もうちょっとマーダーミステリーの魅力を考えてみる
はじめに
以前、こんなnoteを書きました。
マーダーミステリーの魅力を
物語体験
物語解明
物語発生
に分けて、作品によってその強弱がある、と。
でですね、その後、こういう記事が2つありまして。
僕はこのお2人のおっしゃってることは基本的には同じだ、と思いました。なので、今後、マダミスの要素、魅力を大きくわけるならこの4つ、ざっくり言うと、
推理
物語
駆け引き
RP(キャラクターとしてのなりきり)
というのが一番いいのでは?と思いました。
ただ、ちょい言葉の定義が難しいんですよねえ。RPなんていっつも学級会で意味の定義の話してますし。もう少し、言葉の定義に縛られず、わかりやすく概念化したい、と思っていました。
そんな中、マダミーティングが開催されました。
いろんな方々がマダミスの魅力を語ります。そんな中、鬼哭館の殺人事件を作られた、週末倶楽部の小田ヨシキさんの講演にとても興味を持ちました。小田ヨシキさんは、魅力は7つに分けて解説されていました。
そして、鬼哭館の売れた理由はその7つをおさえており、かつ、大正浪漫、というフレーバーを早い時期に実現したからだ、と分析されていました。
めちゃくちゃ納得の説明でした。その上で同時に、鬼哭館は今だとそこまで売れないのでは?今はもっと尖らないとヒットしないのでは?とおっしゃっていました。そこまで含めて自作をここまで鋭く分析してらっしゃって、非常に感心したのでした。
それを聞いて、そういった、各作品を見据えるための物差しを共通認識化できないもんかなあ、と思ってここ数週間考えてました。で、ちょっとイメージが浮かんだのです。
先にお断りしますが、このnoteは、多分後で加筆修正確実にしますw
だけど浮かんだものを勢いで残しときたかったので、まずは書き記していきます。
ベースとなる物差し
いきなり図から入ります。
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なんのこっちゃ?と思われた方、あなたは正しい。
もうちょっとお付き合いください。
あんまこれだけだと意味がわからんと思いますのが、まずは簡単に説明を。
マダミスの魅力、を考える時に、
横軸に
感情・情動 ⇔ 論理・思考
といった評価軸を持ちます。
そして縦に
対環境 ⇔ 対人
という軸をいれます。これはもっとピンとこないかもしれませんが、要するに、作品世界で作者と勝負・やりとりする要素が強いのか、他のプレイヤーと勝負・やりとりする要素が強いのか、という要素になります。
(ちなみに豆知識ですが、PvE、のEはEnvironmentです。Enemyじゃありません)
さて、マダミスの話に入る前に、他ジャンルだとどうなんだろう?ってのをサンプルとして見てみるとイメージしやすいのでその話をします。
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謎解きというジャンルは、基本的に、作者の作った謎に挑む遊びです。そしてそれを頭をフル回転させて解いていきます。ごく稀に他のプレイヤーとのインタラクション要素があったり、また、物語にエモーショナルな要素があったりします。ただ、あくまで主戦場は謎を解く、という思考で、謎という環境を相手に戦うわけです。
こんな風に、この図は、どこかのポイントを指すのでなく、濃淡のあるエリア、ヒートマップのようなもので考えられます。
さて、それと対照的なジャンルをひとつ。
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人狼は基本的にはプレイヤー同士の思考のバトルです。もうこの右下の図にずばっとはまります。若干情動にも浸食させたのは、その結果生まれるドラマが印象的で感情を動かすものになることも十分あるので、こう表現しました。
ちょうど理解しやすい例として、ランドルフ・ローレンスの追憶、の作者であるじゃんきちさんの作られた、「パンドラの人狼」という特殊なシナリオのある人狼があります。
https://note.com/junkie_werewolf/n/n85447a180c42
これはシナリオごとに隠されたルールがあり、1度しか遊べないものです。これをサンプルとして図示すると。
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こうなります。より、対環境、作者の作った世界の謎を解く、という遊びに広がるわけです。なので、パンドラの人狼は、作品数は少ないものの、従来の人狼が苦手だった人まで取り込む魅力があります。
では、マダミスは?
