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サマータイムはばかげている?

ご存知の通り、アメリカのほとんどの州・地域で、(1999年現在)11月の第一日曜日にサマータイム(Daylight Saving Time-DST)から通常(Standard Time)の時間に戻ったため、時計は一時間後にずれました。サマータイムが始まるのは3月の第二日曜日です。つまり、通常の時間は約4ヶ月、サマータイムは約8ヶ月、長さから言うとサマータイムが一年の約3分の2あり、こちらが「標準時間」といっても良いくらいです。

日本でもサマータイムを導入しよう、という意見があるそうですね。2020年の東京オリンピックに向けて導入したい意向があったようですが、この日程には無理があるということで今回は見送りになりました。日本では、オリンピックのためだけではなく、今後「低炭素社会をつくる一つのきっかけとして進めていきたい」という意向でサマータイムを推進する意見もあるそうです。(参考文献:「東京五輪のサマータイム、導入見送りへ 自民党が見通し」朝日新聞、2018年9月27 https://www.asahi.com/articles/ASL9W5DZDL9WUTFK04N.html )

アメリカでは、サマータイムはベンジャミン・フランクリンが提唱したと信じている人がたくさんいます。「ろうそく代の節約の為に、夏は日が長くなるので一時間早く起きよう。」と言ったという神話がありますが、実際にはニュージーランドの経済学者のジョージ・ハドソンが1895年に提唱し、ヨーロッパで始まりました。
(参考文献:”Did Ben Franklin invent daylight saving time?”, The Franklin Institute,
https://www.fi.edu/benjamin-franklin/daylight-savings-time

アメリカでは、サマータイムは第一次世界大戦中にはじまりましたが、戦争の終結と共にニューヨーク、シカゴなど一部の都市を除き廃止されました。

次に、第二次世界大戦時にサマータイムは全国的に導入されました。ただし、この時のサマータイムは「一年中のサマータイム」、つまり、一年中、標準時間から一時間時間が早まりました。ただ、この時点で州の判断によりサマータイムを導入しないこともできたため、鉄道・航空業界などで混乱が起きたそうです。

1966年には混乱を避けるため、アメリカは全国的なサマータイムの法律を制定しました。ただ、この時点ですら、州で法律を作った場合には、サマータイムを導入しなくて良かったため、サマータイムを行わない州がでてきました。

1986年には、4月の第一日曜日から10月の最後の日曜日までがサマータイム、と制定され、2007年には現在の3月の第二日曜日から11月の第一日曜日までに延長されました。(参考文献:Early Adoption and US Law, Daylight Saving Time
http://www.webexhibits.org/daylightsaving/e.html )

私がアメリカに来た1990年代は、イリノイ州の隣のインディアナ州ではサマータイムは採用されていませんでした。サマータイムの間には両州の間には時差はなし、ただ、冬になると1時間の時差があり、こちらの立場からすると逆に混乱したものでした。ただ、インディアナ州の中だけで暮らす方々からすると、酪農農家の方が「牛はサマータイムを理解できない。結局一年中同じ時間に搾乳、餌槍をする必要がある。」との理由でサマータイム導入に反対していたそうです。そのインディアナ州も2005年についにサマータイムを採用しました。今では、サマータイムを採用していないアメリカの州はアリゾナ州のほとんどの地域、ハワイ、米国バージンアイランドなどだけになりました。

トランプ大統領が「サマータイムはばかげている」と言ったといううわさもありますが、彼はアメリカでのサマータイム自体には反対はしていません。ただ「一年中サマータイムにすべきだ」、つまり、1年に2回、サマータイムと標準時間に時間を変えることに反対しています。事実、フロリダ州では昨年、一年中サマータイムにする、ということが決まりました。ただ、まだ実際に一年中のサマータイムが実行されている訳ではなく、今年(2019年)は11月の最初の日曜日から標準時間にもどりました。
(参考文献:「“Trump says move to make daylight saving time 'permanent is O.K. with me!'” by William Cummings, USA TODAY, March 11, 2019
https://www.usatoday.com/story/news/politics/onpolitics/2019/03/11/donald-trump-supports-making-daylight-saving-time-permanent/3130006002/

東京では7月の日の出は午前4時半頃、日の入りは午後7時頃、札幌では日の出は午前4時頃、日の入りは午後7時頃です。12月の東京の日の出は午前6時半頃、日の入りは午後4時半頃、札幌では日の出は午前7時頃、日の入りは午後4時頃です。
(参考文献:「各地のこよみ」国立天文台:https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/dni00.html )

同じく7月で、シカゴでは日の出は午前5時半頃、日の入りは8時半頃です。シカゴのあるイリノイ州は中西部時間の一番東側にあるのですが、東部時間の一番西にあるミシガン州のデトロイトでは、日の出は午前6時頃、日の入りは午後9時頃です。

12月のシカゴの日の出は午前7時頃、日の入りは午後4時半頃、デトロイトでは日の出は午前8時頃、日の入りは午後5時頃です。(参考文献:Chicago, Illinois, USA — Sunrise, Sunset, and Daylength, July 2019 https://www.timeanddate.com/sun/usa/chicago?month=7 )

一年に二回時間を変更するサマータイムでは混乱がおこる可能性もありますので、日本でも一層のこと「一年中サマータイム」の導入を検討するほうが現実的だと思います。一時間時間を繰り上げても、現在のシカゴの日の出、日の入りと時間はほぼ同じになると思います。
 
The Stellar Journal 2019年11月掲載
https://www.stellarrisk.com/ja/americasdaylightsavingtimeisnotsmart/?fbclid=IwY2xjawEvHvNleHRuA2FlbQIxMAABHQVdN3MFXdzaDBo3uRQj_RsXmYpYurlVLgBjm4CjSH05pk5pkoG2bLjT1A_aem_eCV-qdBZoBT-tR-8wPhs6Q

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