芳香族化合物の化学(10)「フェノールの性質と合成法」
有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。
今回のテーマは「フェノールの性質と合成法」です。
【フェノールの性質】
ケト・エノール互変異性
フェノールはいわゆるエノール構造なのでケト・エノール互変異性が存在するが,ケト型は芳香族性を失うためエノール型が有利になる。
フェノールの酸性度
フェノールはフェノキシドイオンの共鳴安定化により,アルコール(pKa≈16-18)よりも高い酸性度(pKa≈8-10)である。
【フェノールの合成法】
フェノールの合成法①:芳香族求核置換反応(付加脱離型)
芳香環へは求電子的置換反応しか進行しないと学んだがフェノールやアニリンの合成法は例外的に芳香族求核置換反応で合成される。一般にオルト・パラ位に電子受容基を有する場合(2つ以上が理想),付加脱離経路で進行する。
フェノールの合成法②:芳香族求核置換反応(ベンザイン機構)
電子受容基のないハロアレーンの場合,ベンザイン機構で求核置換反応が進行する。ベンザインに対する求核攻撃はa, bの2通りがあるため,置換ハロアレーンに対しては2つの生成物が得られる。
フェノールの合成法③:ジアゾニウム塩からの合成
実験室レベルで最も一般的かつ伝統的なフェノール類の合成法はアニリンをジアゾ化してジアゾニウム塩を合成し,その後加水分解をする方法でフェノールを合成する方法である。このジアゾニウム基(-N2)は優れた脱離基である。
フェノールの合成法④:クメン法
現在行われている工業的なフェノールの合成法はクメン法である。これはベンゼンとプロペンを出発物質に3工程でフェノールと副生成物としてアセトンが得られる。
【参考図書】
ボルハルトショアー現代有機化学(下)
「芳香族化合物の化学」をまとめたpdf(power pointスライド)も作成しております。
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