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より、カバー範囲の広い遊びなことが想像できると思います。
そう、このカバー範囲の広さ、多様性こそが僕はマーダーミステリーの面白いところであり、難しいところである、と考えています。
ただ、それは1作品がカバーできるとは限らず、作品により偏りがあります。それについて次の項で考えていきましょう。
マダミスのトレンドについて
まず、マダミスが2019年前半に王府百年が出てきて初めて日本で遊ばれるようになった頃の話。マダミスの守備範囲、ヒートマップは、こうであったと考えます。
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マダミスとは、推理と駆け引きのゲームである、とされました。人狼と謎解き(正確には推理ですが)のそれぞれの守備範囲の中間地点としてマダミスの歴史はスタートしました。
この時代、謎解きも人狼もやるプレイヤーだった自分からすると、謎解きから流入した人と、人狼から流入した人との遊び方の違いは、かなりの軋轢を生んでいました。多分最近マダミスプレイした人にはあまりピンと来ないかもしれませんが、新しい遊びであるが故の遊び方の模索は多くの血を流しました。(おおげさですがw)
そして、その後、ランドルフ・ローレンスの追憶、Cosmo Murder Grand Hotel、遠き明日への子守唄、などの作品が完全にトレンドを変えました。
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マーダーミステリーとは物語を体験するものである、という文化がとても根強くなりました。前述のタイトルは決して物語体験だけが魅力的なタイトルだったとは僕は思いませんが、物語体験にフォーカスしたフォロワー的なタイトルも多く増えました。そして、コロナ禍で、オンラインマダミスの文化がうまれ、その後TRPG(CoC)勢力の融合もあり多彩な作品も生まれましたが、一度は、この物語体験重視の文化は強まったと言えます。こうなったために、マーダーミステリーから去っていった、右下のエリアを主戦場としていた方々も多くいたと思います。
では、その後どうなったでしょう?
一部の懐古主義的な方々にとっては、今もエモ重視の世界に見えているかもしれません。ただ、そうではない、と自分は考えます。
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上の図は、作品による、という意味しかない図なのでそんなに意味はありませんw ただ、特に左下のエリアが当初より圧倒的に伸びている、と考えます。これはTRPG文化との融合ということもあるでしょう。単に物語体験をする、という一言ではなく、RPをすることによってそれぞれの物語を発生させ、作り上げていく作品も増えました。
ここで、最初のテーマに戻ります。マーダーミステリーの魅力、4要素とは。
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こう表現できるのではないでしょうか。そして、鬼哭館の殺人事件は、これらの4要素を幅広くカバーした作品である、と言えると思います。
ただ、作者自らがおっしゃったように、カバーすると強い、カバーしなくてはいけない要素ではあるものの、その中でどこに厚みを持って作品を伝えるのか、それが求められる時代になった、と考えます。
そして、自分が提唱した3要素もこう図解するとわかりやすくなります。
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こうすると、自分が言っていたことと、4要素で語られていたことが本質的に同義である、とする自分の主張がおわかりいただけるのではないでしょうか?
ちなみに、以前のnoteでも書きましたが、自作である「殺意の特異点」は自分はこういう分布の作品と分析しています。
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思考と情動のバランスとしては真ん中あたりにいるものの、シナリオよりも、大きくプレイヤーに依存した作りとなっています。鬼哭館の殺人に比べるとカバー範囲はとても狭いと思います。が、おそらくは下のエリアであるプレイヤーに委ねたが故に、4年たってもプレイヤー文化の成熟によって、そこまで陳腐化してないのだと考えています。
これから
マダミスのこれからを語る上で、もうひとつ、隣接ジャンルの図を見てみましょう。
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ストーリープレイング、です。マダミスより新しいこの文化はむしろ駆け引きや推理を間引いた上で情動をメインとした物語を生み出しました。
僕はマダミスとストプレは本質的にそれほど差はない、と思ってます。それは、この図で見るように、それはマダミスが守備範囲とした中の一か所に特化したものに過ぎないからです。
逆に言えば、前述の小田ヨシキさんの予想のように、これらはこの図のどこか一か所だけが研ぎ澄まされて、プレイヤーに刺さりやすい作品がよりヒットするのかもしれません。
ただ、プレイヤーの好みや求めるものは千差万別です。おそらくさらに様々なヒートマップを持った作品が作られていくのではないでしょうか。そして、自分の中でその物差しを持っていると、好きな作品に出会いやすくなるかもしれませんね。
ちなみに、僕個人の物差しは、多分、この全方向、そして深く、なのだと思っています。
この、私が好きなマーダーミステリーベスト10、の際に、僕は「夢中」になりたいと述べました。僕にとっての夢中、とは、思考と情動をいったりきたりしながら自分自身の状態がわからなくなること、です。そしておそらく同じように、シナリオのことも、他の人のことも行ったりきたりしながらフル回転で考えたいのです。
だいじなのは、それがフル回転、なことで、薄く広く、ではなく、それをピンポイントでも何か所か、濃く、強く楔を打ってくれるように刺しにくる作品が好きなんだと思っています。
おそらく、1作品1作品は、どこか一か所を突き刺してくれれば僕は満足すると思います。ただ、そういったひとつの作品でいろんな要素をいったりきたりして夢中になれる作品に出会えることを、また願って、遊び続けたいと思います。