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半導体のお話し〜化学の視点から〜

お久しぶりです。のうむです。
今回は「半導体」をテーマにしたいと思います。

今や先進国では最も重要な産業と言っても過言ではないと思います。
Intel,Samsung,Nvidiaなどの半導体メーカーは世界中から注目されてますし,日本でもTSMCが熊本に工場を建設するなど,ここ数年で様々なニュースがあります。

半導体については色々なところで解説があるので,今回は化学視点=材料視点でお話ししたいと思います。

半導体の製造プロセス

半導体の製造は前工程,後工程に分けられます。

前工程は,ウエハへのレジスト塗布,設計回路に基づいて作られたマスクを使って露光と現像を行い,エッチングすることでパターンを作成します。

後工程では半導体チップ1つずつにダイシングをした後,電子回路などに使えるようにボンディング,モールディングを行うことで,半導体チップが完成します。

と言葉では少し分かりにくいかもなので,下の図を参考にしてください。
各工程については詳しく解説しているサイトなどが多いので,そちらを参考にしてください。

これに加え,ウエハやレジスト,エッチング液などの製造メーカー,工程ごとの装置メーカーなど,多くの企業が半導体製造に関わっています。
いずれの材料も,高純度が求められており,高い技術力が求められています。

化学視点ということで,装置メーカーについては詳細割愛しますが,日本では東京エレクトロンなどが有名です。

半導体材料

シリコンウエハ

そもそも半導体は,電気を流す導体(=金属)と電気を流さない絶縁体の中間の性質を持つ材料を指します。
具体的にはシリコン(ケイ素)のことを言いますが,ウエハがこのシリコン材料に当たるため,シリコンウエハとも呼ばれます。

このシリコンウエハは簡単にいうとシリコンの単結晶です。
製造方法はCZ法(Czochralski法)とFZ法(Floating Zone法)があります。

CZ法は種結晶を回転させながら溶融シリコンにつけ,液面から少しずつ離すことで結晶成長させます。
大型のシリコン単結晶を作ることができるため,現在主流の方法になっています。

一方のFZ法は,棒状のシリコン単結晶に,別の単結晶を溶融させながら大きくしていく方法です。

大型に成長したシリコン単結晶はシリコンインゴットとも呼ばれます。
このシリコンインゴットを薄くスライスすることで,シリコンウエハが完成します。

シリコンウエハは半導体そのものなので,性能を決める最も重要な材料とも言えます。

フォトレジスト

フォトレジストの成分はポリマーと感光剤です。

性質からネガ型とポジ型があり,それぞれ光を当てた部分が現像後に残る,残らないと言った違いがあります。

このレジストの残った部分が,エッチングで保護されて,シリコンが残ることになります。
つまり,どのような半導体チップを作るか,その設計はフォトマスクを作る際に決まると言えます。

エッチング液

シリコンを溶かし,任意のシリコン構造を作る工程をエッチングと言い,その際に使用するのがエッチング液になります。

エッチング液はマスクしているレジストは溶かさずに,シリコンだけを溶かす必要があります。
つまり,強力な酸あるいは塩基が用いられています。

なお,エッチングが終わった後はレジストの役割が終わるため,レジストも洗浄して綺麗にします。

封止剤

後工程のモールディングで使われるのが封止剤です。
封止剤は半導体そのものを保護する働きがあります。
そのため,絶縁性のある有機材料(エポキシ樹脂など)が用いられています。

先のフォトレジストやエッチング剤と違い,最終製品に形として残ります。
そのため,シリコンウエハ同様に信頼性など様々な性能が求められます。

この他にも多くの材料がありますが,詳しく述べると長くなるため割愛します。

半導体材料メーカー

よく聞く半導体メーカーであるIntelなどは,半導体チップを作っている会社です。
残念ながら日本メーカーでシェアの大きい会社はありませんが,材料分野では多くの日本メーカーが活躍しています。

例えば,シリコンウエハやフォトレジストは日本のシェアが高く,それぞれ62%,84%もあります。

今後の材料メーカーはどうなるのか?

ざっくりと半蔵隊の材料についてお話ししてきましたが,今後はどうなるでしょうか?

まず,半導体全体では,生成AI分野を中心にさらに成長していくことが予想されており,2030年には市場規模が1兆ドルまで拡大されるとも言われています。

つまり,材料分野でも市場規模は拡大していくと言えます。

ただ,多くの材料メーカーが半導体材料専属ではなく,他の材料や化学品の製造や販売も行っているため,ここの材料メーカーが全て規模拡大になるとは言いにくいでしょう。

半導体材料メーカーの今後について,いくつか情報をまとめてみました。

【住友化学】 韓国で半導体洗浄液の生産強化

日本の大手化学メーカーである住友化学の子会社である東友ファインケムが,韓国で新工場の建設を発表しています。
従来の工場を拡大する形で,半導体用洗浄液の生産量を拡大する狙いです。

【Resonac】 AI半導体材料の生産拡大のために150億円の投資

同じく大手化学メーカーであるResonac(昭和電工)は,絶縁接着フィルム(NCF)と放熱シート(TIM)の生産拡大を目指し,150億円の投資を発表。
こちらは国内工場を拡大するようです。

【富士フイルム】 韓国に研究開発拠点を新設

富士フイルムは現在,韓国で半導体材料の生産工場を新設しています。
それに加え,新たに研究開発拠点を韓国に設ける予定だそうです。

【東京応化工業】 熊本県菊池市の新工場を竣工

東京応化工業はすでに阿蘇に高純度化学薬品の生産工場を持っていましたが,新たに菊池氏に新工場を竣工しました。

熊本といえばTSMCの工場があり,今後の日本における半導体生産の主要拠点になるといえます。
今回の,東京応化工業の決定もそれに合わせたもので,130億円の投資を予定しています。

まとめ

ざっくりとではありますが,半導体の化学・材料視点でお話ししてきました。
今後成長が期待される分野なだけに,多くのメーカーが新工場の立ち上げや投資を積極的にしていますね。

日本の場合は,土地的に近い韓国(Samsung)や台湾(TSMC)に関連するニュースが多い印象です。

のうむ自身も勉強のつもりでこの記事を作成していたので,間違い等ありましたらすみません…。
何かありましたらコメントお願いします。

それでは,また。

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