【未完】一原作ファンによる劇団四季『ゴースト&レディ』の感想
劇団四季の『ゴースト&レディ』を観ていつの間にかどっぷりハマっていたので、まだ初見の時の驚きなどの感情も新鮮に残っているうちに書き留めておこうと思う。
↓ざっくり記事の前提となる書き手の情報。
※以下の長い前提を一言でまとめると漫画好きの観劇素人。
※少年漫画好き。基本はバトル絶対主義。強いは正義。ぶっ飛んでるキャラ大好き。
※藤田和日郎先生作品大好き。この先生の作品なら絶対熱くて泣けて時々めっちゃ怖くて、でも最後はハッピーエンドの物語が見られると分かってるから、ずっと作者買いしている。
最初に出会ったのは『からくりサーカス』。あまりにも凄まじすぎて読んでいる最中何度も泣いた。からくりサーカス大好き。自分が今まで読んだ漫画で一番好きな作品かも。その後、『うしおととら』→『月光条例』と読み進め、もっとこの先生の描かれた作品はないのか!? となったときに作者名で検索していて『黒博物館』シリーズを知る。
そこで『黒博物館スプリンガルド』『黒博物館ゴーストアンドレディ』を立て続けに読み、スプリンガルドも勿論素晴らしかったが、それこそ誰もが知るナイチンゲールをこんな風に描く!? こんな方向にキャラ立ちさせたナイチンゲールは見たことねぇ!!! と非常に感銘を受けドはまりする。
『双亡亭壊すべし』の連載が始まれば勿論読み始め、単行本が出るのを心待ちにし、見事な大団円を迎えたことに涙した。最近『黒博物館三日月よ、怪物と踊れ』を全巻揃えてやはり心打たれた……エルシィ、好きだ。
※観劇経験は子供の時には親によく連れて行ってもらったものの、大学生以降ほぼ0。観に行ったらなんでも楽しいだろうなぁとは思っていたものの、あえて観に行こうと思って行動するほどの強いきっかけがなかった。
劇団四季は「なんとなく凄いっぽい劇団」くらいのイメージだった。
※割と原作至上主義でメディア展開しても腰が重い性質。なので以下の感想も最初から最後まで全肯定というわけではないので読んでくれる方がいらっしゃるならご注意。
でも周りから「100%絶賛じゃないとか言って文句も言いまくってるくせに何度も観てるししょっちゅう話題にするし四季の会にも入ったって? ドハマりしてんじゃん」とツッコまれ、確かにこれはもはや大好きだな? 素直に認めよってなったので感想書くことに。
名古屋や大阪でも絶対観る。
以下、ネタバレありです。
なお、もしまだ漫画『黒博物館ゴーストアンドレディ』も劇団四季版『ゴースト&レディ』も、どちらも見ていないけれど気になるって人がいたら、個人的には『ゴースト&レディ』→『黒博物館ゴーストアンドレディ』の順で味わうことをお勧めしたい。
勿論『ゴースト&レディ』は素晴らしくて、しっかり飲み込まれていたんだけれど、原作を読み込みすぎているが故に私は初見の時どうしても「あ、○○の設定が違う」「え? ××がいない」「この台詞をこう変えるんだ」といった風に勝手に脳が答え合わせを始めてしまって、物語への没入をやや阻んだので。なので二回目の観劇の時が一番没頭できて泣けた。
さて感想。
ボブーーーーーー!!
ソワイエーーーーーーー!!
アンーーーーーーーーーーーー(最愛)!!
