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ポリアモリーとは?不倫や浮気とは違う「特定複数」の恋愛の形
「特定複数」という新しい恋愛の形・ポリアモリー。1990年代初頭に生まれた比較的新しい恋愛形態ですが、日本にも100万人ほどの実践者がいるとわかっています。この記事では、ポリアモリーの定義や、不倫や浮気との違い、関連する用語、特徴などをまとめました。また「ポリアモリーは嫉妬しないのか?」「ポリアモリーについて取り上げている作品はあるのか?」といった疑問にも触れています。
ポリアモリーとは
まずはポリアモリーの概要について見ていきましょう。以下では、ポリアモリーの定義、不倫や浮気との違い、オープン・マリッジとの違いについて解説します。
ポリアモリーの定義
ポリアモリー(Polyamory)とは、ギリシャ語の「Poly(複数)」とラテン語の「Amor(愛)」をかけ合わせた言葉です。1990年代初頭にアメリカで作られました。
オックスフォード英語辞典ではポリアモリーを「同時に複数のパートナーと感情的に深く関わる親密な関係を築く実践。全てのパートナーの合意に基づいて、性的なパートナーを同時に二人以上持つ実践」と定義しています。
つまりポリアモリーは、合意のうえで一度に複数の人と恋愛関係を築くこと、もしくは築きたいと願うことを意味します。後述しますが、一度に一人のパートナーと恋愛関係を築く「モノガミー(Monogamy)」や「一夫多妻制」とは異なる考え方です。
ただし、明確な定義が定まっているわけではなく、コミュニティやグループによって異なる場合があります。
不倫や浮気との違い
不倫や浮気は、一般的に一人のパートナーがいるにもかかわらず、隠れて他の人と恋愛関係を持つ行為です。関係の透明性や誠実性に欠けることが多く、不倫や浮気が発覚した場合はトラブルに発展する場合も少なくありません。
一方、ポリアモリーは関係者の同意を得たうえで複数人と恋愛関係を築きます。全ての関係が互いに尊重されるオープンな関係であり、誠実なコミュニケーションや信頼関係のもと成り立っているのが特徴です。
オープン・マリッジとの違い
オープン・マリッジ(Open Marriage)とは、既婚者が婚姻関係を維持しつつ、他の人と性的・感情的な関係を持つことを認める婚姻形態です。いわばパートナー公認で婚外恋愛をすることを意味します。オープン・マリッジでは夫婦の絆が最も重要とされ、婚外の関係はその補完的なものとして扱われるのが一般的です。
ポリアモリーにも似ている部分がありますが、必ずしも婚外恋愛となるわけではなく、また複数の関係者とオープンかつ平等的な恋愛関係を築く点がオープン・マリッジとの違いです。
ポリアモリーに関連する用語
ここからは、ポリアモリーに関連する用語について解説します。
モノガミー
モノガミー(Monogamy)とはいわゆる「一夫一妻制」のことで、一人のパートナーと結婚を前提とした恋愛関係や婚姻関係を築く恋愛形態です。多くの社会や文化で標準的な恋愛・婚姻形態と捉えられており、結婚制度や家族構造もモノガミーに基づいて構築されることが多い傾向にあります。
なお、モノガミーの種類は以下の2つが挙げられます。
終生モノガミー(Lifetime Monogamy):一生の間に一人のパートナーとの恋愛関係・婚姻関係を持ち、離婚や再婚をしない恋愛形態。
連続モノガミー(Serial Monogamy):一度に一人のパートナーとのみ関係を持つものの、関係が終わった場合は新しいパートナーとの関係を持つ恋愛形態。
モノアモリー
モノアモリー(Monoamory)は、一度に一人の相手と恋愛関係を持ち、その相手に対して深い愛情と忠誠を捧げる恋愛形態です。他の人との恋愛関係や性的関係を持つことは一切許されず、一人の相手に対して深い愛情を注ぎ、その関係を発展させることに専念するという特徴があります。
モノアモリーの場合、長期的な視点で関係を構築していくのが一般的ですが、前述したモノガミーと違って結婚を前提としないケースも含まれます。
ポリー/ポリアモラス
ポリー(Poly)やポリアモラス(Polyamorous)は、いずれもポリアモリーにまつわる言葉です。
細かな意味や言葉の使い方としては、以下の通りです。
ポリー(Poly):ポリアモリーやポリアモラスの短縮形として使われる。
ポリアモラス(Polyamorous):形容詞。複数の恋愛関係を持つこと。
例文:「彼はポリアモラスな人です」ポリアモリー(Polyamory):名詞。複数の恋愛関係を持つという恋愛形態。
例文:「彼はポリアモリーを実践しています」
オープンリレーションシップ
