredicted gradeを取得してApplyすることになる。日本の大学受験と違って、最後の最後、試験で一発勝負、受かればOKというスタイルじゃないんだ。
スコアは日々の学習の蓄積で取得していくから、そのタイムマネジメントと優先順位の管理が難しい。
学校やカウンセラーが大学受験のためのタイムラインを提示してくれる環境なら、そのデッドラインを絶対に守ることだよ。自分でタイムラインを立てて、期限までにやるという事ができればいいけど、できない学生が本当にたくさんいるんだ。
学校が提示したタイムラインのデッドラインをまじめにしっかり守って勉強すれば、努力が無駄になることはない。

ノビー:Applyに必要な書類も、推薦文とか、学校側が発行してくれないと出せないものもあるものね。学校側が発行するのに一定の期間が必要になったりして、うっかりするとApplyのデッドラインに間に合わなくなったりしそうだけど、タイムライン通りにやっていけば、確実にApplyできるという事だね。

ノア君:あと、学校内でおこなう模擬試験があって、それには先生が
アドバイスとフィードバックをくれるから、そこでたくさんアドバイスとフィードバックを貰うことが大事だよ。
その指摘のポイントを改善できれば、きっと良いスコアが取れる。

ノビー:来年度、IBDPを取って大学受験する子たちは、かなり勉強量が増えそうだけど勉強の効率化のためのアドバイスは何かありますか?前回、まきさんのインタビューではエデュバル(IBDP生のための塾)についてもコメントがありました。

ノア君:IGCSEからDPへ進学すると、それこそ生物とか、覚える量がすごく増える。効率の良い勉強法というのは、生物でいえば「暗記方法」だけど、そのノウハウは確かに大事だね。

リク君:今は、それこそYou Tubeとか、学習の効率化のノウハウはネット上にもたくさん情報が出ているんだ。だから、調べようと思えば、いくらでも調べられる。エデュバルだけがノウハウのある場所というわけじゃないから、「絶対このスコアが取りたい」とモチベーション高めて、自分で調べて欲しいと思う。
そういう子は、絶対、志望校に合格できるよ!

ノビー:来年受験する子たちへのエール、ありがとうございます。
お二人も9月からは、大学という新しい環境で、また新しい挑戦がはじまりますね。
今日はたくさんお話ししてくれて、ありがとうございました!!

IBDPを無事終えて卒業旅行へ。ドイツにて(2)

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