私は、お前たちの活躍も、観たかった……(泣) いやほんと原作ファンで全部絶賛というのも逆に嘘っぽいと思うので最初にこれだけは叫んでおきます。けど不満というよりは、このクオリティーだからこそ、原作の彼らも描いてほしかった……的な欲望です。いやボブは出るこた出るんですが。
まず劇場について驚いたのは、角度。一回目の観劇は二階だったんですよ。そしたら座席配置の角度がえげつない。超鋭角。その時点で高所恐怖症のケがある自分は若干お腹がひゅっとなった。
けどそのおかげで二階からも舞台がめちゃくちゃクッキリ綺麗に見えて驚いた。前に人が座っても全然余裕。全然舞台が隠れない。専用劇場ってこんな感じなんだ~と地元の多目的ホールと思わず比べたりした。
緞帳が高級感あって美しく、双眼鏡の調整も兼ねてつい長いこと眺めてしまった。
いよいよ始まりの合図。映画とかもそうだけど、こう暗くなっていく瞬間ってわくわくする。
で、いきなりの大きな音。正直声出るかと思った。周りに迷惑にならないようにおとなしく見るぞと思ってたのに身体ビクッとなってたと思うごめん。
え、てかこんなに不意打ちで大きな音鳴るのに注意書きとかないの? と若干思ったり。舞台観劇に慣れている人々にとってはあれくらいは普通なのかもしれないけれど、正直あれはちょっと注意書きというか「劇の冒頭および最中に大きな音が鳴ります。予めご了承ください」くらいの注意喚起あった方が親切だと思う、ネタバレになるとしても心の準備大事。舞台の最中も結構リアルなピストルの音とかするし。
と、いきなり若干の不平で申し訳なかったけれど、そこからのゴーストランプの登場、幻想的な音楽、ボォォッと炎が浮かび上がり、人魂?が移動していく演出は本当に素晴らしかった。一気に心掴まれたし、そこからヒュッとその人魂らしき炎が落ちたかと思うとパッと照明が当たってグレイが浮かび上がった時には「急にグレイが現れた!?」と驚いた。いつの間にそこに立ってたの? ってなった。この時点で今どきの舞台ってこんなに光と闇と音を効果的に使うものなの? え、凄くね? とクオリティーの高さにじわじわ慄く。
そして歌うグレイ。「いきなり歌い出したーーー!???」と内心度肝抜かれたくらいには、劇団四季がミュージカル集団だという知識がありませんでした。すみません。
けどその声があまりにも柔らかくって美しくってすっかり聴き入ってしまった。
この曲に限らないんだけど、劇場で音楽や歌を聴くと本当に音って振動なんだなって実感するね。これは映像とかでは味わえない感覚。身体全体が音に包まれて、ついでに物理的にも振動がガンガン響いて肌がビリビリする。あと特定の音になるとより何かの波長が合うのか、鳥肌がゾワワワワッ……と立っていって凄かった。あの感覚たまらん。腕とかだけでなく、太ももあたりもザワワワワッてなっていくのが分かった。
いや、凄かった。そしてさっそくの芝居の台詞。これは嬉しかったなぁ。
で、「グレイが客席に向かって話しかけてきた!?」というのでもう一つびっくり。そういう系? メタ的な? 「見えてんなら――」で拍手促すのが面白すぎた。
ここでキュレーターさん居ないのね!? と気づく。あの、めちゃくちゃ聞き上手で素直で感情あけっぴろげに見えて自分のことはなーんにも教えてくれないミステリアスの塊のキュレーターさんが!! 居ない!!! そういえばタイトルから『黒博物館』が外れてたんだったと今更思い出す。
いやね、せっかくなので出来るだけまっさらな状態で見たくて、あらゆるネタバレから目をそらしてたんですよ。公式サイトのキャラ紹介すら見なかった。だから誰が出て誰が出ないのかも分かってなかった。
キュレーターさんがいない寂しさはしかし「芝居に仕立てた」というグレイの台詞兼歌で吹っ飛ぶ。
そういう!? そういう建付け!? なるほどね!?
