山で眠る事について
山で眠る事について考えてみた。
山で眠る場合、大きくは以下の4つのシチュエーションがあると思う。
山小屋で眠る場合
テント場で眠る場合
避難小屋で眠る場合
野宿(テント泊)して眠る場合
山小屋やテント場などでは、近くに他人がいる場合が多い。特に山小屋の大部屋などでは、周りのいびきや足音・話し声が多かったりとストレス要因が多い。
まるで下界にいる時と同じような感覚、つまり「山にいるのに”山にいないような感覚”」が生じてしまう。
一方で野営のテント泊の場合は(ソロはなおさら)他人の生活音に悩まされることがないのでストレスは少ない。
ただし、野営の場合(特に雪山では)
「人間のいない環境への不安感」や「孤独感」がつきまとう。
ソロ野営の時の孤独感は、寝ている最中も自分を蝕むように襲う
・「熊に襲われても近くに人がいないから助けも呼べない。」
・「朝起きてホワイトアウトや大雨だったらどうしよう。」
・「今晩も翌朝も誰一人この山に入って来なかったら不安だ。」
・「寝ている間に雪が積もってトレースが消えて戻れなくなったらどうしよう。」
様々な不安が、眠りにつく前も眠りについた後も途中で目覚める度に襲ってくる。
それを忘れるように必死で眠ろうとする。そんな繰り返しで長い夜を一人戦う。
(冗談抜きに)自分の服の擦れる音が獣の足音に聞こえて怯える。
”何が楽しくて一人山に登り、夜な夜な不安を募らせるのか”
それは、正直まったくわからない。
ただ確実にわかることは、
・朝日が差した時の安堵感がすさまじいこと。
・世界が目覚める時、一緒になって自分も目覚めているような感覚になれること。
・世界一の静寂を、自分一人だけが手に入れているような感覚になれること。
この感動を味わってしまうと、長く一人辛い夜も乗り越えられる。
長いトンネルを抜けて見える光がそこにあるから
暗い夜を超えて眼の前に現れる景色があるから
苦しみが大きいほど、終わった後の安堵が大きい。
辛さが大きいほど、乗り越えた後の幸福感が大きい。
人生は長いけど、山の一夜は一瞬で過ぎる。
人生で大きな達成感や幸福感を感じることは日常そう多くはないけれど
こうして手軽に、自分の努力や忍耐が身を結んでいる感覚(それが自然の力によってもたらされた物だとしても)を味わえるのが、登山の魅力だと思う。
”朝” がこんなにも素敵な瞬間で
”自然” がこんなにも素敵なものだと知ったこと
これが山で眠ることで享受できた最大の恩恵です。
続く