野菜価格高騰時における経営戦略

こんにちは。脳を耕す「農テラス」です。
さて、今回のテーマは

「野菜価格高騰時における経営戦略」について

ご存じの通り、最近野菜の市況相場が高騰しています。

これは猛暑のあおりを受け産地からの供給量が少ないからです。

つまり需要より供給の方が少ないから。

例えば日本農業新聞が発表する日農平均価格11月27日時点で

トマトは828円/kg、キュウリは523円/kg、キャベツは167円/kg

これらは平年比2倍に及びます。


農家にとっては嬉しいことだが消費者にとっては家計費を圧迫する
非常事態だ。


高値になる理由は大きく2つ

ひとつは9月の猛暑。定植時期の暑さが影響で花がつきにくくなり
実が減ったのが理由。

キャベツに至っては育苗時の高温障害や定植後の活着不良が理由である。

ただ、もう一つの理由の方が私は気になる。

それは農産物の輸入。

これまで、農産物の価格が高騰すると即座に市場は海外から
調達し市場価格の高騰を抑えようとしてきた。
だが、最近は供給量が減ると普通に市場価格は高騰する。


つまり輸入による価格の抑止力が弱まったのだと思う。

この背景には円安があるのではないだろうか?

円安になれば輸出産業は潤い、輸入産業が打撃を受ける。


今から30年前、私が20代オランダ農業研修に行っていた頃、
1ドル100円、1ユーロ90円くらいだった。

国内金利が高く、日本はバブル景気で浮かれていた。
海外旅行が盛んで日本人は海外で爆買いしていた時代だ。

その後120円/ドルくらいで推移していたが、
2010年ころになると1ドル80円の円高時代に突入。
輸出産業は国内生産をして海外へ輸出するスタイルから
海外に工場を作り海外で生産するようになった。

その後1ドル110円程度で推移したがコロナが明けると
アメリカの金利が上昇し一気に日本円は売られ円安になったのだ。


さて、過去の話より未来の話だが、今後私たち農家はどうすべきか?

このまま円安が続けば輸入農産物も国産農産物と変わらない価格となり、
国産農産物の需要は益々引き合いが強くなるのではとの予測が立つ。


つまり、「農産物の価格が上がる」という予想だ。


今回のコメ騒動が発端となった米価格の値上がりもそうだが、

農産物の価格も上がることは大歓迎である。

現在の野菜の日農平均価格は184円※11月27日現在

前値比41円高。平年比62円高である。

昨年の同時期の日農平均価格は140円程度。
だから今の価格はちょっと異常かもしれない。

ちなみに私は30年間市場価格を記録してきたが
野菜の平均単価は1990年から2010年くらいまで

ずーっと120円前後だった。

それが去年は140円前後で推移し、今年は160円前後で推移している。


つまり、農産物の市場価格は確実に上がっているのです。


ただ、実際には大きく儲かっていると実感しない農家が多いかもしれない。

これは資材費や人件費の高騰によるコスト高が影響している。


さて、ここからが

「これからの販売戦略」についてですが、

結論を言えば

「浮足だってはいけない」ということ。


猛暑や豪雨、台風や寒波など天候不順による生産量、物流量の減少はこれからも頻繁に起きると思われます。

ですからシンプルにあらゆる「食」の材料(農産物)供給量が
足らなくなる傾向は続くでしょう。


そういった中で、海外からの農産物輸入がカギを握ります。

このまま円安が続けば農産物輸入は活発化しにくいと考えられる。

一方、円高に傾けば一気に農産物輸入が活発化すると予測されます。

この為替相場の動きは農産物相場の動きより何倍も複雑なので

予測はできませんが、安易に今の状態がずーっと続くという予測で

これから農業やっていくのは危険すぎるかもしれません。


最後に「浮足だってはいけない」事例をご紹介します


2016年空前絶後の高値を付けたのは子牛の価格

平均80万。高値は120万の値を付けた。

これまで50万~60万だった相場が倍になり繁殖農家は大きく潤った。

繁殖農家の父親は
会社務めをしていた息子たち3人をすべて連れ戻し、
家業である繁殖農家を継がせた。


牛舎を増築し、法人化。

それぞれ息子たちは家庭を持つようになり繁殖牛を出荷することで

家族を養う決意をした。

あれから8年後。

子牛の市場価格は平均40万へと暴落した。併せて餌代が高騰し

子牛を出荷すればするほど赤字が膨らんでいく・・・


人は儲かっている時、それがずーっと続くと錯覚する。

しかし、上がったものは下がるし、下がったものはまた上がるのです。


今、景気が良いあなた。

今、儲かっているあなた。


価格高騰時における経営戦略は大丈夫ですか?