原作を改変して無理矢理偽物の『黒博物館ゴーストアンドレディ』を演るのではなく、あくまでグレイが――歌と踊りのある喜歌劇好きのグレイが! 自分の知る物語を芝居として描き下ろしたと。これは上手いなぁと感心した(今更ですが上から目線で申し訳ない)。
これなら黒博物館やキュレーターが登場しなくても、今後筋書きが多少違おうとも仕方ない。だってこれは『黒博物館ゴーストアンドレディ』の舞台化ではなく、あくまでグレイが仕立てた『ゴースト&レディ』なんだから。という心構えで観られる。
原作改変が割と苦手なタイプな自分がこの舞台を楽しめたのはこの建付けも大きな理由の一つだった。
「新作の初日だぁ!!!」からの一気に華やかな舞台が登場するの、最高だった。そんで舞台のセットが二階建てなことに地味に驚く。あれくらいの半端な高さが一番怖いんだよなぁとまた若干高所恐怖症の自分がちらっと顔を出す。
そしてフロー登場。この時点でまた「あれ? 生霊は?」と疑問がよぎる。舞台を見ている人々は《静か》だと評するグレイやその理由が好きだったもので。
正直に言ってしまうと、最初の時この辺のフローの設定変更はだいぶ戸惑った。
もう看護師やってんのかい!! って思ったし、それで籠の中の鳥とか言われてもなとか看護師は今やらせてもらえてるけど戦場に行くことは家族に反対されていますとかそんなの家族としては危険だって言って止めるの当たり前に見えちゃうじゃん!?(原作の両親のあのえぐさが薄れてしまう)的な感想が最初に浮かぶ。原作のフローがもっと徹底的に追い詰められ自らの生霊に魂を傷つけられてボロボロだっただけに。
あとクリスチャンは自殺できないは原作でもあったものの、「誰かに人殺しの罪を負わせることはできないけど、あなたなら殺しを仕事にしてたらしいしいいでしょ」的な理屈も、え、失礼じゃね!? フローはそんなこと言わない! みたいに思ってしまって、原作フローより甘ちゃん度が増してるなぁと。初っ端の「どうかお願い 私を殺して」の歌声が本当に切羽詰まっている感が出ていて素晴らしかっただけにややチグハグ感を覚えてしまった。
フローが看護の道を見出した理由の改変もあまり好きではなかった。子供が死んだという方が物語としてインパクトがあるから? いやでも《貧乏故に手当も受けられず薬もなく死んだ》だと看護じゃなくて社会福祉とかそっちに目覚めそうなもんじゃない? 原作のように素人ながらに苦しみ喘ぐ人々の看護を必死にやっているうちに「これだ」とやりたいことができた、という流れの方が自然に見えた。
ただここの舞台上の演出? セットの使い方? は好きだったし感心した。劇場の椅子を滑らせると小さなお墓が登場するのはスムーズでびっくり。あと他の椅子にお墓を投影して最小限の変化で劇場から墓場へと変えてしまう。たしかに椅子の丸みを帯びた四角形って墓石の形と似てる! すごい!
あとお母さん役の人の演技。これは別の回で、一階前方の上手に座ってたから見れたんだけど、泣いてる顔じゃなくて無表情だったの。それが泣き真似よりもよほど強い悲しみが伝わってきて、凄かった。
でもフローが看護を志したきっかけはともかく「涙があふれて」以降の伸びやかで透明感ある歌声は綺麗で素敵だった。
この段階で原作フローの病んで切羽詰まってる感は自分の中で完全に消えて、四季版フローは根底から別人だなと理解した。病んでるというよりは健気なお嬢さん。幼少期から生霊が互いを執拗に攻撃しあっている醜い光景を見続け家族にも気味悪がられてたっていう根幹となる設定が無いんだから別人になるのは当然だよねとこの点は一人で納得。
フローが名乗ると同時に効果音鳴る演出好きだったな。名前が引き立つ。正直初見の人にはこれがナイチンゲールの話だということすら知らないまま見て、この名乗りの瞬間に「これナイチンゲールなの!? あの!?」と驚いてほしい。漫画を読んだときに私がそうなったように。
そして馬車のシーン。これもまた舞台装置のスムーズな転換にびっくり。初見の時、まだこの瞬間には生霊とかフローの設定変更の不満を引きずっていて、使用人の目の前でグレイと話すシーンがないっぽいこともちょっと残念に思っていたんだけど、そこから急に始まったグレイの俺凄い物語で一気に印象が変わった。
これはまったく、原作にはないシーン。いきなりホラー&コミカルな音楽が始まってびっくりした笑 でも舞台だからかな、本当に自然でしっくりきて、めちゃくちゃ楽しいし面白いし、原作にはない故に歌の展開が全く分からなくて夢中で見入ったし聴き入った。この舞台の中で一番この曲が好きかもしれない。次点が『限りなき感謝を』。
てか結構ゴーストのメイク、怖くない……? ちっちゃい子泣いちゃう。クオリティー高いよ。
あと音の厚みよ。あれだけの人数であんな声が出るの。本当に、この曲すごく好きだった。このシーンのおかげで舞台に入り込めた。グレイのゴースト感の演出も多彩。壁抜けに空中浮遊も今の舞台ならお手のものなんだなぁ。いや凄かった。周りが拍手したので安心して自分も盛大に拍手を送った。この辺も分からないのよ観劇素人は。なのでいい感じのタイミングで拍手したり最後カーテンコール?の時に立ったりしてくれる人々がいるととても助かる。
フローの家族登場。生霊がないのともう看護師やってるのとで両親の攻撃力も半減。原作の母ちゃんの「ケーキはいかが?」からの(フローが丁重に今は不要と断ってからの)「私たち家族の大切な団欒のひと時などあなたにとってどうでもいいのですねフロー」のキレッキレの嫌味包丁の鋭さを見てくれよ。漫画初見の時は言葉遣いが丁寧なだけに震えあがったよ。けどこの後の「まだ許していないのに何故」とぶつくさ言いながらシーツ縫いを手伝ってくれるお母さまのシーン大好き。これも漫画限定なのが惜しいくらい。
からのアレックス誰―――――!? 婚約者……婚約者!? しかもフローにサムシングフォーを贈ろうとしてる!? それはグレイの役目でしょうが!!? と若干混乱しつつ、漫画でも大事な大事なサムシングフォーの歌の旋律の美しさに聞き惚れる。この作曲天才的では!?
