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世界の観測者になる 誠実な心理描写とは

みなさんを創作沼に引きずり込むべく、すでに創作を楽しんでいる、いわば楽園の住人たちにインタビューをするこの企画「エデンの住人たち」。
インタビューは創作初心者のマシュマロ見習いが行っています。

今回はづさん(@battousaru))にお話をうかがいました! エデンの住人たちを最初から読みたい方はこちらから

基本情報

Twitter:づ(@battousaru

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本文:pomeraWord文字数メモ
ネタ:手帳、iPhoneのメモ

創作のきっかけ

ーーまず、創作のきっかけを教えていただけますか?

づさん(以下敬称略): 創作のきっかけは、小さい頃のごっこ遊びがすごく大きなものとして関わっているんじゃないかな、と思っています。

私は一人っ子だったこともあり、家の中で一人で時間を過ごすことが多く、色々な人間になりきって会話をするのが好きでした。また、私は自分自身と会話をするのが好きだったので、そのうち自分の頭の中に他人を登場させてお話をすることの楽しさに気が付き、そこが私の創作の始まりだと思います。

それに加えて、文字そのものが大好きで、本から食事中のドレッシングの成分表に至るまで、日常生活常に文字を読んでいたかったので、必然的に活字で物語を表す方向に行きました。

ーー幼い頃から、他人の気持ちや心中を考えることをされていたのですね。現在のようにインターネットに公開するようになったのはどうしてですか?

づ: インターネットにアップするきっかけは、今まで全く知らなかったTwitterを高校生になって始め、『ネットに作品を投稿する』ということそのものを知った事が大きいです。

インターネットへの公開のきっかけ

まず私はそこで今までやってきた一次創作以外に、二次創作というものを知りました(そもそも一次二次という言葉すら知らなかったです)。

それから、フォローしている方々の真似事で、拙いながらも、まずは小説ではなくイラスト(イラストを描くのも小説とはまた別として好きだったので)を投稿してみようと思い、そこで有難いことに好意的な反応をいただけて、そこからはとんとん拍子に投稿の楽しさにハマって行きました。

最終的に一次創作小説を投稿するきっかけとなったのは、とある相互さんに私の一次創作小説を読んで頂き、とても嬉しい感想を頂いたことです(感謝してもしきれません…!!)。

ーーインターネット上に作品をアップするようになって嬉しかった経験や嫌な思いをした経験はありますか?

づ: アップしてよかったと思うことは、さまざまな方に自分の作品を読んで頂けて、嬉しい感想やアドバイスを貰えたことです。

まさかこんなに長い文章を読んで頂けたうえに感想を頂けるなんて思ってもみなかったので、反応を頂くたびに感動しています。
また、それがモチベーションにも繋がり、いつも中途半端なままで終わってしまっていた数の方が多かったのに、今では書き始めたら高い確率で完成させることができるようになりました。

逆にアップしなければよかったと思うことはないですね……。貢献できなくて申し訳ないです。

ーー嫌な思いをしたことが無いというのは、これから作品をアップしたいと思ってる方の背中を強く押しそうです! 作品を完成させられる割合というのはどう変化したのでしょうか?

完成できる作品とできない作品の違いは解像度

づ: 大雑把にいうと、思いついて書き出しまで書いた中で、完成させられる作品は三分のニぐらいですね……。
これでも以前は一割も完成させられていなかったので、成長した方じゃないかなってポジティブに捉えてます。

ーーとても大きな変化ですね! 他の人からのメッセージがもつ力の強さを感じます。
完成させられる作品と、させられない作品の違いはどこにありますか?

づ: 大きな違いは、今まで自分でも考えたことがないキャラクターと世界の特徴を掴めるかどうかと、途中の展開がまだわからなくても、物語の着地点がわかっているかどうかだと思います。

完成までいけない作品は、「これどこかで見たことあるな…」というチープな台詞だったりキャラだったりに自分が飽きてしまい、また、どうしても書きながらその世界に入り込めず、キャラクターの人格が掴めなかったりで、どこか浮きがちなものになってしまい、終わりも見えないので完成させられないことが多いです。

一方、そのオリジナルの世界観での常識やキャラクターの情緒を上手く読み取ったり、終わりを定めることによって、じゃあ過去の描写や仲間とのシーンを増やしてみよう、と、より書いていて自分が楽しめる要素も追加できるものが完成させることのできる作品だと思います。

ーー作品への解像度が高いとモチベーションが保てる上、着地点がわかっていることで場面の追加も行うことができるのですね。

づ: そうですね。着地点はすごく重要だと思います。感覚としては、旅行で何度か行ったことのある土地で、目的地を決めて駅を出発するようなイメージです。

はっきりとルートはわからなくても、なんとなくここを進んでいけばいいんだなーとぼんやりでもわかるとやり易いし、目的地が決まっているのでモチベーションも維持できます。

ーー普段はどのような手順で小説を書いていらっしゃいますか?