オープンリレーションシップ(Open Relationship)とは、パートナー同士が合意のうえで他の人とも関係を持つことを認める恋愛形態のことです。法的な婚姻関係に依存せず、未婚のカップルや同棲中のパートナーも含まれます。一方、夫婦の場合はオープン・マリッジ(Open Marriage)とも呼ばれます。
メタモア
メタモア(Metamour)とは、自分のパートナーが自分の他に恋愛関係を持っている相手のことを指します。たとえば自分がAさんと恋愛関係を持っており、AさんがBさんとも恋愛関係を築いていた場合、Bさんが自分にとってのメタモアに当たります。
あくまでも「自分のパートナーの他の恋愛相手」という関係性であるため、自分がメタモアと直接的な恋愛関係を築くことはありません。しかし、ポリアモラスな関係を築くためにはメタモアを尊重する姿勢やコミュニケーションが必要です。
ポリアモリーの特徴
評論家の荻上チキさんが執筆した「ポリアモリー 複数の愛を生きる ポリアモリーのリアル」によると、ポリアモリーの特徴は下記の通りです。
合意に基づくオープンな関係
身体的・感情的に深く関わり合う持続的な関係
所有しない愛
結婚制度にとらわれない自らの意思と選択による愛
それぞれの特徴について、以下で詳しく見ていきましょう。
合意に基づくオープンな関係
ポリアモリーの特徴として、関係者の合意に基づいてオープンな関係を構築している点が挙げられます。たとえばAさんとBさんが恋人関係を持っていると同時に、Cさんとも恋愛関係を築いている場合、それぞれがお互いの関係について情報共有し、受け入れていることが理想とされます。
身体的・感情的に深く関わり合う持続的な関係
一時的な関係ではなく、時間をかけてお互いの身体的・感情的な関係を育てていく点もポリアモリーの特徴です。関係者それぞれが互いに成長し、持続的な深い絆を深めることが重要とされるため、身体的な関係だけでなく、正直で思いやりのあるコミュニケーションやケアが必要になります。
所有しない愛
ポリアモリーにおける愛に、「相手を所有する」という概念はありません。お互いを束縛することはなく、各々が自由なパートナーシップを築くことを尊重するのがポリアモリーの特徴です。ポリアモラスな関係においては、関係者全員がそれぞれの幸福を追求できるように配慮する必要があります。
結婚制度にとらわれない自らの意思と選択による愛
ポリアモリーは、結婚制度や社会的な枠組みに縛られることなく、自分自身の意思と選択に基づいて恋愛関係を築くことを重視します。一度に二人以上の相手と恋愛関係を築くため、結婚という制度にとらわれることはありません。
日本におけるポリアモリー
「日本でもポリアモリーを実践している人はいるの?」と考える方もいるのではないでしょうか。
ここで、荻上チキ著「もう一人、誰かを好きになったとき ポリアモリーのリアル」で紹介されていた調査結果を紹介します。
ポリアモリー、あるいは合意に基づかない複数恋愛や交際に関する経験や願望を持っている人について調査したところ、「関係指向がポリアモラスである」という人は20.4%でした。
また「潜在的にポリアモリーを望んでいる」という人は11.1%、「実際に実践したことがある」という人は4.0%であり、日本には100万人ほどのポリーがいるとわかっています。
100万人というとかなりの人数がいるように感じます。しかし、「自分自身の近くにはいない」と考える人がほとんどでしょう。日本ではまだポリアモリーであると公表すると、周囲からの反発があることが予想されるというのも理由かもしれません。後述するように、法的にも重婚が禁止されており、社会的にも認められるにはまだ時間がかかりそうです。
現在はポリアモリーウィークというポリアモリーのためのイベントも開催されており、2025年には第五回目が開催される予定です。こうしたイベントを継続的に実施することで当事者への理解を深めている段階にあると言っていいでしょう。
ポリアモリーの問題点
ポリアモリーの問題点として、婚姻制度に適していないことが挙げられます。特に日本では刑法第732条で重婚禁止と定められているため、法律上の婚姻関係が存在するにもかかわらず、他の人との婚姻届を提出した場合は刑事罰の対象となります。
ただし、参議院法制局のウェブサイトによると、婚姻届を提出しない限りどのような関係性でも重婚罪にはならないようです。
さらに、ポリアモリーであることが「性に奔放」だと捉えられてしまう懸念があることも問題点として挙げられます。ポリアモリーは一度に複数の恋愛関係を持つ恋愛形態であるため、このような誤解が生じてしまうことも珍しくないでしょう。