フローの返答の瞬間、グレイ以外が固まる。この演出技法なんて言うんだっけストップモーション? 合ってる? この作品の中では時々これが使われるんだけど、めちゃくちゃよかったな。
漫画とかアニメってほんのわずかな時間で登場人物が沢山独白するようなシーンあるじゃん。あれが三次元で再現されてる!! て感じでテンション上がった。これの間キャストの人たちはピタッと固まっとかなきゃいけないからしんどいはずなのに、あえて手を振り上げたポーズで固まってる人を必ずと言っていいほど入れてるのは自信を感じた。
あと演出と言えばグレイが部屋に入ってくるシーン! あれも凄かった。初見が二階だからかよく見えたんだけど、照明? 映像の投影? のおかげで本当に幽霊が出てきた感あった。あのゆらゆらした感じの映像なんて言うんだろ。グレイが時々人物たちに息を吹きかけて寒がらせるシーンの照明も好き。てかグレイ人で結構遊んでるな笑 好き笑
プロポーズを断られたアレックスが健気にも冷静さを装って退場して、家族たちがいよいよヒートアップするシーン。ここの歌も面白かった。「患者たちと寝るあばずれ」って歌詞が出てきたときはちょっと驚いたな。四季にはなんとなくディズニー作品をやってるからか、そういう性的な表現はNGなのかと勝手に思い込んでたみたい。
で、曲の盛り上がりと共に影がぐああああっと形を変えていくのを見て、めっちゃいい!! と興奮した。あれ、生霊ないと思ったけどやっぱある!? と思ったりもした。いや正直、ラストも含め生霊をどう表現するんだろうとワクワクしてたもので(実際生霊設定はやっぱりカットされてたけど)。
グレイが魂を切り伏せていくところ、家族が力を失っていくところ、よかったなぁ。
でも決闘の口上がないの驚いたし残念だった……!!! あれめっっっっっちゃ格好いいのに!!! グレイの攻撃のターンの度にやるのは流石に尺的にも無理だと思うけど、この最初と、最後のデオンへ決闘を申し込むシーンだけは口上述べてほしかった……!! 四季の俳優さんなら絶対格好良く演ってくれるでしょ! と今はグレイをお二人とも拝見した私は思います。
そんで生霊攻撃じゃなくて魂を麻痺させたっていう方向で設定変更したんだなるほど。からのクリミアに行けることになりました、からの「でももし失敗したら~」と言い出すフローにはやはり原作より甘ちゃん度が増してるな、と再び感じる。いや原作フローも戦場はけして楽しい場所じゃない、絶望するかもというような認識を持ってるんだけど自分から、始める前からでもでもと言い出すのはなぁ、と思いつつ、次の曲。
ここからがまた良かったなぁ。それまでとは違うタイプの曲で、それこそ盛り上がった。グレイの心情もいい感じに織り込まれていて見事だった。あとここからの「死ぬ気でやれば~」以降のフローは好き。これまで散々文句言ってごめん。
てかここの振り付け、セクシーでは??? 身体を重ねて腰を振るの、四季的にありなんだ!? とまた勝手に四季に全年齢向けのイメージを持っていた自分が驚く。
最後の声の重ね、格好良かったなぁ。
ラッセルキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
グレイがラッセルを紹介する流れめっちゃ好き。狂言回しの役がグレイからラッセルに半分交代した感じ。ラッセルは原作でもとても好きなキャラ。原作のおっちゃん感は少し抜けて舞台版は溌溂としてたけどどっちも好きだな。
市井の人々の畳みかけも良かった。ミュージカルになるとこうなるのかぁ! やっぱり人数いると歌は盛り上がるよねぇ。新聞を使った振り付けも好き。
『走る雲を追いかけて』。繰り返し出てくるこの曲。これめっちゃ好き……あと看護師の女たちが力強くてすごくいい。この先の出番も含めて看護師たち本当に好き。
帆に見立てた(だったよね? 記憶が若干薄れてる)地図に旅路が光で示されるの分かりやすいし冒険感があってとても良かった。
