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【現役通関士が解説】衣類のHSコード(61類、62類)を完全攻略


材質分類

衣類のHSコード分類において、最も重要なポイントは生地の構造を見極めることです。

具体的には、編物として61類に分類されるのか、織物として62類に分類されるのかを最初に判断する必要があります。

生地の基本構造を特定したあとで、各製品の具体的な特徴や用途に基づいてより詳細なHSコードの分類作業に入ります。

編み物と織物は、それぞれ異なる製造方法と特徴を持っています。

編み物は糸を輪にして絡み合わせて作られ、伸縮性に優れています。


織物は縦糸と横糸を交差させて作られ、形状安定性が高いという特徴があります。

これらの違いを正確に理解することが、適切なHS分類の第一歩となります。


61類 編物

【平編み(天竺編み/メリアス編み)】

【名称例】
天竺・スムース・テレコ・リブ・フライス・インターフェイス

出典 税関HP:60類 分類解説(60 類、61類又は63類 2.メリヤス編物  )

ニット生地の中でも最も基本的な編み方が「平編み」です。

この編み方は「天竺編み(てんじくあみ)」や「メリアス編み」とも呼ばれ、日常的に着用するTシャツなどに広く使用されています。

平編みの特徴は、表面と裏面の見た目が明確に異なることです。

表面は「V」の字が連なったような凸凹の少ない滑らかな編み目が見え、裏面は横方向に走る畝(うね)が見えます。

また、横方向に大きな伸縮性を持つため、着心地の良さと動きやすさを両立できます。

このような特性から、平編みは衣類製造において最も一般的に使用される編み方となっています。

【模様編み】

【模様編みの名称例】
裏毛・裏起毛・片畦・鹿の子・クレープ・タック・ダンボールニット・デンビー・トリコットパイル・針抜き・フリース・ポンチ・ラッセル・レース編・ワッフル・ベロア・ジャガード(注:織物もあり)

「模様編みの組織を有するもの」は、大きく生地と製品の2つのカテゴリーに分類されます。

生地における模様編みの定義:

  1. よこメリヤスの場合:
    平編み、ゴム編み、あぜ編み、パール編み以外の組織
    単なる色糸使用による模様は除外されます。

  1. たてメリヤスの場合:
    シングルデンビー編み(1×1組織)以外の組織
    単なる色糸使用による模様は除外されます

  1. 複合的な編み方の場合:
    基本編み組織を組み合わせた複雑な模様
    単純なストライプなどは除外されます

  1. 二重編み・両面編みの場合:
    表裏いずれかが他の模様編み組織を含むもの

  1. 特殊な編み込みの場合:
    添加糸による模様(ただし基本組織と同一の場合を除く)

出典 税関HP:60 類 分類解説、61類又は63類 2.メリヤス編物  

製品における模様編みの定義:
衣類やショールなどで、上記の模様編み組織を使用している製品
襟回りや袖口などの装飾的な使用や、機能的な目的での少量使用は除外されます