しかし、ポリアモラスな関係においては全ての関係者が感情的・身体的に深く関わり合うことを重視するため、誰とでもセックスを行うこととは無関係です。
このような誤解を解消するためには、教育やメディアを通じて、ポリアモリーや多様な愛の形についての正しい理解を広めることが必要になるでしょう。
ポリアモリーは嫉妬しないのか
「ポリアモリーは嫉妬しないのか?」という疑問を持つ人も少なくないでしょう。
前述のとおりポリアモリーは複数の人と関係を持つ恋愛形態であるため、モノガミーに比べると嫉妬の感情は起きにくいとされています。
また、嫉妬の対義語である「コンパーション(Compersion)」という感情を持つポリーも存在します。コンパーションとは、パートナーや恋人に好きな人ができたり、誰かに好意を寄せられたりした際に嬉しいと感じる感情や状態のことです。この感情は、パートナーの幸福を自分の幸福と見なすことから生まれます。
しかし人によっては「他の人とデートやセックスをする時間があるならば、自分にも構ってほしい」と考えることもあるようです。このような場合は、パートナー間でネガティブな感情や心配事についてオープンに話し合ったり、信頼関係を強化したりすることが大切です。
ポリアモリーがわかる映画や書籍
ここからは、ポリアモリーがわかる映画や書籍について、具体的なタイトルを挙げながら紹介します。
ポリアモリーについて学べる書籍
ポリアモリーについて学べる書籍として、デボラ・アナポール著「ポリアモリ― 恋愛革命」が挙げられます。デボラ・アナポールは、自身が結婚・離婚を重ねながら、ポリアモリーの可能性を探求している人物です。1984年にポリアモリーのセンターを立ち上げて以来、ムーブメントを主導したり、ポリアモリー専門誌「Loving More」を創刊したりとアクティブに活動しています。ムーブメントのリーダーが執筆した同著では、ポリアモリーの思想・実践、両方の知識が学べます。
日本の書籍としては深海菊絵著「ポリアモリー 複数の愛を生きる」が代表例です。深海菊絵はポリアモリーのワークショップなどを開催しており、ポリアモリーを「浮気でも不倫でもない、誠実に複数の人と愛を育むライフスタイルである」として定義やパートナーシップの構築方法、実践者たちの体験談などを解説しています。
またメディア評論家・編集者である荻上チキが執筆した荻上チキ著「もう一人、誰かを好きになったとき ポリアモリーのリアル」では、日本に暮らす当事者100人以上に取材・調査することで見えてきたリアルな経験や感情が取り上げられています。
ポリアモリーが題材の映画
ポリアモリーが題材の映画としては、2017年に公開された「ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密」が挙げられます。この映画は、ワンダー・ウーマンの生みの親であるウィリアム・モールトン・マーストン博士と、彼の妻エリザベス、そして彼らの愛人であるオリーブ・バーンという三人の間で築かれる愛と信頼、そして社会的な偏見に対して挑戦する様子が描かれているのが特徴です。
またフィンランド映画の「Four Little Adult(4人の小さな大人)」の中でも、既婚のカップルと新しいパートナーとの関係が描かれています。複雑な感情を乗り越え、お互いに対する愛と理解を深めていくストーリーとなっており、ポリアモリーについての理解を深めたい方におすすめです。
ニューヨーク・タイムズの人気コラムをもとにしたアンソロジードラマシリーズ「モダンラブ・アムステルダム」の6話でも、ポリアモリーについて取り上げられていました。同作でもポリアモリーの実践に伴う感情的な課題や社会的な誤解に対する挑戦などが描かれており、ポリアモリーに対する理解を深めるエピソードが展開されています。
まとめ
ポリアモリーは不倫や浮気とは異なり、全てのパートナーからの合意に基づいて同時に二人以上のパートナーを持つオープンな関係のことを言います。複数の恋愛関係が平等に尊重されるため、オープン・マリッジやオープンリレーションシップとも異なります。
全ての関係者がそれぞれ時間をかけてお互いの身体的・感情的な関係を育てていく一方で、束縛はせず、婚姻制度にもとらわれないという点がポリアモリーの特徴です。
比較的新しい恋愛形態であり、「性に奔放」「ふしだら」といったネガティブな誤解を持たれてしまうケースも珍しくありません。しかし実際は「特定複数」の全く新しい恋愛の形であり、誰とでもセックスを行うというわけではありません。
日本でも100万人ほどのポリーがいるとわかっているため、ポリアモリーや多様な愛の形についての正しい理解を広めることが必要になるでしょう。