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故人の執念に狂わされた人々—獄門島—

概要

監督:市川崑
原作:横溝正史
脚本:久里子亭(1)

あらすじ

 終戦直後の引き上げ船で死んだ男・鬼頭千万太。彼は戦友に「俺が島に戻らなければ妹たちが殺される!」という臨終の言葉を残していた。彼の遺書を預かった金田一は、その戦友に代わって獄門島と呼ばれる島を訪れるが、果たして、俳句の言葉に見立てた奇怪な殺人事件が起こってしまう……。『悪魔の手毬唄』の公開から4ケ月で早くも登場したシリーズ第3弾。(2)

(3)

特徴 

 監督市川崑と俳優古坂浩二による金田一耕助シリーズの第三弾獄門島での名家三姉妹に起こる殺人事件となっている。
 本家と分家、本家乗っ取ろうとする本家から独立した家、座敷牢に閉じ込められる本家の当主など怪しい閉鎖された昭和の雰囲気が漂う。
 家に付いた靴跡、復員服の男や海賊などと新たな手掛かりが増えていくが解決へと進展しているのか後退しているのか判別付かない独特なぼんやりとした不安が留まる。
 原作はとは違うストーリー、犯人になっているので注意してほしい。

良い点

ストーリー

 推理小説の王道な展開に加えて加害者が誰なのか判別できる場面のミスリードにより、予想からひとひねり加えたものになり見応えがある。物語のあちらこちらに散らばる布石により息を飲む解答シーンから哀愁と愛情の物語へと変化も自然で滑らかな具合となっている。 
 そして物語の根幹を成す故人による執念と生人よる憎悪が絡み合い、最後に至る悲劇的な結末は見事である。


演出   

 人物の場面の素早い切り取りが行われ、血しぶき、モノクロ映像の挿入なども相まって悲惨で奇妙な雰囲気を醸し出しており三姉妹の嗜好溢れる死体の描写も原作との耽美的調和を成している。それでいながらも場面展開や事件現場を見やすく監督自身の自己満足とはなっていない。

悪い点

現代邦画との話の進み方の違い

 話の進み方が今の映画とは違い、目まぐるしく移り変わり一度目を話せば誰が何の事を話しているのか分からなくなってしまう。そして一番始めに人物紹介が来た後は二度これを繰り返さないので忘れてしまう事も生じるので注意されたい。

小説を映像化 

 推理小説にとって解答編の為の種あちらこちらに仕込むが映像化するにあたってその種の描写自体がわざとらしく、不自然になっている。それを種の描写をなさないと推理ものとならないので視聴者はある種の許容が必要である。

感想

原作との相違 

 原作を未読なので詳しい比較を述べる事ができないがこの映画オリジナルの犯人の動機は理解しやすいものとなっている。息子と娘の為に犯した人殺しであったが本家を存続するであろう息子の戦死の報により虚しさと世界の無常が現れ出る。
 一方で原作版の犯人は全くということそんなことはないのである。生者の正常な判断をも狂わせる故人の執念が全面に出ており怪しいながらも目の見えない別の次元から束縛から来るもので動機に納得はしづらいだろう。

(註)

(1)ヘッダー画像以下から画像転載

(2)以下からあらすじ引用

(3)以下から画像転載

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