参考:BELCY HP 模様編みの編み方とは?簡単な編み物の種類15選!編み図や記号も | BELCY

刺繍・レース・アップリケを使用した物は、模様編み扱いとなる。
 ただし、除外規程有り。

62類 織物

織物には3つの基本的な織り方(平ひら織り、綾あや織り、朱子織)があり、これらは「三原組織」と呼ばれています。

織り方によって、布地の強度、通気性、光沢感などの特性が変わってくるため、用途に応じて最適な織り方が選ばれます。

平織】

平織りは織物の中で最も基本的な織り方で、その構造はシンプルながら用途の広い織り方です。

縦方向の経糸(たていと)と横方向の緯糸(よこいと)が1本ずつ規則的に交差し、碁盤の目のような規則正しいパターンを形成します。

織り方の特徴は:
表と裏の区別がほとんどない
丈夫で安定した生地ができる
生産効率が良く、コストを抑えられる
様々な種類の糸で織ることができる

代表的な斜文織の製品例:
シャツ
ブラウス

汎用性の高い性質から、世界中で最も一般的に使用される織り方となっています。


【綾織(斜文織)(ツイル織)】

綾織は、3本以上の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を用いて織られる高度な織り方です。

織り方の最大の特徴は、布地の表面に斜めの線(斜文/しゃもん)が浮き出て見える点です。

織り方の主な特徴は:
表面に特徴的な斜めの線が現れる
平織りよりも密に織ることができる
生地に柔軟性があり、ドレープ性が高い
耐久性に優れている

代表的な斜文織の製品例:
デニム(ジーンズ)
チノクロス
ギャバジン
ツイード

斜文織は、その独特の見た目と優れた機能性から、特にアパレル製品で広く使用されています。

特にデニムは、この織り方の特性を活かした代表的な生地として世界中で愛用されています。

【繻子織(サテン織)】

サテン織は、5本以上の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を使用する高度な織り方です。

この織り方の特徴は、糸の交差点を最小限に抑え、表面の糸を長く浮かせることで、なめらかで光沢のある生地を作り出します。

織り方の主な特徴:
表面が滑らかで光沢がある
表裏の違いが明確
柔らかな風合いがある
高級感のある仕上がり

代表的な用途:
ブラウス
ドレスやイブニングガウン
ネクタイ
インテリアファブリック

サテン織は、その美しい光沢と高級感から、特にフォーマルウェアや高級衣料品に多く使用されています。

パイル織り】

パイルとは、織物の表面に立ち上がる柔らかな毛織物の特徴的な構造を指します。
具体的には、以下の2つの形状があります:

出典:【豆知識】パイル織物の種類や特徴 | 米阪パイル織物株式会社

  1. ループパイル:
    織物の表面に輪状の糸が立ち上がっている状態
    タオルが代表的な例
    優れた吸水性と柔らかな肌触りが特徴

  2. カットパイル:
    ループを切断して毛羽立たせた状態
    ベルベットやコーデュロイなどが代表例
    豪華な光沢感や高級感のある質感を実現

パイル織物の主な用途:
  衣類:ベルベット、コーデュロイ(コール天)
  生活用品:タオル、じゅうたん、毛布
  産業用:モケット(公共交通機関の座席材)

衣類の種類 (用途分類)

シャツ・ブラウス(6105,6106)(62.05、62.06)

シャツ、ブラウス、シャツブラウスの分類規定ついて、説明します。

男性用シャツ(6105項)(6205項)の分類:
オープンシャツ(開襟シャツ)
オープンカラー付き
前開きデザイン

ポロシャツ
台なしカラー
半開きの頭からかぶるタイプ

その他類似シャツ
スポーツ用(ゴルフ、テニス等)
制服用
単独着用可能なシャツ(アロハ、ビーチ、オーバー、レジャー等)

女性用シャツ・ブラウス(6106項)(6206項)の分類:
ブラウス
肩から胴回り/腰回りまでカバー
女性用ゆったりデザイン
アンダー/オーバーブラウスを含む

シャツブラウス
カラー、前立て、袖付き
ワイシャツ風デザイン
長袖の場合はカフス必須

チュニック

オープンシャツ・ポロシャツ (男性用と同様の基準)

織物製女性用シャツ・ブラウス(6206項)の分類:
基本的に6106項と同様の分類基準だが、ポロシャツは含まれない点が異なります。


Tシャツ(6109)

Tシャツとシングレット(ランニング等の袖なし肌着)の分類規定について、説明します。

  1. 基本的な素材と構造要件:
    綿製または人造繊維製であること
    メリヤス編みまたはクロセ編みであること
    編目密度が1cmあたり10以上であること
    裏地・詰め物がないこと

  1. デザイン要件:
    襟がないこと
    ネックラインは開閉機能がなく、フィット感があること

    ネックラインは以下のいずれかであること:
    ラウンドネック
    スクェアネック
    ボートネック
    Vネック

  1. 袖の要件:
    長袖または短袖であること
    ぴったりとしたフィット感があること
    袖口に絞りがないこと

  1. その他の構造要件:
    ボタンや締め具がないこと
    裾に締めひもやゴム編み等の絞る部分がないこと
    通常は裾に縁どりがあること
    ポケットの有無は問わない

Tシャツ(6109)に分類されない衣類:
起毛加工されたもの
パイル編物やテリー編物
ハイネックやタートルネック
袖口がゴム編み等で絞られているもの
フレンチ袖、ドルマン袖、提灯袖
袖なしのもの

下着のキャミソール(6108)

ランジェリーの一種で、肌着とは異なる下着である。スリップは着こなしを本来の目的とする視覚的装飾性が要望され、一方、ドレスの滑りを良くし、同時にドレスのシルエットを美しく見せるための機能的要素を具備するものであり、これに類する上半身用衣である 

肌着のキャミソール(6109)

肩ひもで吊るすタイプの胸から腰部までの女子用衣類。
胸の中央に細幅織物のリボンで作られたアプリケ加工があるものも。
吸汗性を重視した肌着としての衣類 

外着のキャミソール(6114)

ブラウスのように着る、見せるキャミソール

プルオーバー、トレーナー(6110)

ジャージ、プルオーバー、カーディガン、ベストの分類規定について、説明いたします。

  1. トラックスーツ上衣タイプ:
    必要条件:
    スライドファスナーまたはスナップボタンによる前開きデザイン
    編目密度が1cmあたり10以上であること

