横道世之介の感想。
怒りに続いて吉田修一さんの作品です。実は苦手な何気ない日常を描いた人間模様系の小説家ですが、やはりこの著書は凄いです。横道世之介の人柄がどんどん伝わってきて、いつの間に彼を応援していました。感動作です。
あらすじ
1987年、長崎から上京した横道世之介は、東京の大学に入学します。のんびりした性格で、どこか抜けている世之介は、誰にでも愛される人物ですが、特別な野心や目標を持たず、日々を無邪気に過ごしています。
大学生活を通じて、世之介は個性豊かな人々と出会います。お嬢様育ちの彼女・与謝野祥子、陽気な友人・倉持一平、クラブ活動で知り合った人々など、彼らとの関係が世之介の生活を彩っていきます。中でも、祥子との純粋でほのぼのとした恋愛が物語の大きな軸となっています。
物語は基本的に過去の世之介の出来事を振り返る形で進み、現在の登場人物たちが世之介との思い出を語る場面も多く登場します。世之介の一見平凡ながらも人の心を和ませる生き方は、彼と関わった人々の人生に少なからず影響を与えていました。
物語の終盤では、世之介が思わぬ形で命を落としてしまったことが明かされます。彼の存在は過去のものとなりながらも、彼と触れ合った人々の記憶には鮮明に残り、彼らの心に温かい灯をともす存在として描かれています。
映画版
本作は2013年に映画化され、高良健吾が横道世之介を、吉高由里子が与謝野祥子を演じました。映画では、世之介の温かい人柄や、彼が周囲に与える影響が丁寧に描かれ、原作の持つ魅力を忠実に再現しています。
『横道世之介』は、何気ない日常の中にある温かさや人と人とのつながりを描いた作品として、多くの読者や視聴者に愛されています。