20歳の国『長い正月』(623字)
最近小説ばかりを読んでいたため、たまには戯曲を読まねばと思い、
昨年アゴラ劇場で拝見し損ねた20歳の国『長い正月』。『紙背』にも掲載されていたため買おうかとも迷いましたが、北海道戯曲賞でノミネートされ無料公開しているとのことなので、早速読みまして、
まず物語の構造が素晴らしく、特に『死』の出口という発明のような装置。何かしらのソースがあるのかしら、画期的。
これを上演で見られたなら、俳優がその出口に近づくだけでいつでもドラマチックに見せることができるし、戯曲を読んだだけでも、その出口に近づく登場人物にハラハラさせられ、結局別の人が行くのかとか、誰も出て行かないのかと、作家の手中で転がされているような感じ。
特筆して難しいと思った戯曲ではなくて、極めて明快な作品であり、
そういった戯曲って結構、劇的な展開までが長く、中だるみしやすい印象を持っていて、個人的に途中で飽きがくることが多いのだけれど、
『長い正月』は1年が数分に集約されていて、生死や事件、戦争、登場人物の転機がテンポ良く描かれているため、いつまでも劇の鮮度が保たれた状態で、ずっと新鮮に読み進められて、大変に面白かった。
100年を80分ほどでする作品なんて初めてで、それだけでも話題性があるしすごいことを考えるなと感じたのですが、よく考えられた劇構造に驚きました。そりゃ話題になるわと思いました。
今年の岸田にノミネートされてもおかしくないんじゃないかと思います。
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