小説の書き方

づ: 小説の書き方は、大きく言うと、

①自分が書きたいシーンを書く
②書けるところまで書く
③最初から読み直してみて、結末が見えたら、好きなように書きながらも、キャラクターの性格を鑑みて話の辻褄を合わせていく(ここで整合性をとる)

と言った感じです。
①の書きたいシーンというのは、明確にキャラクターが決まっているわけではなく、△△な人が〇〇をしているシーンが書きたい、とか、××な景色を書きたい、というようなものです。

例: 「普段はおとなしい子が、自信満々に告白をするシーンが書きたい」「高校生三人が、夕方、田んぼの畦道をじゃれ合いながら帰るシーンが書きたい」

この時点でまだキャラクターの性格や名前、性別ははっきり決まっていないので、そこで自然と生まれる会話や人間関係を読み取り、形にしていきます
自分で一から作っているという感覚よりも、もとより私が生きている世界とはまた別の世界があり、その世界の観測者でいたいという気持ちが大きいです。

また、自分が楽しく書くのが一番だと思っているので、途中で長い期間筆が乗らないな、と思ったら距離を置くこともあります。ただ、距離を置いてまた書こうと思い、完成させられることもあれば、無理にでもパソコンの前に座って書いているうちに、だんだんまた調子づいてきて、一気に完成まで持ち込めることもあり、それはその時その時で変わったりもします。

ーー確かにづさんの創作方法だと、最大限楽しみながら作品を書くことができそうです!
キャラクターの読み取りはどのように行っていますか?

キャラクターの読み取り

づ: 書きながらキャラクターの性格と一緒に、詳しい外観を決めます。そうすると、動いている画が想像しやすく、また、着ている服や表情などによって本人の性格や職業、果ては時代背景までも推測でき、より自然な動きやそこから生まれるストーリーを書き取ることができています。

キャラクターも、書く前に主人公(と、もう一人くらい)はふわっとした性格を一応、決めはしますが、ストーリーと同じく殆どの部分は書きながら読み取っています。

また、自分の直感で書く最初の一言や行動が主な性格や特徴の基盤になっていくことが多いです。そこから生まれた登場人物たちの会話や人間関係から、じゃあ過去にこんなことがあったんだろうな、この人とはこれからどうなっていくんだろう、と話を広げていく感じです。

服装や髪型などの外見は、大体キャラクターが登場するときにその外観も描写するのがほとんどなので、最初の登場シーンからそのイメージが自分の中に浮かんでいればそこから性格を、浮かんでいなければひとまず性格から読み取る、と順序はバラバラですが、やっぱり書きながら全て決めていく、というやり方ですね。

あと、これは一人でないとできないことですが、それこそごっこ遊びのように、そのキャラクターたちになりきって一人芝居をすることです。わざわざよしやるぞ! と思うのではなく、家の中を移動しているときなど、日常生活の様々な時にふと会話のきっかけを思いついて、一人でぶつぶつと呟いている感じです(側から見ればヤバい人になってしまうのであくまでも一人のとき!!のつもりです)。

ーー服も重要なのですね。確かに服が持っている情報は大きいかも……。そういった服のインスピレーションはどこから受けているのですか?

づ: 基本的には自分に今ある知識で作り出すことが多いですが、服のカタログや、お気に入りのアパレルショップのサイトをブックマークしておいて、それを参照することもあります。

もともと自分の服を買う時にも、自分の好きな漫画のキャラクターだったらこういう服装をしていそうだな、とイメージすることが多かったので、その逆をいってます。

ただ、それが要らない偏見や決めつけに繋がってしまわないようにだけ気をつけています(極端ですが、スカートだから女!とか……ただ、”そういう“キャラクターと位置付けるのもありだとは思います)。
また、服だけじゃなく、髪型や髪色でも結構印象は変わるので、そこから考えるという楽しみもあります。

ーー詳しく聞くとなおさら重要性に気付かされますね。
先ほど一人芝居のお話がでましたが、書いているのは基本的に一人称の小説ですか?

づ: はい、一人称が主です。ただ、一人芝居をするのは、書いた台詞を実際に口に出してみたり、自然と口に出していた言葉をそのまま書いたりすることで、より日常感やリアリティの感じられる台詞を書く、という目的もあります。

一人称小説は、特定の登場人物の目線からその人物の主観を交えて状況説明などが行われていくものだと認識していますが、私は、それによって、より感情がダイレクトに伝わり、臨場感が生まれると感じています。

また、ミステリーを書く時などに、読者の視線が一つに絞られている分、所謂叙述トリックなどの主人公と一緒に読者が驚くことのできる仕掛けがすごくやりやすいんです。書いている私本人も「え?!」って一緒に驚きながら進めていけたりもするので楽しいんですよね…。

ーーなるほど、一人芝居はリアリティーを強化するためでもあったのですね。一人称の強みはづさんの作風にも影響を与えていますか?

