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通り過ぎる人みんなが悩みなんてなさそうに見えて(581字)

 私を通り過ぎる人みんなが悩みなんてなさそうに見えており、私は自分の顔は果たして悩みがない人の顔をしているのかトイレの鏡で見てみると、悩みがありそうな顔を潜在的に演じていて嫌になり、月並みだが、私が遠隔地雷となって私を境に通り過ぎる全ての悩みがなさそうな人々全員爆発しろとか考えながら賄いのボンゴレビアンコを食べるんです。

 悩みの根源を考えてみると、箇条書きがだいぶむずいほど何かと複雑に絡み合っているようで、人体の神経の数ほど乱立して、その悩み1本1本が絡み合って1人の黒い人間を私の内部に作り上げていますわな。

 多分私からはるばると遠く離れた人には私の中にいるその黒い人間は見えなくて、近づいて近づいて行けば、その黒い人間が私であることに気がつくんです。

 でも私は人にあまり相談事をしないタイプの人間だし、あまり顔に出さないよう心がけている人ではあるから誰も私に気がつかない。気がつかせてはあげない。気がつかせてしまうと、悩みの神経はきっと緩むだろうけれど、その緩んだ弾みで私の自尊心を支柱にして形成された人格というものがグチュグチュと崩れ落ちるような気がするから、私はきっと誰にも言わない。言いたくても、言わない。

 でも、その神経をちゅるちゅると吸い上げてくれる人がどこかに現れないかとほんの少しの期待を忘れずに、私は賄いのボンゴレビアンコを食べるんです。


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ざぶとんととんとろ
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