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note ドラマ | 旧犬鳴トンネルの謎
チカは、友人たちと共に「旧犬鳴トンネル」に向かう車の中で、期待と不安が交錯する感情を抱えていた。
後部座席に座る彼女は、窓の外を流れる夜の風景を見つめながら、心臓が高鳴るのを感じていた。
街の灯りが徐々に薄れ、周囲は闇に包まれていく。
まるで、彼女たちを待ち受ける未知の恐怖が、静かに迫っているかのようだった。
「ねえ、チカ。ほんとに大丈夫かな?噂とか聞くと、ちょっと怖くなってきた」と、隣に座るユウが言った。
彼の声は不安に揺れている。
「大丈夫だよ。都市伝説っていうのは、ただの話だから。
怖がらずに楽しもうよ!」チカは明るく答えたが、自分自身も内心では緊張していた。
心霊現象に興味があるとはいえ、実際にその場所に足を運ぶのは初めてだったからだ。
トンネルの前に到着すると、冷たい風が彼女たちの肌を刺す。
周囲は静まり返り、まるで世界から隔絶されているような感覚がした。
トンネルの入口は、暗く奥深く、どこまでも続いているように見えた。
「これが噂のトンネルか…」とチカは思った。心の中で、期待と恐怖が渦巻いていた。
「行こうよ!」と、リョウが先に立ち、トンネルの中へと入っていく。
彼の後を追う形で、チカたちも一歩踏み出した。暗闇が彼女たちを包み込み、背筋に寒気が走る。
トンネルの中は、まるで冷たい水の中にいるような感覚だ。呼吸が重く、心臓の鼓動が耳に響く。
進むにつれて、トンネルの壁に触れると、ひんやりとした感触が手に伝わる。
壁面には、無数の落書きや、かつての訪問者たちの名前が刻まれている。
その中には、呪いの言葉や、怨霊が現れるというメッセージもあった。「これ、本当にやばいかも…」と、チカは心の中で思った。
しばらく進むと、突然、電池が切れたかのように、持っていた懐中電灯の光が消えた。
途端に真っ暗になり、彼女は恐怖に包まれた。「光がない…これ、やばいよ」と、ユウがつぶやく。
彼の顔には不安が浮かんでいた。
「みんな、どうする?戻る?」とリョウが言ったが、チカはその声に動揺しながらも、何かを感じていた。
彼女の心の奥底に、何かが引き寄せるような感覚があったのだ。
「もう少し進もう。何かあるかもしれない」と、思わず口に出てしまった。
すると、突然、目の前に古びた祭壇が現れた。何かが置かれている。
近づいてみると、それは呪いの人形だった。薄汚れた白いドレスを着た人形は、まるで生きているように目を見開いている。
チカは、その人形に強烈に引き寄せられ、何も考えずに手を伸ばした。
「チカ、やめろ!」とリョウが叫んだが、彼女の手は人形の肩に触れた瞬間、冷たい風が一気に吹き抜けた。
耳鳴りが響き、視界が歪む。友人たちの声が遠くなり、次第に周囲の気配が変わっていくのを感じた。
「チカ!」と、ユウの声が叫ぶ。彼の声は徐々に遠くなり、次の瞬間、彼の姿が消えた。
恐怖に駆られたチカは、その場に凍りついた。周囲の暗闇がどんどん深くなり、彼女は一人ぼっちになってしまった。
彼女の心は混乱していた。「どうしてこんなことに…」と、涙がこぼれそうになる。
友人たちを助けなければならない。彼女は必死に、呪いの秘密を解こうと決意した。しかし、そのためには、自らが犠牲になる覚悟が必要だった。
トンネルの奥から、低い声が響いてきた。
「お前も来たか…」怨霊たちの怒りが渦巻くように感じられる。
チカは鼓動が早くなるのを感じながら、祭壇の前に立った。「何が必要なの?」と、声が震えた。
その瞬間、祭壇の上にあった人形が、彼女の目の前で動き出した。
怨霊たちの声が耳に響く。「お前の心が必要だ。友人を救いたいなら、代償を払え」と言われた。チカはその言葉に驚愕した。心を捧げなければならないのか…?
「私は、友人たちを助ける!」と叫ぶと、意志を強く持った。
恐怖を超えて、自分の心を解放し、怨霊たちにその思いを伝えた。すると、周囲の空気が一瞬静まり返り、暗闇が光に包まれた。
その瞬間、友人たちの姿が戻ってきた。彼らの顔には安堵の表情が浮かんでいた。
「チカ!」と、ユウが彼女に駆け寄る。チカは安堵の涙を流しながら、友人たちの元へ向かった。
「ありがとう、チカ。お前が頑張ってくれたんだな」とリョウが微笑みかける。
しかし、彼女の心には重い代償が残っていた。彼女は何か大切なものを失ったような気がした。
トンネルを後にする時、彼女は心の中で誓った。
「もう二度と、こんな場所には来ない。」
友人たちと共に帰り道を歩く中で、彼女はその喪失感を抱えながらも、今までの冒険が心に刻まれたことを実感した。
何を失ったのかは分からないが、彼女の心にはいつか必ず戻ることができると信じていた。
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