づさんの作風

作風については、一人称小説を主に書いていることもあり、そして自分が書く上で気をつけていることでもあるので、登場人物の気持ちがダイレクトに伝わる、いい意味でも悪い意味でもわかりやすいものなっているんじゃないかな、と思います。

ただ、それがあまりに単純すぎて、深みを持たせたり、キャラクターの魅力を上手く引き出せないところもあるので、そこは自分なりの課題です。

ーー登場人物の心理描写について気をつけていることがあれば教えていただきたいです。

心理描写へのこだわり

づ: 登場人物たちの人間性にきちんと一貫性を持たせる、という、基本的なことですが、それを出来るだけ心がけるようにしています。

例えば、そのために私は、何か一つ、その登場人物が「とても怖い・嫌いと思うもの」と「絶対にこれだけはしないでおきたいこと」を決めるようにしています

何かが好きであることの理由やきっかけがはっきりしないことは割と多かったりしますが、何かを嫌いと思うきっかけははっきりと覚えていたり、「した方は覚えていないがされた方はいつまでも覚えている」と言うように、マイナスな事象が引き起こすエネルギーはとても大きいと考えているので。

だから、そこには恨みやライバル心などの強い感情が存在し、それにより読者の知らない過去や人物同士の繋がりが浮き出て、登場人物たちの存在がよりはっきりするように感じています。

また、登場人物たちも人間なので、突如理屈に合わない、辻褄の合わない行動をすることも勿論ありえます。それを物語を書く時にわざと想定せず、自分で「この先はこうしよう」と思ったときにその途中や直前で、そういう気紛れや心変わりで敢えてその伏線を潰したり思いもかけない行動を起こさせたりをしています。

純粋に私がとても楽しいというのもありますが、その中でもその一貫性を失わせずにいると、そういう突飛な行動をさせることによって逆に、物語に説得力を持たせることができるのではないかと。

ーー確かに「嫌いなもの・怖いもの」は明確に経験と紐づいているかも! これはパーソナリティが分かりやすくなりそうですね。
なぜづさんは心理描写を大切にしてるのですか?

づ: 私は、前の方でも述べたように、そこにいる人たちの観測者的立場で文章を書きたいと常に考えていて、だからこそ、私はその世界においてのリアリティを大事にして、彼らの行動、心理や感情に対して最も誠実でなければならないと思っています。それが結果的に心理描写や性格に重きを置くことに繋がっていますね。

ーーなるほど、づさんはリアリティをキャラクターの心理においているのですね。
創作をすることで読者に届けたいことはありますか?

読者に届けたいこと

づ: 私は(小さい頃は違いますが)、今は創作が自分の楽しみかつ一種の現実逃避のようなものになっています。頭では世界は広いと分かっていても、今自分に見えている世界が全てだとどうしても思える瞬間があり、そうすると逃げ場がなくてしんどいのですが、そういう時に彼らを思い出して、あぁこういう世界もあるな、と救われてきました。

虚構かもしれませんが、私はそれを実際にあるものとして認識したいです。自分がそうだからこそ、読者の皆さんにも、こんな人間がいてこんな物語があって、こんな世界がどこかにあるんだと、確かじゃなくても存在していると、ちょっとした非日常的な日常生活を感じて欲しいと思います。

ーー救いのお裾分けといった感じでしょうか。やはり創作は多くの人にとっっての理想や救いになりうるのですね。
やはりこれはづさんの考える創作の魅力に通じていますか?

創作の魅力

づ: 私の思う創作の魅力は、やはり魅力的な別世界を体験できるということなので、大きく繋がっていると思います。付随する苦痛も存在するのですが、そういう辛酸を舐めてでも離れられない引力があります。

なんど創作をやめようと思ったことかわかりませんが、それでも結局最終的にはまた考えようとするんです。もちろん創作の魅力というのはこれだけではなく、今の私の語彙、説明力では足りないほどの楽しみがあって、それはやっぱり一度創作をやってみないとわからないものかなぁと思っています。多分人それぞれなので。

ただし、一度踏み入れたらもう戻ることはできないことは確かです(脅しじゃないです)。それだけ、本当にめちゃくちゃ楽しいものです。自分だけが覗きこめる世界がそこにあるのです。誰に伝えても伝えなくても、ただ私だけが知り得る世界が存在すると思うと、もうワクワクが止まりません!

ーー大変さを凌駕する魅力にみんな虜になってしまうのですね……! たくさんのお話ありがとうございました!

今回はづさん(@battousaru))にお話をうかがいました! 今回もみなさんに創作の魅力を伝えることができたでしょうか?

エデンの住人たちでは感想やご要望をお待ちしています! ご意見をいただくとがんがん改善されていくのでぜひぜひ送ってください!

基本的には行動で示す形になりますが、場合によってはTwitterアカウントでおこたえしますので、マシュマロマガジン編集部(@marshmagazin)をぜひフォローしてください。エデンの住人たちに限らず、感想連載の更新もいち早くお知らせしています。

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