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葛藤とおみくじ

 フリーランスになるために仕事を辞め、有給を消化していた時期にある神社に行った。全く信心深くない、むしろ夫婦別姓に反対する団体が多いらしい神社というものにはあまりポジティブなイメージはなかったが、フリーランス、移住という人生の中で大きな出来事を目前にして、何かにすがりたくなったのかもしれない。

 Instagramで見つけた、著名人も足を運ぶという開運で有名な神社に行き参拝後におみくじを引いた。おみくじには大体こんなことが書かれていた。

籠の中にいた鳥が放たれて自由になるように苦しみを逃れて楽しい多くなる運だ。世のため人のために尽くすならば幸福も増し有名になるだろう

 このおみくじは末吉だった。この文を読んだとき、かなり心の中を見透かされた気持ちになり、動揺した。こんなに運が良さそうなお告げが書かれているのにこのおみくじが末吉なのは、ただし、という条件付きだからだろうと直感的に思った。

 「世のため人のために尽くすならば」の条件部分が引っかかったのは、選挙ボランティアの仕事をサボっている自分への後ろめたさや、自分だけが海外に行って楽になるという負い目、後ろめたさがあるからだ。

 自分とパートナーが海外に脱出できても、家族や友達までは連れて行けない。戦争という言葉が年々日常に紛れ込んでくるようになった今、自分の立場は変化した。以前は「豊かな日本に難癖をつけて出て行きたがる変わり者」扱いだったが、今では困難しかない日本から一時的にだが「一抜け」する立場になった。

 もちろん海外に行っても別の困難が待ち受けていると思う。学生時代の留学中に人種差別も経験済みだ。行き先のヨーロッパだって、イスラエルを擁護するような発言をしたりと、どこに行ったって地獄だ。

同じ地獄なら、いや同じ地獄だからこそ、せめて自分の意思で選びたいと思ってしまう。

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