Web3グローバル調査2024から見える日本の課題と未来への展望
「Web3」「ブロックチェーン」「NFT」「暗号資産ウォレット」という言葉を聞いたことがありますか?
近年、これらのテクノロジーは私たちの生活に徐々に浸透しつつありますが、その本質的な理解はまだまだこれからという状況です。
今回は、ConsenSysとYouGovが実施した「Web3と暗号資産に関するグローバル調査2024」の結果から見えてきた、日本の現状と課題、そして未来への展望について、解説していきます。
調査の概要:世界18カ国、1.8万人の声から見えてくるもの
本調査は2024年2月から5月にかけて、世界18カ国の18歳から65歳までの18,652人を対象に実施されました。対象国には、先進国から新興国まで幅広く含まれており、Web3に対する世界的な認識を包括的に分析しています。
対象者には、35の質問項目を通じて、ブロックチェーン技術やWeb3に関する理解度、暗号資産の利用状況、さらにはAIとの関係性まで、多角的な視点からデータが収集されています。特に注目すべきは、前年からの変化を追跡できる設計になっている点です。
衝撃の数字:日本のブロックチェーン理解度15%の意味するもの
調査結果の中で、特に注目すべきものが「ブロックチェーンの定義を正しく理解している人の割合」です。日本の結果は15%となっており、調査対象18カ国の中で最低レベルという結果でした。
これは具体的に何を意味するのでしょうか?
ブロックチェーンの定義を「安全で分散化された透明性のあるデジタル台帳で、取引を記録・検証するもの」と正しく理解している人の割合が、わずか15%だということです。つまり、調査対象者のうち、85%の人々が、この基本的な概念を完全には理解できていない、あるいは誤って理解している可能性があるということです。
対照的な他国の状況
ナイジェリア:77%(最高)
南アフリカ:52%
インド・フィリピン:41%
アメリカ:36%
欧州諸国:24-25%
注目すべきは、特に、新興国において理解度が高い点です。
なぜ、このような差が生まれているのでしょうか?
なぜ日本は遅れているのか:3つの要因分析
既存金融システムへの高い信頼性
日本の金融システムは世界的に見ても安定しており、新しい金融テクノロジーへの切実なニーズが比較的低いと考えられます。これは、逆説的に新技術への関心を低下させる要因となっている可能性があります。一方で、新興国では国への不信感が高く、ビットコインのような暗号資産を通した決済が比較的普及していると考えられます。教育・啓発活動の不足
Web3やブロックチェーンに関する基礎的な教育や、分かりやすい情報提供が不足しています。日本においては一般利用の観点ではなく、技術的な説明が中心となり、実際の利用シーンや利点が伝わりにくい状況が続いています。メディア報道の偏り
暗号資産の価格変動や暗号資産詐欺の問題、セキュリティの課題などなど、日本ではネガティブな面が強調されがちで、基礎技術としてのブロックチェーンの可能性や利点が十分に伝えられていない現状があります。
希望の兆し:二極化する日本のWeb3市場
一見すると、日本のWeb3およびブロックチェーンへの理解度の低さは懸念材料に映るかもしれません。しかし、調査データをより深く掘り下げていくと、非常に興味深い傾向が浮かび上がってきます。
注目すべきは、暗号資産ウォレットの利用実態です。
MetaMask、Coinbase、Binanceなどの暗号資産ウォレットの所有数に関する調査では、日本市場特有の「二極化」現象が確認されました。全体の61%がウォレットを持っていない一方で、ウォレット所有者の中では実に20%が3つ以上のウォレットを保有しているのです。
(私もWeb3ヘビーユーザーの一人で、MetaMaskやUniswap、MagicEden、Scramberryなどなど複数のウォレットを保有しています。)
この数字が示唆する意味は極めて重要です。なぜなら、この20%という数字は、フランス(20%)やイギリス(17%)といった他の先進国と比較しても遜色のない、むしろ若干高い水準だからです。
つまり、一度、Web3の世界に足を踏み入れた日本のユーザーは、むしろ積極的に様々なサービスを活用する傾向があると言えます。
この「積極派」の存在は、以下のような重要な示唆を私たちに与えてくれます:
潜在的な受容能力の高さ
日本の消費者は、いったん価値を理解すれば、新しいテクノロジーを積極的に受け入れる素地があります。過去のインターネットやモバイル技術の普及過程でも、同様のパターンが観察されてきました。質の高いユーザー体験の重要性
複数のウォレットを使いこなすユーザーの存在は、サービスの質や機能性に対する高い要求水準を示唆しています。これは、日本市場向けのサービス開発において重要な指針となります。教育・啓発の効果可能性
現在のウォレット非所有者(61%)は、必ずしもWeb3に対して否定的というわけではなく、適切な教育と啓発活動によって、潜在的なユーザーとなり得る可能性を秘めています。
この「二極化」は、一見するとマイナスに捉えられがちですが、実は日本のWeb3市場の大きな可能性を示唆しているとも考えられます。
今後の普及に向けて重要なのは、この「積極派」ユーザーの知見や経験を、いかに効果的に活用し、より広い層に伝えていけるかという点です。
「積極派」ユーザーの存在は、日本のWeb3市場が持つ大きな成長ポテンシャルを示す重要な指標として捉えるべきと考えます。
おわりに:テクノロジーの民主化に向けて
今回の調査結果は、日本のWeb3普及における課題を浮き彫りにすると同時に、大きな可能性も示唆しています。
重要なのは、この技術を「難しいもの」「専門家のためのもの」として遠ざけるのではなく、私たちの生活をより良くするための道具として捉え直すことです。
Web3やブロックチェーンは、決して一部の専門家だけのものではありません。むしろ、誰もが参加できる、より公平でオープンなデジタル社会を作るための基盤技術です。
日本のブロックチェーン理解度15%という数字は、確かに課題を示していますが、同時に、これからの大きな成長の可能性を示唆するものでもあります。私たち一人一人が、この技術をより身近なものとして理解し、活用していくことで、その可能性は必ず開花していくはずです。
ぜひ、Web3がよくわからない方も、まずは暗号資産ウォレットをインストールして、NFTに触れてみていただけると幸いです。
テクノロジーの民主化に向けた私たちの歩みは、まだ始まったばかりなのかもしれません。しかし、確実に前進しているのです。
参考文献
ConsenSys & YouGov「Web3と暗号資産に関するグローバル調査2024」
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