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性の健康や幸福を表すセクシャルウェルネスとは?

性に関して「健康」で「幸福」な状態とはどのようなことなのでしょうか?2017年におきた#Me Too運動以来、性の健康や幸運を実現するための言葉として注目が高まっているのが「セクシャルウェルネス」です。この記事では同様の概念であるセクシャルヘルスの紹介とともに、セクシャルウェルネスを実現する商品に関しても解説していきます。

セクシャルウェルネスとは?

セクシャルウェルネスとは、健康や幸福という側面から性を捉える言葉です。身体的、感情的、精神的、そして社会的にも性に関して健康で幸福な状態で生活することを指します。この中には心身の健康にとって性的快楽が重要であるという点の他に、社会全体で性に関するオープンで健全なコミュニケーション、そして性およびジェンダーの多様性の認識と尊重を基本とする性への包括的なアプローチが含まれています。

セクシャルウェルネスに関連して、「セクシャルヘルス」という言葉があります。

世界保健機構(WHO)は、セクシャルヘルスの定義として、単に病気や機能不全、虚弱でないということだけでなく、性的な行為や性的関係に対して前向きで経緯ある状態であることとしています。強制的な行為や暴力、差別などがなく、楽しく、安全な性的体験ができるという意味を含んでいる言葉です。

もちろん、様々な性的指向やジェンダー・アイデンティティ、性的表現、性的快楽が健全に行えるかもセクシャルヘルスに含まれます。

セクシャルウェルネスは、これらセクシャルヘルスと同様の意味として「性の健康」という訳を当てられることがあります。2024年9月時点で明確な定義が定まっているわけではないですが、セクシャルヘルスを踏まえた上で、より良い性生活を過ごす幸福な状態を実現する概念として言及されていることが増えています。特に近年では、セクシャルウェルネスに関しては性的快楽との関連が注目されてますが、女性特有の生理に伴う課題や更年期など様々な問題に対しても使われているようです。

健康かつ幸福な状態であるセクシャルウェルネスを実現し、持続するために、ブラジルのサンパウロ大学リベイラン・プレト・メディカルスクールの研究者は性教育が不可欠と指摘しています。

なお、WHOはセクシャルヘルスを実現するためには、以下の4点が重要であるとしています。

・性に関して包括的で質の高い情報へのアクセス
・無防備な性的行為による悪影響への知識
・性に関する健康管理を受ける能力
・性的健康を肯定し、促進する環境で生活すること

WHOは2024年にセクシャルヘルスとウェルビーイングに関する専門家を募集するなど、性における幸福や健康をどのように実現するかというのは全世界的で重要な取り組みとなっています。

セクシャルウェルネスの高まり

セクシャルウェルネスはLGBTQIA+など、どのような性的指向や性自認を持つ人々にとっても重要な言葉ですが、近年は特に女性の性に関する言葉として注目されています。

女性のセルフプレジャーや生理、更年期など、これまで「恥ずかしい」「卑猥」「汚らしい」といった印象から、タブー視されてきた行為をポジティブに捉えようとする動きが関連しているからです。こうした女性のセクシャルウェルネスを向上・解決することを技術的に目指した「フェムテック」も注目され、社会課題として注目する起業家も増えてきています。

さらにセクシャルウェルネスが世界的に注目を集めるようになったのは2017年の#Me Too運動からでしょう。#Me Too運動によってフェムテックへの注目が高まり、セクシャルウェルネスがメディア等で取り上げられるようになりました。

日本でも女性向けセルフプレジャーアイテムや女性の性や体をサポートする製品を開発・販売する「iroha」が2023年に誕生10周年を迎えています。irohaが生まれた当初はセクシャルウェルネスもセルフプレジャーという言葉も世の中には浸透していませんでしたが、10年という歳月を経て、2023年にはモデルで俳優の水原希子さんをアンバサダーに迎え、全国紙でirohaの新聞広告が初めて掲載されるなど、セルフプレジャーやセクシャルウェルネスの必要性や重要性が広く社会に受け入れられつつあると言えるでしょう。

irohaによると、女性雑誌からのirohaに関する取材も2018年から2023年で17倍になるなど、急速に注目度が高まったことが示されています。

実際にウェブメディア「wesay」が2022年4月から5月にかけて実施した調査によると、「セクシャルウェルネス」に興味があると答えたのは64.5%となっています。その理由として「よりよく生きたい」「すベての人が生きやすい世界」「パートナーとの暮らしをよりよくしたい」と言った理由が並んでいます。セクシャルウェルネスは現代の私たちにとって必要な概念になっていくかもしれません。

セクシャルウェルネスを実現する製品

より良い性生活を過ごす幸福な状態を実現する概念であるセクシャルウェルネスを実現するために、様々な製品が生まれています。代表的なものを紹介していきましょう。

セックストイ

前述したirohaのように、セックストイはセクシャルウェルネスを実現するために最も代表的なものと言えるでしょう。セルフプレジャーは性的快楽に繋がります。日本では国内外の製品を含めて様々な商品が購入できるようになりました。

また、一見するとおしゃれなインテリアアイテムやアクセサリーかと思うようなデザイン性の優れた製品も発売されており、見た目からでも行為への抵抗感をなくし、セクシャルウェルネスを実現できると言えそうです。

ウェアラブルデバイス

ウェアラブルデバイスにおいては挿入時の痛みを軽減するものや、骨盤底筋の衰えに起因するさまざまな症状を改善するものなどさまざまな商品が発売されています。

特に2022年からは、膣内に挿入して骨盤底筋の運動に用いる器具が日本で一般医療機器として販売可能になりました。これによって、骨盤底筋訓練製品の効果効能を消費者にしっかりと伝えることが可能になったことで、注目が高まっています。

デリケートゾーンケア製品

下着による締め付けやムレ、生理用品など、様々な要因から悩みが多いデリケートゾーンをケアする製品もセクシャルウェルネスを実現するために人気のカテゴリです。フェムゾーンやフェムケアという言葉で呼ばれることもあり、より抵抗感が抑えられるようになってきていると言えるでしょう。

製品は、肌の保湿やマッサージオイルの他にヘアオイルとして利用できる商品があります。

上記のような製品の他に、生理周期に合わせて使うフェイスマスクや、何度洗濯しても効果が失われることのない生理用のショーツなど新しい製品が次々と開発されています。

セクシャルウェルネスの今後

セクシャルウェルネスを実現するために、日々多くの製品が開発されています。一方で、サンパウロ大学の研究資料にもあるように、セクシャルウェルネスにとって重要なのは性教育なのはいうまでもありません。

#Me Too運動以来、世界的に注目が高まっているセクシャルウェルネスですが、日本では、性や性教育に関しては話しにくい雰囲気があったり、パブリックな場所では話題にするのが躊躇われる環境にあります。フランスなどでは親子で避妊等に関する話を積極的に行う雰囲気を作ったり、性に関する大規模な展示会に家族で訪れることで性教育を行っているそうです。

日本でもセクシャルウェルネスを実現するために、議論をもっと深めていく雰囲気や機運を作っていく必要があるかもしれません。

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