  1. プルオーバータイプ:
    以下の条件をすべて満たすもの:
    A. 生地の条件(いずれか一つ):
    裏パイルまたは裏起毛があること
    表裏で異なる番手の糸を使用
    表裏で単位当たりの編目数が異なる ※編目密度は1cmあたり10以上が必要

    B. 袖に関する条件:
    袖があること(形状は問わない)
    袖口に絞りがあること

出典 税関HP:61類 国内例規


乳児用の衣類(86cm以下)(6111)

乳児用衣類・衣類付属品の分類規定について、説明いたします。

基本的な分類基準:
身長による判断
身長86センチメートル以下の乳幼児用

年齢による代替基準 判別が困難な場合:
2歳半(30ヶ月)未満の乳幼児用とみなす。

適用される関税率表番号:
ニット製品:61.11項
織物 製品:62.09項

この規定は、商品の実務的な通関において、身長の確認が難しい場合の判断基準として使用されます。

インボイスや現物で身長の判別が困難な際に、年齢基準を代替として使用できる実務的な配慮が含まれています。


トラックスーツ(6112)

トラックスーツの分類規定について、説明いたします。

基本定義
メリヤス編み(ニット)製の2点セット衣類
裏地なし(内側起毛の可能性あり)
スポーツ用途が明確な外観と素材特性

【上衣の特徴】
ウエストまで、またはわずかに下まで
構造的特徴:
長袖
袖口:ゴム編みまたはゴム糸使用
すそ:締めひもまたは締具付き
前開き:スライドファスナー(一部または全面)

ズボンの特徴】 :
身体にフィットするタイプ、又はゆったりしたタイプ
構造的特徴:
腰部:ゴム糸使用のウエストバンドまたは締めひも
開く部分なし(ボタン等の留具なし)
通常、足首まである丈
裾:ゴム編み、ゴム糸、またはスライドファスナー可
足部の締めひもの有無は問わない


タイツ(6115)

ストッキング、ソックス類の分類規定について、説明いたします。

  1. 主要なカテゴリー:
    A. パンティストッキング・タイツ
    ウエストまでの下半身全体を覆う
    足部がないものも含む

    B. ストッキング・ソックス
    通常の丈のストッキング
    ソックス(アンクルソックスを含む)
    アンダーストッキング(防寒用)

    C. 特殊用途品
    段階的圧縮靴下(静脈瘤症用)
    ソケット(摩耗防止用)
    本底のない履物(乳児用ブーティー除く)

乳児用(86cm以下)のストッキング、ソックスは乳児用品(61.11項)

ズボンとして単独で着用が可能である10分丈レギンス、(61.04項)

半ズボンやスカート等の下に履く、9分丈のスパッツ、(61.14項)

肌着又は室内着として使用する10分丈の合成繊維製タイツ、(6115.22)

綿製編地の靴下(6115.95)


補正下着 (6112)

補正下着 (6112)は、体をサポートする衣類又はそのほかのある種の衣類をサポートするために着用する製品及び部分品を含みます。

体をサポートする衣類とは、身体のシルエットを美しく整える機能(補正機能、ファンデーション機能)を有すると認められる衣類と解釈されます。

全周にパワーネットやアンダーゴムを有するものが多い

補整下着(ショーツ)6212.20
機能:立体構造により臀部を上げることでヒップラインを整える。下腹部を引き締め体形を整える。
出典 税関HP:事前教示回答事例 :補整下着(ショーツ) 

女子用補整下着(ガードル)6212.20
機能:骨盤を中心に、腰やお腹、脚をサポートする。腰回りから臀部下部のパワーネットにより骨盤を引き締め、臀部を引き上げて体形を補正する。

女子用肌着(カップ付キャミソール)6212.90
性状:カップ下(前側のみ)にアンダーゴムを有し、カップ下から背部にかけてはパワーネットが使用され、胸部後側に当たる背部のパワーネットの裾部分は編み組織を変化させている。調節可能な肩ひもを有する。


女子用ショーツ(6108)

綿製メリヤス編物から成る女子用のショーツ
性状:綿製メリヤス編物から成るショーツ
   腹部裏側に飾りレースを使用している
   腹部裏側にパワーネットを裏打ち
用途:下着として着用
分類:6108.21号

腹部裏側にパワーネットを裏打ちしているものの、腹部を押さえる構造のみであり、ガードルのように下半身をサポート(補強)をする機能を有するとは認められない場合、62.12項には分類されません。


シャツ・T-シャツ(肌着)・プルオーバーの分類フロー図(参考)



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