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アルゼンチンの犯罪を減らすには
毎朝ニュースを見ていると強盗やスリ、そしてモトチョロ(バイクによるひったくり)の報道がなされている。言葉は理解できないものの、防犯カメラの画像が延々と放送され、ケガをした被害者がインタビューを受けている姿も少なくない。おそらく、犯人はまだ特定されていないホットな情報という意味での放送だと思う。
1.防犯カメラの画像
日本ではよほどのことがない限り、防犯カメラの画像が第三者の目に触れることはない。それは、防犯カメラの画像は防犯カメラを所有する人のものであり、警察の捜査に使うのであれば、その方の許可がない限り持ち出すことが出来ない仕組みになっている。
ということは、プライバシーという意味では所有者の権限だけで人目にさらすこともできない画像であり、そういう認識で画像データを管理しているものでもある。たまに、ドライブレコーダーの画像が放送されることがあるが、これは所有者が特定できないという抜け道で使用されることがあるというだけのこと。
2.これが放送されることが何を意味するのか
被害者がインタビューされる姿を見かけているが、加害者が晒されるのを日本では見たことがない。この目的は、そこで発生した事件がリアルタイムで延々と流されているというだけのこと。憶測ではあるがニュースとしてショッキングな情報ということで、まだ加害者が特定できていない事件を発信しているということになる。
ここにとても危機感を抱いている。犯行の手口を一部始終放送するということが、同様の犯行を計画している人がいるとしたら、これ以上ない参考資料になってしまうリスクを伴っていることがどうしても気になった。
3.加害者が逮捕できるまでは機密情報
日本の警察には捜査中の情報に守秘義務がある。どうしても情報収集に必要な場合に開示することがあるというだけで、場所や時間を晒してしまうことが危険を増長させて、さらに同じ場所で「仕返し」にくることだって考えられる。
加害者の目線で言えば、自分は隠れていたとしても被害者のその後の様子を知ることが可能である。加害者の姿を見てどう思うかというよりも、警察の捜査の状況を図り知ることもできる。もし、逮捕でもなく拘束中だったとしても経過を知る仲間がいれば、これ以上ない情報が開示されてしまうのである。
4.犯罪するものの心理を考えてみる
まず、犯行の経緯を見ることができればこれから犯行を計画する者にとってのヒントになり得てしまう。ここまでが大丈夫、これなら逃げられるなどの参考にもなるし、この場所なら人の手が及ばないことの参考としても生きた情報となり得てしまう。そこまで警察のトラップというなら話は別だが、逮捕された報道を見たことがないという点がすごく気になっている。
小さな衝動による犯罪、特に若者が犯罪に及ぶ動機は群集心理によるものが大きく影響する。一度でも考えたことがある人にとって、これほど生きた情報はないと思っている。「その手があったか」と思う人もいるだろうし、アイデア(悪知恵)を引き出すきっかけにもなってしまう気がする。
5.アルゼンチン人はどう見ているのか
「どうして毎日こんな放送をするのか?」と聞いてみたことがある。この方の答えは「残念な出来事だからだ」とのことであった。おそらくこの報道に慣れた人にとっては、どんな事件がリアルタイムで起こっているのかを知りたいという需要が先行してしまっているのである。
アルゼンチンの国民が不安な日々を過ごしていることに違いはない。起こったことを共有することも必須だとは思うし、対策を考えることも大事なこと。でもこんな幼稚な発想を打ち消していくことから始めていかないと、この程度の事件が無くなることがないと思えてならない。
6.結局は「ゲーム」的な発想
自分にもできるんじゃないか。そんな簡単に考えてしまえる風潮が犯罪の減らない原因。みんな生きることに真剣であることは理解ができる。人を傷つけることを軽々しく放送してしまうことで、その痛みの感覚が麻痺してしまっているという危険性を感じている。
日本のテレビのコンプライアンスが厳しくなり、つまらなくなったという意見も一理あると思っている。でも、放送するものがどちら側の目線で、どんな影響を及ぼしているのかを考える作業も報道の義務とも言える。
事件が0になることもないとは思うが、若者たちの「衝動」を助長していることを自覚してほしいと切に願う。モトチョロがいい例で、バイクがあると悪いことができるって思うのは、ヤンキー高校生の発想でしかない。
中には拳銃で命を狙うケースもないわけではない。アルゼンチンでは鉄格子越しにモノを売るお店もある。強盗を入れないという発想からなのだが、自分の命は自分で守ることも重要。そういう犯罪と若者の「衝動」が同様の事件として、テレビで放送されてしまうことを止めるべきだというのが自分の中での結論である。