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芳香族化合物の化学(9)「ベンジル位の性質」
有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。
今回のテーマは「ベンジル位の性質」です。
【ベンジル型共鳴】
トルエンはメチル基(ベンジル位とも言う)のC-H結合がホモリティックに開裂することで,π電子がベンゼン環外へ流れるため安定化の寄与が働く。
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よって,無触媒でハロゲンを加熱あるいは光照射させることでベンジル位をハロゲン化させることができる。
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【ベンジル位の反応】
SN1反応
パラ位にアルコキシ基を有する場合,ベンジル位に脱離基(例:Ts基)がついている場合,容易にSN1反応が進行する。これは生じるベンジル型カチオン中間体の正電荷がベンゼン環に非局在化し,安定化されるからである。
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SN2反応
パラ位にアルコキシ基を持たない場合,SN2反応が速やかに進行する。これには2つの要因が絡む。
① ベンゼン環上の炭素はsp2混成軌道であるのに対し,ベンジル位の炭素はsp3混成軌道を持つため,ベンジル炭素がSN2反応が最も有利になる。
② SN2反応の遷移状態がベンゼンのp電子系との重なりによって安定化される。
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ベンジル位の脱プロトン
ベンジル型アニオンはラジカル,カチオン同様に共鳴安定化を受けるため比較的安定である。したがって,トルエンのpKaは41とエタンの酸性度(pKa≈50)より高く,プロペン(pKa≈40)の値に近い。
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ベンジル位の還元反応
ベンジルエーテルは金属触媒下で水素添加させることによりトルエンへ還元される。
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ベンジル位の酸化反応
トルエンは共鳴効果により求電子的置換反応は進行するが,酸化還元反応は置換基に限定される。ベンジル位もその例外ではなく,熱KMnO4やNa2Cr2O7などでアルキルベンゼンは安息香酸に酸化される。
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二酸化マンガンを用いれば温和に酸化ができるため,ベンジル位を選択的にケトンへ酸化できる。
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【参考図書】
ボルハルトショアー現代有機化学(下)
「芳香族化合物の化学」をまとめたpdf(power pointスライド)も作成しております。
ご希望の方がおられましたらコメントをよろしくお願いします。