桟橋? のセットと共に出てくるグレイに笑った。可愛い。「主役はおれだよな!?」のコミカル感も良い。藤田先生作品にはこういう全力で喚いたり突っ込んだり別のキャラに詰め寄ったりするキャラが出てくることが多いけど(そしてその時は画風も思いっきりコミカルに寄る)、三次元にしても意外と相性良いんだなぁとまた一つ驚き。
で、アレックスに続くオリジナルキャラエイミー登場。でもその時は単にネームドモブが出てきたくらいの印象だった正直。これは私が登場人物を把握していなかったからっていうのもあるけど、そもそもハーバード戦時大臣の(義理の)姪ってこと、伝わりづらくない? 地味に大事な情報だと思うんだけど。
フロー達のように看護師でもなければシスターでもない(即ち十中八九看護未経験の)超が付くほどのお嬢様が志願してきたって凄いことだと思うし、「ハーバード戦時大臣の身内の娘まで行ったらしいぞ!?」などと政治的にもめちゃくちゃ大きな意味を持つと思うのに。ある意味フロー以上の覚悟と度胸では、このお嬢さん……ってことが伝わっていない気がする!!!
そしていよいよ舞台はクリミアへ。医官たちのキビキビとした動き、たった四人とは思えない声量、凄いな。出てくるたびに舞台が締まった。そして熱狂的な大歓迎笑
ここでもまたピタッと時が止まる演出が。コブシ振り上げたまま固まってる人大変そう。
グレイの台詞好きだ~チョイスも見事。これ持ってくるか~~~!!!って感じ。
そこからの「まぁ~~~~~~~~!!」は笑っていいやつか? いいやつだな! 原作フローの「あら これは~」の半眼になってジットリと医官たちに詰め寄るシーンが好きなんだけど、舞台版のこれも楽しかった。流石にここまでくればフローに関しては原作が~みたいなちらつきはほぼ無くなった。
あとここの看護師たち、察しが良くて好き。速攻で食べ物引っ掴んで、フローと一緒に男たちに詰め寄っていく。あとかなり舞台のきわっきわまで勢いよく突っ込んでいくから驚いたけど、あんなものなの!? 舞台から落ちちゃったりしないんだろうかとハラハラした笑
ピカピカの軍服に身を包んだ兵隊さんたちが次々と打たれ傷病兵へと姿を変えていくシーン凄かった。早着替え的な。なおここも割と音が大きくて最初の発砲音の時はビビった。二発目以降は慣れたから平気だったけど。
病院の悲痛さは原作のが凄かったな。でもあえて原作の悲壮さ、惨さを薄めてるのかな? とも思った。舞台だから。
「貴方は天使ですか?」「いいえ看護師ですよ」からの「俺はゴースト」はズルいでしょ不意打ち食らったわ!!!笑 なにこのグレイめっちゃお茶目。このシーンよく思いついたなって感じだ大好き!! 舞台の雰囲気にもあってたしすごく良い追加シーン。
歌と共に看護を開始していく流れ、ラッセルの記事も相まって軽快でとても良いのだけれどここで「食事も容体に合わせて用意されるようになった」の台詞が出たことで「!!!????? ソワイエは!!!????」と地味に衝撃を受ける。後半の重要人物だと思っていたので……そして繰り返しになるけれどあえて舞台版については前情報入れずに観に来ていたので。ソワイエが登場して大きめのコマでババン!! と決めてるシーンとか舞台映えするだろうなと思ってたんですよ。あと個人的に好きなキャラなので。原作版のさ、終盤のボブやラッセルとのやりとりがいいんですよ……。でもそっか、これは登場しないパターンね。OK。
あと医官たち割ともうほだされてるな? こんなド直球に「助かるな」と言ってくるとは思わなかった。なるほどこいつらとの確執は早めに済ませて、ホールの悪役感を引き立てる感じか? などと思った気がする。
あ、てか看護師の一人端っこでちゃっかりスキットルからお酒飲んでたよね? これはアンなのか? それともアンのフレーバー要素? 原作フローが看護師になって最初の舞台である婦人病院での話、ミュージカルで尺上カットされた(あるいはクリミアと統合された)のは理解できるんですが、個人的にめちゃくちゃ好きなんですよ。
特に看護師のアンが印象深くて。アンは初めは酒かっくらって言葉遣いや態度も乱暴な、それこそフローの家族達がイメージしていた看護師のような姿を見せるものの、本当は彼女も患者に優しく手厚い看護をしてあげたいけど環境が劣悪すぎて余裕が無くて後ろめたさから却って酒に逃げたり患者に冷たく当たったりしてしまってただけだったんですよ。フローがその実家の太さをフル活用して環境を改善した時、アンが「これで患者のスープも溢さず運んであげられる」と涙を浮かべる、そのシーンが何度読んでも泣けて。
現実でもこういうこと、いっぱいあるよなと。本当に心の底からの悪人ってそこまで多くなくて、ゆとりがありさえすれば人に優しくしたり仕事に丁寧に取り組んだりできるよねっていう意味でもすごく好きなエピソードなんですよね。なのでカットには納得する気持ちと観たかったなーという気持ちが両方ある。
クリスマスのシーンも完全オリジナルだけど賑やかで色々見ごたえがあってよかったなぁ。あとダンスがっつりだね!? こんなに激しくダンス踊れるの!? すごい!! となった記憶。
で、また周りが止まって、グレイとフローのシーン。
え、何この空気。え、このグレイとフローは割とがっつり恋愛な感じ!? とここでまた驚く。
いや正直自分はこの二人のことをそこまで《男》と《女》って目線で見てなかったんですよ。ないとは言わないというか原作でもちゃんとあるんですけどね。ボブが割と直球でフローに訊ねたりするし。でもそれ以上に人と人としての奇妙な相棒? いや相棒だとニュアンスが違うな。協力者(あるいは悲劇を作り出すという設定に則り共演者)だな。
とりあえず《恋愛ではない》関係のイメージのが強くて。確かに原作フローは割とグレイを意識して可愛らしい乙女な顔を見せることもあるんですがそれ以上に人として信頼してるって感じだし、グレイなんかはもっとそう。ボブが目撃し、最後にフローが「その顔でボブさんの前で笑いましたね?」なんて言ったグレイの笑顔も、あれはフローへの愛しさではあるものの、恋を完全に飛び越えちゃった《愛》のそれに見えたので、あんまりグレイが恋愛的な感情を抱いている印象はなかった。
とはいえ大概原作のアニメ化とかドラマ化とかで恋愛要素マシマシにされたら本気で嫌なんですが、なんでだろう、この作品はあまり嫌じゃなかったな。
舞台のクオリティーの高さと、劇場の空気に飲まれてたのが大きかったかも。ひょっとしたら初見が映像で気の散りやすい自宅とかだったら嫌さの方が上回ってたかもしれない。いや舞台で、あとインタビューの内容とかも何も知らずに観ていてよかった。
あとここの二人のダンスの振り付けって『黒博物館三日月よ、怪物と踊れ』の一番大事な舞台でヴィクトリア女王が踊っていたあれ!? あれのオマージュだとすれば個人的にはとても嬉しい。原作へのリスペクトを感じる。
ここ生者と死者だから、触れ合えないんだよね。踊っている瞬間は、二人はまだそれに切なさを覚えているような素振りは出していないように見えるけども。てかグレイは何を思ってここで踊りを誘ったの。フローの視線も相まってここかなり、わぁ……意味深なシーンだ。その後ハッとしたように離れる二人と周りの音と時間が戻ってくるところ、映画みたいで好き。
それにグレイとフローが二人ともこういう《気取った》ダンスを踊れる教養があるってのが分かるのも良いよね。原作でもフローが舞踏会で上手く役割をこなしているシーンは出てくるし、グレイことジャックも一時はそこそこのお家で後継ぎと一緒に育てられてた訳だし(しかしその顛末はご存じの通り)。
ホール登場。早っっっっっ!!!???? とはなったよね原作既読組としては。え、もう出てきちゃうの? 対面しちゃって良いの? 最後まで引き伸ばさなくて良いの? えーーー??? と困惑は困惑。対面したら物語一段落ついちゃわない? と。
キーボード打つ手が全く止まらずスムーズにかけているけど、書くことありすぎて終わる気がしない……まだ半分も行ってないよどうしよう。ちまちま書いていこ。